傍聴記録10 職務質問中に大麻を飲み込もうとして失敗した男の裁判

※プライバシー保護の観点から氏名や住所などはすべて変更しております。

横浜地裁
2016年6月7日(火) 7F 713号法廷 14:30-15:30
萩原 敦
平成28年(わ)第xxxx号 大麻取締法違反 新件
裁判官:桃木裕子 書記官:阿部康徳 検察官:春日正治 弁護人:野島陸人

裁判官「では開廷します。被告人は証言台に出てください。名前はなんと言いますか?」
被告人「萩原 敦です。」
裁判官「生年月日はいつですか?」
被告人「昭和56年8月15日です。」
裁判官「本籍はどこですか?」
被告人「静岡県藤枝市光洋台62」
裁判官「住居はどこですか?」
被告人「住居は、渋谷区道玄坂3-12-7 ルクス道玄坂2301号室。」
裁判官「職業は何ですか?」
被告人「デザイン会社社員です。」
裁判官「会社員ということでよいですか?」
被告人「そうです。」

裁判官「ではこれから萩原さんに対する、大麻取締法違反被告事件の審理を行います。」
被告人「はい。」
裁判官「まず検察官が起訴状を朗読します。そこに座っていてください。検察官お願いします。」

検察官「公訴事実。被告人はみだりに平成28年6月6日。神奈川県横浜市中区長者町11-7-22「横浜鑑定団 長者町店」駐車場内において、大麻成分であるテトラヒドラカンナビノールおよび麻薬であるコカインの付着する植物片、1.157gを大麻と認識して所持したものである。罪名および罰条、大麻取締法違反、同法第24条の2第1項。以上です。」

裁判官「今、検察官が読みあげた事実について、これから審理をおこないます。その前に黙秘権について説明しておきます。被告人には黙秘権という権利があります。したがって答えたくない質問については答えを拒むことができますし、最初から最後までずっと黙っていることも出来ます。もちろん答えることもできますが、 被告人がこの法廷で述べたことは、被告人にとって有利、不利を問わないで、証拠となることがありますので、答える場合は、その点を注意するようにしてください。」
被告人「はい。」

裁判官「それを前提に早速質問します。いま検察官が読んだ事実の中に、どこか間違っているところはありますか?」
被告人「ありません。」
裁判官「はい。弁護人のご意見をお願いします。」
弁護人「被告人と同意見です。」
裁判官「では証拠調べに入ります。元の席に戻って座ってください。萩原さん、住居について、ちょっと確認させてください。今住んでいる住居はどこですか?」
被告人「彼女の家です。交際相手の家。世田谷区用賀6-37-17 フラットパークY807号室」
裁判官「それでは証拠調べに入ります。検察側の立証から行います。検察官お願いします。」
検察官「はい。検察官が証拠によって証明しようとする事実は次のとおりです。第1に被告人の身上経歴等です。被告人は静岡県で出生し、高校中退後、現在はデザイン会社に勤務しており、住居地で単身生活していました。被告人に前科前歴はありません。第2に犯行状況等ですが、被告人は、アメリカのサンフランシスコに行った際、友人に誘われて大麻を吸うようになりました。被告人は巻紙で大麻を巻いて、これに火をつけて吸引する方法で大麻を使用していました。被告人は犯行前日、自宅のバルコニーで大麻を吸引しました。犯行状況は公訴事実記載のとおりであります。第3として、その他情状等。以上の事実を立証する為、証拠等、関係カード記載の各証拠を請求します。以上です。」

