Moglie 〜モリエ〜 その9

僕は出先から急いで戻った。看板は大丈夫だろうか、壊されてはいないだろうか。どんよりと曇ったその日の天気と同じように、重々しい不安を抱えたまま現場に到着すると、壁の解体は始まり、看板は取り付け部の長いネジ状の鉄筋がひしゃげて宙吊りになっていた。

「間に合った⁉︎」

かろうじて看板は無事だった。オーナーさんから譲り受ける旨を職人さんに伝えると、「聞いてるよ」とのことだった。先回りして連絡を入れてくれたのだった。彼らにも少しだけ事情を話すと、共感してくれたのか、綺麗に整えた状態にして渡してくれるとのこと。ありがたい。

僕は店の前にある駐車場の片隅の自販機で、人数分の缶コーヒーを買って運び、彼らに渡した。
「3時の休憩で飲んでよ」
一番若い職人が受け取って、「あざっす」と、にっこり笑ってくれた。

ふっと見上げると、曇り空の隙間に青い空が見えた。つづく。

#看板  #モリエ #職人 #先回り  #缶コーヒー 

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