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タンブルウィード

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ーあらすじー これは道草の物語。露木陽菜(ツユキヒナ)は地元山形を離れ、仙台に引っ越してきて三年目。自宅とアルバイト先を行き来するだけの淡々とした日々を過ごしていた。ある日、誤…
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2020年7月の記事一覧

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7月。霧の様な雨がコンクリートを湿らせた市内は、例年より遅い入梅を迎えていた。 喫茶コラフの店内は普段通りの落着いた空気を、窓の外の薄曇った天候が後押しする様にしんとしていた。 駅から近い店舗とはいえ、少しだけ外れた場所に佇むコラフは実際には容易に天候の影響を受けてしまうのだった。 厨房に立つ陽菜はホールの奥に位置するはめ殺しの丸窓を見つめながらサラダに使う新鮮なレタスを千切っていた。 クボは早々に来訪の見切りをつけ休憩スペースに引っ込んでいた。大方うまい棒でも食べているのだ

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橘君は苦笑しながら目の前に差し出されたうまい棒を見つめていた。 牛タン味。牛タンかあ。。俺、コンポタが好きなんだよなあ。 「若造。ちょっと付き合え。」 狐の様に細い目をしながら仏頂面のクボはそう言った。 喫茶コラフは青葉祭りの影響もあり今日の営業は久しぶりの大繁盛で、店の外にまで珍しく列を作っていた。 ただでさえ急がしいのに癖の強いクボと働いたことで、橘君の疲労は顕著に顔に出ていた。なんだか髪の毛もしゅんとしている。 今日は帰ったらシャワーを浴びてソッコー布団に飛び込んでやろ