裁判官「はい。では検察官の証拠請求に対する弁護人のご意見をお伺いします。」
弁護人「甲号証については、いずれも同意します。乙号証なんですけど、乙1号証は同意しまして、乙2号証、同意するんですけど、ちょっと信用性について争います。」
裁判官「はい。どの部分ですか?」
弁護人「1枚目の2から始まるところの、2段落目すべて。3段落目すべて。あと4段落目の一文目っていうんですかね。」
裁判官「最初の行? 。がつくまで?」
弁護人「はい。」
裁判官「では証拠については同意がありましたので、全て採用して取り調べます。では検察官お願いします。」
検察官「はい。まず甲号証です。甲1号証は現行犯人逮捕手続き書になります。本件犯行日時が記載されているほか、現行犯人逮捕の時の状況等が特定されています。甲2号証は捜索差押調書になります。えー被告人の着衣および携行品を捜索差押した結果および押収品について本件大麻の押収番号等が特定されています。甲3号証は写真撮影報告書になります。押収した植物片の形状等が添付の写真で明らかとなっております。甲4号証は鑑定嘱託書。甲5号証は鑑定書になります。甲2号証、甲3号証で特定している植物片を鑑定士、鑑定した結果、大麻成分と麻薬成分が検出されたことが特定されております。甲6号証は大麻になります。後で被告人に示します。甲7号証は写真撮影報告書になります。えー、被告人の使用していた車両から巻き紙とライター等が発見されたことが特定されています。その形状が添付の写真によって明らかとなっております。次に乙号証です。乙1号証については被告人の身上経歴についての供述調書になります。概ね冒頭陳述記載のとおりの身上関係が述べられています。乙2号証は犯行状況についての被告人の供述調書になります。概ね冒頭陳述に記載のとおりの経緯で大麻を使用するようになったことなどが述べられています。乙3号証は被告人の戸籍になります。以上です。大麻を被告人に示します。
裁判官「はい。被告人は証言台に出てください。」
被告人「はい。」
検察官「一緒に確認してほしいんですけども、これはあなたが持っていた大麻の植物片、これはあなたのもので間違いないですかね?」
被告人「はい。」
検察官「これはもうあなたとしては、いらないものですか?」
被告人「はい。」
裁判官「では元の席に戻ってください。」

裁判官「では引き続き弁護側の立証へ移ります。証拠請求をお願いします。」
弁護人「弁1号証として、被告人作成の反省文を提出したいと思います。あと被告人質問をお願いします。」
裁判官「では反省文に対する検察官のご意見伺います。」
検察官「はい。同意いたします。」
裁判官「では採用して取り調べますので要旨の告知をお願いします。」

弁護人「弁1号証ですが、被告人作成の反省文となっております。趣旨としては被告人が本件犯行について反省の意を示している事実ということでして、被告人が拘留中に本件犯行について深く反省して、あの今後同じようなことを行わないこと、今後更正の意欲を示していることなどについて記載してあります。」

