第3話・旨味を追加だ!シイタケンと森の仲間たち

土曜の朝、普段よりも少し早起きした僕は、朝食を食べながら、今日の特別な計画を考えていた。
目的地は、地元の森。
学校で、地域の文化と歴史を学んで以来、森の様子が気になっていたからだ。

かつて森は、人間の暮らしを支えていた。人々は森を定期的に訪れ、草を刈り、手入れをすることで木を育て、燃料となる薪を切り出していたのだそうだ。
しかし、時が流れるにつれて薪ストーブやかまどなどが使われなくなり、石油や電気に頼る生活が中心となった。
需要を失った森から人々は離れ、今ではほとんどの人に忘れ去られた場所となっているそうだ。
学校のプロジェクトでその事実を知った僕は、森がどれほど荒れ果てているのかを自分の目で確かめたいと思ったのだ。

切り干しレンジャーにそのことを伝えると、彼もまた、この探検に興奮していた。
母さんは撮り溜めていたテレビドラマに夢中だったので、遊びに行ってくるとだけ伝えて家を出た。
切り干しレンジャーを保存袋に入れ、水筒に麦茶、おやつを持って、僕は自転車にまたがった。

道中、切り干しレンジャーはタカシのバックパックから顔を出し、キラキラした目で森への期待を膨らませていた。
「タカシくん、森は自然の宝庫だよ。その昔、森は人の生活に必要なものをたくさん提供してくれていた!まさに人々の暮らしを支えるおおいなる恵み!今は荒れているかもしれないけれど、君ならばかつての美しさを取り戻せるかもしれない!」

自転車をこいで森に近づくにつれ、周囲の風景が徐々に変わっていくのを感じた。
アスファルトの道路が土の小道に変わり、小道はやがて草木で覆われ、ほとんどその形を見失っていた。
森の入り口に差し掛かると、そこはかつて人々が頻繁に訪れたことを示す古い看板が朽ち果てて倒れていた。

「ねえ、切り干しレンジャー、これじゃあ森の中に入るのは無理だね。迷ったら家に帰れなくなっちゃうよ。今日は諦めよう。」
帰ろうとすると、切り干しレンジャーはこう言った。
「タカシくん、僕の友達が、この奥にいるんです。彼は森の守護神・シイタケン。彼に会えば、森を再び美しい場所にすることができるかもしれないんだ。」

僕は迷った。
森の守護神、シイタケン。
絶対に、しいたけの何かじゃん。
大根老師との出会いが頭の中でリフレインする。また面倒ごとに巻き込まれるのはごめんだし、何より、僕はきのこがあまり好きではない。
全然そそられない。

でも、森の荒れ果てた様子に心が動かされていることも確かなんだ。
小さい頃に、家族で行った森の中のキャンプ場。ツリーハウスがあって、大きな木の枝から下がるブランコで風を切るのが本当に楽しかった。
キラキラとした木漏れ日が、まるで鏡のように僕の心に反射して輝かせてくれるようにも感じた。
今、目の前に広がる森は暗く、訪問者を拒んでいるように見える。
でももし森を再生することができたら、また昔のように、明るくて、いろんな生き物と共生できる世界に近づくことができるんじゃないか、と考えると、なぜか僕の心はちょっとだけワクワクしたんだ。

「私のサブ必殺技、サンシャインスコープを使えば森を迷わずに進むことができます。タカシくん、もう少しだけ、森の中に入ってみませんか?」
切り干しレンジャーの後押しもあって、僕は、少しの冒険心を持って再び森への一歩を踏み出すことにした。
切り干しレンジャーがサンシャインスコープ!と唱えると、彼の額から青い光が迸り、やがてそれは一筋の光となって、森の中心部を指し示した。

あ、これ、ラ○ュタだ。

草木をかき分け、蜘蛛の巣を払いながら、二人は森の奥深くへと進んでいく。
すると、森のずっと奥に、青白く光る巨大な水晶のような塊が見えてきた。

巨大な水晶を囲うように、木の根が張り巡らされている。
そして、その木からひょっこり顔を出しているもの。
でっかいしいたけ。作務衣を着たしいたけから手足が生えている。

