蕎麦宗店主の自転車クロニクル その7 【無段は無惨に】
中学3年間は無遅刻無欠席だ。それは実はロードマンのおかげ。
もう時効だから話そう。僕の家から中学校までは2kmほどしかなく、自転車通学が禁止されていた。が、よく朝寝坊をした時、遅刻したくない一心でこっそり自転車飛ばして行って、学校近くの畑の草むらに突っ込んで隠してダッシュして間に合わせていた。親にも先生にも友達にさえ、見事に一度もバレてない。スイマセン不良です(笑)。念のため断っておくと、カツアゲも万引きもタバコもシンナーもやった事無いし、長ランもボンタンも着てません。スイマセン真面目です(笑)。
高校合格が決まった後、通学用の自転車を買ってもらった。名前は《無段》。ブリジストンから発売されていたMTBルック車で、フロントの変速機が自動車のCVTのように無段階のモノだった。そのメカメカしさに憧れて選んだのだが、買ってわずか一月経たない内に盗難事件にあってしまった。
すぐに警察に届けを出し、しばらくして家に連絡があった。
『お宅のお子さんの自転車が発見されました」 』
伊豆長岡の交番からだった。母親とともに出向くと、無惨にもフレームは折れ曲り車輪もひしゃげている。聞くところによれば、街の中高生の不良グループがあちらこちらから自転車を盗んで来ては山遊びを行い、壊れたものを積み上げていた中から発見されたという。
彼らも反省し謝罪している、らしいが、警察はその後の抗争(不良グループ同士が地域ごとに潰し合う、そういう時代でした)を恐れて、住所や名前は明かせない、とのことだった。
怒りより落胆。無惨な姿で帰ってきた《無段》を見て僕は悔し涙を流すしかなかった。つづく
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