裁判官「はい。では、これから被告人質問を行います。被告人は証言台に出て、椅子に座ってください。では弁護人お願いします。」
弁護人「はい。それでは私の方から順番に質問していきます。」
被告人「はい。」
弁護人「あなたが今回起訴されたのは平成28年5月23日の月曜日っていうことなんですけども、あなたが保釈されたのは、いつの日か覚えていますか??」
被告人「4月25日の月曜日です。」
弁護人「あなたが勾留されていた時に、保釈の時期について、私に対して何か要望を伝えていましたか?」
被告人「なるべく早くお願いします。っていうふうに伝えました。」
弁護人「なるべく早く外に出たいというかたちで、私に要望伝えていた1番の理由というのは何ですか?」
被告人「自分がいない事で仕事に支障が出ているんで、それを早く解消したい。そう言いました。」
弁護人「で、実際のところ、あなたが保釈されてからは、どのような生活をしていましたか?」
被告人「仕事メインでやっていました。」
弁護人「仕事メインっていうと、だいたい1日のスケジュールを教えていただけますか?」
被告人「朝の8時9時から12時間位は、まあ大体デスクワークしていました。」
弁護人「わかりました。で職場のほうからは今回の件で仕事を辞めさせるとか辞めさせないとか、そういったあなたの処遇に関する話しは何かありましたか?」
被告人「はい。大丈夫です。」
弁護人「大丈夫っていうのは?」
被告人「続けられるということです。」
弁護人「今回の件の前後で、職場の方の、あなたに対する対応っていうのは何か変わりましたか?」
被告人「以前と変わらずといった感じです。」
弁護人「今回の件に関して、職場の上司の方は何か言っていましたか?」
被告人「反省しろと。2度とこういうことのないようにと言われました。」
弁護人「今後も今の会社で仕事を続けていくつもりである。ということでよろしいですね?」
被告人「はい。」
弁護人「あなたの周辺の方について、おうかがいしたいと思います。」
被告人「はい。」
弁護人「拘留中に私以外に面会に来てくれた方というのはいらっしゃいますか?」
被告人「仕事の上司と友達、まあ同僚と交際相手。の3人です。」
弁護人「まあ3名挙げていただいたんですけれど、その方それぞれ何回くらい来てくれましたか?」
被告人「まあ色んな組み合わせで来たんで、細かくは数えていないんですけど、週の半分位は来てくれました。」
弁護人「ちなみに、そのお三方、それぞれどちらに住んでいますか?」
被告人「みんな都内から来てくれました。」
弁護人「で、あなた今回横浜の留置場で勾留を受けていたっていうことですね?」
被告人「はい。」
弁護人「職場の上司の方とか同僚の方とか、具体的に面会の際に、どういった話しをしましたか?」
被告人「仕事の内容、仕事の話です。」
弁護人「今後どうしていこうか? とかまあそんな話しですかね?」
被告人「自分がいないことで、どうなっているかとか。」
弁護人「交際相手とは具体的にどういった話しをしましたか?」
被告人「早く出たいと。」
弁護人「で今回あなたは制限住居として、その交際相手の方の家で暮らしていましたね?」
被告人「はい。」
弁護人「で、今回の件までは、あなたは一人暮らしをしていましたか? それとも誰かと一緒に暮らしていましたか?」
被告人「1人で暮らしていました。」
弁護人「今回の裁判が終わった後、誰かと一緒に生活していく予定はありますか?」
被告人「引き続き、交際相手と暮らしていこうと思っています。」
弁護人「今回の件の保釈金についてなんですけど、どなたが負担しましたか?」
被告人「さっき言った面会に来てくれた仕事の上司です。」
弁護人「そういった仕事の上司や、交際相手の方々の、あなたに対する行動について、いま現在感じていることというのはありますか?」
被告人「今まで通り接してくれているので、裏切らないように。」
弁護人「支えてくれて感謝しているとか、そういった感じですかね?」
被告人「はい。」
弁護人「で例えば今後その職場の上司や同僚、交際相手とかが、今後もう大麻とか止めたほうが良いよ。というかたちで、あなたに言ってきた場合、あなたはどのように対応しますか?」
被告人「止めたほうが良い。っていうか、やっていないんですけど。」
弁護人「まあ今後もう関わらない方が良いよ。というかたちの質問をされた場合」
被告人「関わるつもりはないです。」
弁護人「今回のその、あなたの勾留期間、だいたい3週間位だったんですけど・・・その質問は撤回します。今回の裁判はまだ結果の方がどうなるかっていうのはわからないんですけど、もう1度大麻所持で捕まってしまって裁判にかけられるとした場合、その時の裁判の結果としてはどうなるとが予想されますか?」
被告人「重くなる。」
弁護人「大麻所持に関して、今後2度と行わないように、あなた自身、いま心がけていること、今後心がけようとしていることは何かありますか?」
被告人「飲屋街とか。まあ飲み歩かないようにしています。気をつけています。外にあまり出ないように。」
弁護人「いま現在もそういったことをしているし、今後もやらないと?」
被告人「はい。」
弁護人「例えばの話しなんですけど、あなたの知人とかが、大麻を譲り渡そうとしてきた場合、あなたはどのように対応しますか?」
被告人「まあ自分の経験も話して、注意します。」
弁護人「自分がこうやって今回の件で、ある意味痛い目を見たっていうことで、しっかり友達の方にも言うかたちですか?」
被告人「はい。」
弁護人「終わります。」

裁判官「はい。検察官どうぞ。」
検察官「あの信用性を争う部分については、何も聞かれないということでよろしいですか?」
弁護人「ちょっとこちらについても、裁判官、質問してもよろしいですか?」
裁判官「はい。」
弁護人「一応確認しておくんですけど、乙2号証、大麻を使用したと記載があるっていうことなんですけど、使ったか、使ってないかっていうと、あなたはどうですか?」
被告人「使っていないです。」
弁護人「使っていない。ということですね。で、使ってないというかたちの、別の調書を警察のほうで取ったことはありますか?」
被告人「あります。」
弁護人「ただ今回出て来ている証拠は、大麻を使ったことがあるという証拠でよろしいですか?」
被告人「はい。」
弁護人「以上です。」