でた。大根老師のパターンの再来。

森の守護神・シイタケンの悩み

「おお、よく来てくれた。この森に人が訪れるのは何年振りじゃろう。」
両手を広げてしいたけがこっちに駆け寄って来た。
しいたけ老師、ボロ泣きだ。

「おお、森の守護神、しいたけ様。お会いできて光栄です。」
そう言う切り干しレンジャーもボロ泣きしている。

なんだろう、乾物たちの感情表現についていけない僕。

「かつて、この森は地元の人々から愛され、そして我々もまた、人々を愛していた。しかし、時代の流れじゃろうか、誰も森の価値を見出すこともなく、このように森はどんどん荒れ果ててしまった。
生命の根源である”ブルークリスタル”も、年々光を失いつつある。
このままでは、このままでは、この森の小動物たちのすみかさえも失われてしまう。どうしたもんかと思っておったら、切り干しレンジャー、お主が来てくれるとは!」
オンオン泣きながら訴えかけるしいたけを見て、僕は戸惑った。ちょっと森に興味を持っただけなのに、大ごとになってしまいそうな雰囲気。

「大丈夫です、しいたけ様!この少年は、予言の書にある救世主!我々、食べ物を長期保存する才能を持つ、かんぶつ勇者様なのです!」
切り干しレンジャーが希望に溢れる目でそう言うと、しいたけ様が僕を見つめる。驚きと希望が入り混じった、期待に満ちた眼差し。

あ、これ、まずい展開じゃね?

「大地を救い、人を救い、森を再生させる勇者とは、貴方様のことですと!?」
目をキラキラさせて、しいたけ老師はこっちを見つめている。
「あ、いや、僕は勇者ではありません。ただの小学生です。今日は、森の様子を見てみたくて来ただけで・・・」
慌ててそう言うが、切り干しレンジャーもしいたけも聞いちゃいねー。ハイタッチして抱き合って泣いている。

やめてくれよ、勝手に勇者なんて、そんな責任重大な役目を引き受けられるわけないじゃん!
のんびり平和に生きていきたいんだ、僕は!

僕のそんな不安を知ってか知らずか、しいたけ老師は泣き笑いしながら続ける。
「昔はこの森の木を使って、原木栽培のめちゃうましいたけが各地で栽培され、日本のみならず海を渡って外国まで輸出していたんじゃよ。しかし今や、すっかり森は荒れ果てこのあり様。森を再生しようにも、もうわしはこの歳じゃ。なすすべなしかと思っていたが、なんとまあ、勇者様が来てくださった!!これで百人力じゃ。どうか、森を蘇らせてくだされ!」

勇者様、森を救え、って、僕はまだ小学校5年生の子供だ。力だってないし、どうしたら森が綺麗になるかの知識も経験もないんだ。
できることなら力になりたいとは思うけど、どうしたらいいか、まったくわからない。プレッシャーをかけないでほしい!

「そんなこと、僕に言われても・・・。僕はまだ小学生ですし・・・。」僕はモゴモゴと答える。
切り干しレンジャーに助けを求めようかと思ったが、切り干しレンジャーは視線を合わせない。
しいたけ老師はにっこり笑って両手を広げ、こう叫んだんだ。
「大丈夫!貴方様に特別なしいたけをプレゼントしますぞ!それを食べればあなたも百人力!
スペシャルしいたけを勇者様にお出しするのじゃ、いでよ、シイタケン!!」

しいたけ老師が天に両手を伸ばしてそう唱えると、森の生命力、ブルークリスタルから光が迸った。
その光をしいたけ老師が浴びると、老師の左の肩がどんどん膨らむ!
膨らみ続ける!
老師の表情が肩の膨らみに伴ってめちゃめちゃ崩れてきている!

めっちゃグロテスクだ!!

