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三島の街へ繰り出せ その2【温水池とシュン君の桜】

目指せスーパースター。蕎麦宗です。

すっかり春めいて、あちこちで桜が咲き誇って里や山を彩っている。桜の名所はあちこちにあれど、ここ何年か毎年気になって脚を運ぶ場所がある。それは三島市街のはずれにある《温水池》。

楽寿園に湧き出た富士山からの冷たい清水は、源兵衛川という江戸時代に作られた水路を流れる。途中《BAR・YUMOTO》や《鰻の桜家》をわきに見て、水の苑緑地や川面に枝垂れる桜並木の横を流れると、国道1号線を渡り溜め池に落ち着く。この間、全て川沿いに歩ける歩道が整備されているので、三島を訪れた際には是非ぜひ歩いて下さい。カワセミに会えるかも知れない、とってもいい感じの小路です。

で、これが《温水地》という農業用水のための溜池。あまりに冷たすぎる富士山の湧水を、貯め置き温めることで稲作に適するものにすることが目的だったけれど、残念、叶わず冷たい清水。

さて、ここは今、公園として整備され逆さ富士を眺めたり渡鳥が憩う飛来地になっている。たくさんの木々も萌えている見事な水辺の園は、風光明媚なとても癒される場所。それらに囲まれた駐車場の脇に、一本の細い桜の木が植わっている。それが、僕の目的の《シュン君の桜》。

シュン君は幼少の頃より親御さんと一緒に蕎麦宗へよく来てくれた常連さんで、生まれつきなのかは定かでないけどとってもヒョロッピだった。伊豆牛のタタキが大好きで、その細い身体に似合わずペロっと平らげてはニッコリしていた。でも、中学生になってすぐの頃、なんの前触れもなく倒れて短い一生を終えた。僕が中学一年生の時にも同級生のサッカー少年団仲間が病気で死んだけれど、あの時のご両親の悲痛な涙は、今でもまぶたに焼き付いている。また、義理(亡き妻)の父母の哀しみも知っている。そんなこんなで、我が子をなくした親御さんの気持ちは痛いほど分かるだけに、僕も辛かった。

彼の死後、学校やPTAの計らいで、中学校のすぐ横にあるこの《温水池》に桜が植えられた。同級生達が植樹したようだ。まるでシュン君みたいにヒョロッピで、隣の川柳達がスクスクと大きくなるのを見て、日陰を作って桜が枯れやしないかと、その前を通る時はいつも気になったものだ。でも、なんとか少しずつ太く大きく育って、今年は何輪もの花を咲かせた。もっともっと大きくなれよ。

この桜の木に彼を重ねて、何が出来るわけではないけれど、せめて通勤で通るたびに見守ろうと思う。あの嬉しそうにタタキを食べる笑顔のままの彼を。僕はシュン君を忘れない。

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#静岡県三島市の観光地 #生きる #大切な人を亡くしたあなたへ #温水池  





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