Moglie 〜モリエ〜 その4

男性には身に覚えがあると思うが、ハシゴして飲み歩いている途中に、どうしても尿意を我慢できないために、ついその辺で済ませてしまう時がある。俗にいう「立ちション」というものだ。

蕎麦宗の2階に住んでいた時のひと頃、酷くその「立ちション」に悩まされた時期があった。
隣のモリエさんとの間がちょうど人ひとりのスキマと暗闇がある故だが、度々それをされるものだから、色々と策を講じた。が、なかなか止まない。ご飯時や眠りばなに放尿のスゴイ音がするものだから気分を害する。
『街場に住む』ということのためには致し方ないかもしれないが、正直勘弁してもらいたいと思っていた。

あまりに頻繁なので、いい加減頭に来て実力行使に出たこともしょっちゅうだった。その音に気が付いた時には下まで降りて行って、取っ捕まえて説教したり、中にはバケツと雑巾持たせて洗わせたこともある。
今思えば、30半ばの若造に50〜60代のおっさん達が諭されるんだから、ちょっとやり過ぎた嫌いもなくはない。とはいえ、「立ちション」自体が下品な行いなのは確かだから、悪いことをしたとは思っていない。(ちなみに最近の若い人は行儀が良いのでしませんね)

ある日の夜のことだ。また、その「スゴイ音」が聞こえたものだから、勢い切って階下におりると、立派に背広を着た二人連れのおっさんが見えた。その片方が用を足し終えると、待っていたもう片方と二人揃って隣のモリエへと入って行った。千鳥足で開けた店の扉から漏れた明かりで、その「立ちションオヤジ」の顔が照らされる。中からはカラオケの怒号が聞こえ、すぐに扉は閉まり元の暗闇に戻った。

その瞬間、僕の怒りは爆発した。つづく

#千鳥足 #説教 #カラオケ #モリエ

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