眩い光が収まった時、しいたけ老師の目の前には僕と同じくらいの身長のしいたけ人間が立っていた。
しいたけ老師よりも茶色が濃くて、傘の部分がキュッとしまっていて、傘の裏側は白く、いかにも新鮮そうだ。

大根老師と出会った時の記憶が蘇る。
こんな野菜キャラクター、アンパ○マン以外で見たことない。

「こんにちは!僕はシイタケン。新鮮なしいたけのおいしさを君にプレゼント!」
いかにも若々しく元気な様子で、シイタケンは爽やかに言い放つ。
そばではしいたけ老師がゼエゼエ言いながら四つん這いになっている。これぞまさに産みの苦しみといった様相だ。

自信満々の様子のシイタケンが目を閉じた。
シイタケンが左の手のひらを下に向けると、どういう仕組みか、七輪が現れた。
シイタケンは慣れた様子で七輪に炭を入れ、マッチで火をつける。すぐにパチパチと火が上がり、真っ赤に燃えた炭が熱を放つ。

熟練の炭火焼き職人のような真剣な表情だ。
シイタケンは傘の裏から水滴のような汗を出しながら、今度は右の手のひらを上に向けた。
すると、ポロポロとしいたけがこぼれおちるように出現したではないか。

びっくりしている僕を尻目に、シイタケンは取り出したしいたけにさっと塩を振り、軸が上になるように七輪に並べた。すると、すぐにしいたけの傘の裏から水滴が出て来た。

シイタケンの目が光る!
素早い動きでシイタケンはトングでしいたけを網の上から取り上げ、皿に乗せ、僕の方に差し出した。汗を拭きながら、シイタケンは爽やかににっこり笑って言った。
「さあ、食べてみて!新鮮なしいたけの美味しさをそのまま味わってみてよ!!」

僕はドキドキした。正直、キノコはあまり好きではない。匂いも味も独特だからだ。
だけど、この目の前のしいたけの輝きはどうだ。これまで食べた椎茸とは全く違う。プリプリでみずみずしく、そして香りが素晴らしい。
僕はおそるおそる、焼きたての椎茸を口に運んだ。

「う、う、うまいぞお〜〜〜〜っ!!!」僕は思わず叫んでしまった。
うまみがジュワッと口の中に広がり、同時に香りが鼻に抜けて、全くくせのない素直な味がした。
僕は本当に驚いた。
新鮮なきのこっていうのはこれほどまでに味が違うのか。
今まで食べていたキノコとは全く違う風味と旨味の強さに、しいたけを食べる手が止まらなかった。

しいたけ老師が感動のあまり震えながらシイタケンを抱きしめた。
「勇者様が喜んでおられる!新鮮なきのこの美味しさに、思わず叫んでしまっておられる!よくやったぞシイタケン!それでこそ、我らしいたけ族の英雄じゃ!」

「勇者様、私のしいたけを気に入っていただけて嬉しいです。
昔は、僕らは森の道を通って街へ出て、人々にキノコパワーを授けていました。キノコパワーとはすなわち、旨味の力。キノコを食べると人々は、骨が強くなり、免疫も高まると言って、とても喜んでくれました。
しかし今、森は荒れ果て、街への道は閉ざされてしまいました。森には他にも豊かな恵みがたくさんあるのに。それらを届ける術が、今の僕らにはないのです。
どうか、力を貸してください。あなたのその強くなった骨の力で、森の道を整えてくれませんか?」
七輪でしいたけを焼く手を止めずに、シイタケンは懇願してきた。
無理だよ、って断りたいと思ったけど、うますぎてしいたけを食べる手が止まらない。

こんなおいしいしいたけがこれからも食べられるなら、なんとかしたいという気持ちが僕の中に浮かんできた。
「森を綺麗にしたいのは山々なんだけど、僕なんかにできることが思いつかないんだよ。だってまだ小学生だから。誰か大人を呼んでくるから、相談してみたらいいんじゃないかな。」
もぐもぐしながらそう言ってみると、シイタケンは悲しそうにつぶやいた。

「それではダメなのです。勇者様、あなたが自分で行動するからこそ、森は再生するのです。伝承にはそう書かれています。」
「いや〜、そう言われても・・・。」
「良い方法がありますよ、タカシくん!」

