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オガハウス②

目指せスーパースター蕎麦宗です。

さて、つづき。

レディースファッションとは異なりメンズのセレクトショップとなると東京を除いては選択肢は極端に少なくなる。ましてやトラッドとなると必然的に高級路線となるとため、さらに数は限られる中、僕は磐田の《reunion》と静岡の《セビルロウ》と《オガハウス》によく足を運んだ。

オガハウスに最初に足を運んだのは24歳の時のサッカーの試合の帰り。普段、通勤こそ格好つけて毎日スーツで行っていたし(大学の同級生からしたら毎日バレー部のスウェット姿しか見ていないから、今頃腹を抱えて笑っているかもしれない)、ジャージで通勤なんて絶対しないを信条にしていた。が、そんな体育教師は1人もおらず、上司の年配の先生方からは白い目で見られていた。最後に世話になった松下校長先生(つづくと言って書いていない沒蹤跡(もっしょうせき)の話の方です)だけは褒めてくださり、『40年間の教員生活で朝の職員会議にスーツを着ていた体育教員は君だけだ』と褒めて下さったが、それほど変わっているとも言える。

その日はアディダスのセットアップだった。さすがに県リーグの試合に背広で行くことはなく、普段なら着替えを持って行くのだが、訳あってジャージの一張羅だった。それでもどうしても店内を見たい衝動にかられ、如何にも一元さんは入ってくれるなと言わんばかりのあの重いドアを開け、恐れ多くもジャージ姿の小僧が入って行くと、店主のオヤジさんがジロリとこちらを向いた。

「こんな格好ですいません。クルマで通りがかりに見つけてショーウィンドウ越しに服を眺めたら、どうしても気になったので入りました。」

浅黒いチョットいかつい顏のおっかないオッサンは、そんな自分を訝しげに眺めながらも決して邪険にすることなく「好きなだけ見てけ」と言ってくれた。しかし、チョイと見て回るとイタリアントラッド中のトラッドの品々がズラリ。さすがに格式高いのにビビって

「また出直します」

と言って日を改めて、今度はしっかりとスーツにタイをして出向いた。

「お〜、お前か」

って覚えてくれていて嬉しかったが、それは確かにあの店にジャージで入る根性のヤツも20代前半の小僧もいないだろうことは、後々オガハウスの常連だという多くの医師や会社経営者のご紳士方から聞くこととになる。それほどの名店だった。何せ頑固オヤジで仏頂面で愛想笑いなど決してしないために、追い出された客も何人もいるなどという都市伝説めいた話もあるくらいだ。

今一度、靴やスーツなどを眺めているとオッサンから質問が来た。

「そこに並んでいるスーツの中から一番高いの選べ、値札は見ずに」

えっ、マジ。いきなり飛んで来た入店試験みたいな問いかけに、僕は感性のモードを真剣にして、ズラリと何十着と並ぶスーツに触れ、目を通し、悩み込んだ。つづく

#トラッドを着こなす #即行動 #感性を研ぎ澄まし #通勤服

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