彼らは何処

朝、電車や街中でピカピカの新品のスーツに四角いカバンを持った新入社員らしき人を見かける時期になった。

私はいつもスーツのしつけをちゃんと取ったか勝手に心配している。
必ず1人はジャケットの後ろのしつけを取り忘れている人がいて、家族や会社で誰か教えてあげなかったのかなと不思議に思いつつ、私も声をかけてあげるか悩む。

私は通りすがりのスーツも着ていない着たことが無い赤の他人で、そんな奴に突然「しつけ取り忘れてますよ」と言われても素直に「ありがとう」とは思えないかもしれないし、恥ずかしい思いをさせてしまう可能性がある。

しつけをつけっぱなしにしているという状態のほうが恥ずかしい気もするが、いつかは自分で気が付くだろうし誰かに教えてもらうだろう。

その証拠にいつのまにか新入社員っぽい人は見かけなくなる。

私はこれがとても不思議だ。

あんなにたくさんいたのにどこに行ったのだろうか。

私は会社勤めをしたことが無く、両親もまったく違う職種だったのでいわゆるサラリーマンやOLの人たちがどんな生活をしているのかを知らない。

あのピカピカのスーツを着るのは最初だけなのか、1週間もすれば体になじんで新人感は消えるのか、あの四角い使いにくそうなカバンはやっぱり使いにくくてすぐ別のカバンに変えるのかわからないことだらけだ。

にしてもあの四角いカバンはお弁当も入れられそうにないくらい薄いし、硬そうで口があまり開かなさそうだし、チャックはすぐに噛んでしまいそうに見えるけれど実際どうなのだろう。

会社勤めの人たちはお昼ご飯は買ったり外で食べるのが常なのだろうか。
お弁当を持っていく人は少数派なのだろうか。水筒とかも入らなさそうだけど、どうしているんだろう。

いわゆるサラリーマンやOLの人たちがどんな仕事をしているのかもとても気になる。
ドラマやアニメの中でしか見たことがないので私はいつも「何をそんなにコピーしているんだろう」と不思議だった。資料をまとめているところとか実際に見てみたい。

知らないことを知るには経験する他ないが、会社員勤めだけは絶対に性に合わないので人に聞くしか私には知る術がない。

しかし残念なことに周りに会社勤めの人間がいないのでこの不思議は抱えたまま生きている。


大人になってもう一つ不思議なことは同い年に出会うことがぱたっと無くなったことだ。
私はずっと1学年150人以上は抱える大きめの学校で育ってきたので同い年の子がうじゃうじゃいる中で生きてきたが、大人になったとたん会わなくなった。

同じ街に住んでいたのに、みんなして引っ越したのかと思うくらいばったり出会うこともない。

あの子たちはどこへ行ったのだろう。元気でやっているだろうか。何かをコピーしたり、まとめたりしているんだろうか。

ひとり暮らしのため引っ越したあとも、しまったはずの場所に物が無くて不思議は増え続けている。

せっかくニンテンドープラチナポイントで交換したピノキオのレジャーシートも、しまったはずの引き出しを何回見ても無い。

どこへ行ってしまったんだろうか。ちゃんとこの部屋にあるのだろうか。

この世は不思議であふれている。


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