僕の隣でしいたけをがっついていた切り干しレンジャーが、得意げに話し始める。
地域には、森林ボランティアという団体が存在する。そういう団体では、一緒に活動してくれる人をいつも募集しているから、そこに相談してみればいいのでは?と。

その提案により、僕は一度しいたけたちに別れを告げて、家に帰って調べてみることにした。
古新聞置き場から地元の広報誌を取り出し、森林ボランティアを探してみたところ、小学生向けの「森の探検活動」をやっている団体があったので、思い切って、森の清掃活動への協力を依頼するメールをしてみたところ、すぐさま電話がかかって来て、シイタケンの森の清掃活動を企画してくれると言ってくれた。
対応してくれたおじいさんは、森林インストラクターという資格を持っていて、もっとたくさんの地域の子供たちに、森に親しむ活動に加わって欲しかったんだそうだ。
だから、僕からの連絡が嬉しいと言ってくれた。僕もなんだか嬉しかった。小学生にもできること、喜んでもらえることってあるんだな。

森の清掃活動とシイタケンとの交流

そして、翌週の日曜日。
さっそく、子どもたちも参加できる森の清掃活動が実施された。
朝早くから、親子連れや地域のボランティアたちが集まり、森の入り口で必要な道具を手に入れた。
軍手、ゴミ袋、長靴、そして小さな鎌や剪定ばさみが配られ、タカシと、変装した切り干しレンジャーも参加者の一員として準備を整えた。

活動は、まずは、道を整備することからスタート。
参加者たちは小グループに分かれ、草木で覆われた既存の小道をはっきりとさせるために、雑草を取り除いた。
子どもたちは、主にゴミ拾いや小枝集めをゲームのように楽しみながら、森が変わっていくのを楽しんだ。

森の中には、ペットボトル、空き缶、さらには古いキャンプ用品や放置された釣り道具など、多くのゴミが残されていた。ボランティアたちはこれらを慎重に集め、リサイクル可能なものとそうでないものに分けた。
大人も子供も、どんどん綺麗になっていく森の様子にワクワクしているのが伝わって来た。

道が整備され、光が届きにくかった地面にも日が差すようになり、地面には早くも 新しい芽が顔を出し始めていた。
参加した大人も子どもも、自分たちの手で直接自然を守る体験ができ、森の美しさに感動の声をあげていた。

「森が綺麗になって、道が見えるようになった!これで、シイタケンの美味しいしいたけが街に届くようになるよね!」
僕も思わず興奮してそう言った。綺麗になった森に心底ワクワクしていた。
切り干しレンジャーは大きくうなづき、「そうだね、これで、日本の旨み文化、出汁のことも改めて広がってくれるんじゃないかなと思うよ。ありがとう、タカシくん。」と嬉しそうに言った。

さあ、では解散しようか、とみんなが思い始めたその時、「皆さん、今日は森の清掃活動に参加してくれてありがとう!」と、聞き覚えのある声がした。
見ると、なんと、作務衣を着たしいたけ老師とシイタケンが七輪を持って立っている!

うそだろ、きのこの妖怪が急に現れたらみんなパニックになっちゃう!

慌てて周囲を見回したが、参加者はみな、しいたけの着ぐるみを着た人が登場した、と思っているようだ。
口々に、かわいい、とか、こんなゆるキャラいたんだ、とか、どこの企業がスポンサーなんだろうね、などと話している。
あまりにも現実離れしているから、逆に、しいたけ妖怪だとは思っていないようだ。僕はほっと胸を撫で下ろした。

「今日は皆さんのがんばりに感謝して、採れたてのしいたけをご馳走いたします!どうぞジャンジャン食べてください!」
しいたけ老師がそういうと、シイタケンが右手からポコポコしいたけを出した!

いや、それはまずいって!さすがにバレるだろ!!

だけど、大人たちはしいたけ老師とシイタケンの姿を見て、最新のテクノロジーってすごい、と話している。

ある父親が「これはきっとどこかの高技術企業が開発した新型アニマトロニクスだよ。アメリカで見たことがある」と、友人に自信満々に語っている。

違います。

隣では、別の大人が同意する。
「このリアルさは、新しいシリコン素材を使ってるんだね。そして、なんらかのセンサーが組み込まれていて、子供たちが近づくと反応するんだと推測するね。」

ハズレです。

別の大人が感嘆の声を上げる。
「なんと見事なVRだねこれは!目の前にキノコがポンポン出てくるなんて、ARグラスなしでもここまでリアルになっているとは」

まったくの的外れです!

そんな大人たちの会話に、子供たちは耳を傾けず、しいたけ老師とシイタケンが生み出すキノコに夢中だった。
彼らは手から直接キノコが生える様子を目の当たりにし、自然の不思議に触れて興奮している。
一人の少年が叫ぶ、「すげー!これ、マジで魔法だよ!僕、シイタケンが魔法使いだって信じる!」

シイタケンも、子どもたちの驚きをさらに高めようと、手品師顔負けのドヤ顔をしながらどんどんしいたけを生み出している!
手からしいたけがあふれ出る様は、まるで大道芸の水芸みたいだ!

子どもたちはきのこ噴水を見ながらキャッキャ喜んでいる。
子どもたちはシイタケンの周りで輪になって、しいたけ老師が焼いてくれるキノコをほおばっては「もっとちょうだい!」と手を伸ばしている。
そのたびにしいたけ老師がにっこり笑って、次々と美味しそうなしいたけを手渡す。
キノコがどんどん出てくる不思議を楽しんでいる子供たちの目は、冒険の中にいるかのようにキラキラと輝いていた。
そんな子どもたちの様子に、しいたけ老師たちは心から喜んでいるようだ。

人が訪れなくなって荒れ果てた森が、再び、人の手によって美しく整備された。
そして、地域の人たちが森で楽しく過ごす時間が生まれたのだ。
しいたけたちにとってはこれ以上ない喜びなのだろう。
よかったね、と思うし、ほほえましくもあるが、僕としてはいつ大人たちにバレるかヒヤヒヤもんだ。

万が一、大人たちが着ぐるみの真実に気づいたら、この平和な光景は一変してしまうだろう。
しいたけたちも、今の平和な暮らしのままではいられないだろう。
きっと、マスコミがたくさん森に押し寄せる。興味本位で森を荒らす人も増えてしまうかもしれない。心無い発信もSNSで流れてしまうだろう。

そんな思いが頭をよぎると、手が震え、一瞬で冷たくなった。

1人慌てふためく僕をみながら、切り干しレンジャーは言う。

「タカシくん、大丈夫だ。君のおかげでこの森に親しみを持ってくれる人がこんなにもたくさんできた。それって、本当にすごいことだ。未来が変わったんだ。
君はまだわかっていないかもしれないけど、君の好奇心という力は、すごいパワーを持っているんだ。
細かいことは気にしないで、今はしいたけをおいしく食べようぜっ!!」

いつの間にか変装を解いて、切り干し大根の姿に戻って焼きたてのしいたけを食べてる切り干しレンジャーのことも、大人たちは着ぐるみだと思っているようだ。

僕が思うよりも、この世は不思議なことが意外と当たり前に受け入れられるのかも?
そういえば、母さんも子供の頃、切り干し大根の妖精が当たり前に近所にいたと言っていたっけ。僕が心配するよりも人は食べ物の妖精を受け入れられるのかもしれない。

いつの間にか、シイタケンの周りは笑顔の子どもたちであふれ、一緒に遊ぼうよとせがまれている。子どもたちはきのこが大好きになったようだ。

そんな光景を見ながら、僕は自分の勇者としての運命を受け入れ始めていた・・・
って、ムリムリムリ!!!

しいたけたちの役に立てたのは嬉しいし、森が明るく綺麗になったことに心からの喜びを感じている。
でも、だからといって自分が何か特別な存在に変わったわけじゃない。
世界を救うなんて大それたこと、自分にできるわけがない!!

本当にうまい焼きしいたけを食べながら、僕は自分が巻き込まれつつある変な状況に、最後まで抵抗しようと誓うのだった・・・。

【続く】

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