裁判官「検察官どうぞ。」
検察官「はい。最後の質問からの関係ですけれど、使ったことがないっていうのは、これまでに1度も使ったことがないということなのか? それとも最近使ったことがないという意味なのかどっちなんですか?」
被告人「最近。」
検察官「この日あなたが持っていた大麻っていうのは、どういうふうにして手に入れたものですか?」
被告人「神南町に飲みに行った時に拾ったものです。」
検察官「大麻が、落ちていたっていうことですか?」
被告人「そうです。あの、ビニールの袋に入っていて、落ちていたんで、拾っちゃったんです。」
検察官「それは今日見せたような、その葉っぱがむき出しの状態で入っていましたか? それとも別の状態で入っていましたか?」
被告人「巻かれている状態で入っていました。そのことを調書で言いました。」
検察官「あなたが見つけた時に、ビニールに入っていたという大麻は、そうすると、あなたの話しだと、大麻の、その大麻がむき出しの状態で入っていたわけじゃなくて、タバコのような状態で巻かれていたっていうことですか?」
被告人「そうです。」
検察官「あなたそれを見た時に、何だと思ったんですか?」
被告人「最初なんだかわからなかったんで、手に取って、匂いをかいで、それでサンフランシスコにいた時に嗅いだことあるヤツだったんで、大麻かなあと思った。」
検察官「じゃあそうすると、拾って、中の匂いを嗅いだ時に、以前自分が嗅いだことのある大麻の匂いと似ていたから大麻だろうと思った。そういうことですか?」
被告人「はい。」
検察官「それっていつ位の頃の話しですか?」
被告人「今年の頭1月2月位。細かい日にちまでは覚えていないです。」
検察官「今年に入ってすぐ位って感じですかね?」
被告人「そうです。」
検察官「あなたはそれをどうしたんですか? 拾ってどうしたんですか?」
被告人「拾って、家に持ち帰って、車に置いておいたんですよ。家に置くのが怖かったんで、車に隠して置いていました。」
検察官「何でそもそも持ち帰ろうと思ったんですか?」
被告人「何でっていうか、まあ興味ですね。」
検察官「興味っていうのは? 具体的にどういう興味ですか?」
被告人「薬物とかに対する興味。大麻に対する興味。」
検察官「大麻を持っていることが、法律に違反することはわかっていたんですよね?」
被告人「はい。」
検察官「それでも、あなたとしては、その時興味があったんで、たまたま落ちていた大麻を拾って、車の中に保管しておいたってことなんですか?」
被告人「はい。」
検察官「それが今年の初め?」
被告人「そうです。」
検察官「興味があって持っていた大麻を、何で逮捕される4月4日まで車に置いていたんですか?」
被告人「ちょっと意識が薄れていたのがデカいですね。」
検察官「それは忘れていたってことで?」
被告人「いつか吸おうと思って車に入れていたんだと思います。あんまり意識はしていなかったです。」
検察官「それで、犯行当日のことを聞くんですけど、その日、職務質問を受けた時に、車を見せてほしいと言った時のことなんですけど、車を当初、見せたくないっていうふうに拒んだんですよね?」
被告人「そうですね。その、思い出したんで。あるな車に。と思って。」
検察官「あなたとしては大麻が入っているのを思い出したんで、警察に見られたらマズいと思った?」
被告人「はい。そうです。」
検察官「そのあと、あなた自身、大麻を口の中に入れて、っていうような行動をしていますよね? 反省文にも書いてますけど。」
被告人「はい。」
検察官「それは、どういう気持ちで口に放り込んだんですか?」
被告人「気が動転して、口の中に入れました。」
検察官「最終的には吐き出して? っていうことになるんですかね?」
被告人「そ、そうです。」
検察官「サンフランシスコに行った時に、嗅いだことのある匂いだと、先ほど言っていましたよね? 見つけた時に匂いを嗅いだっていう。」
被告人「はい。」
検察官「その海外に行った時に、あなた自身に吸った経験はあるんですか?」
被告人「そこは答えたくないです。」
検察官「わかりました。」
被告人「すみません。」
検察官「先ほど大麻を最近吸っているか吸っていないか? という先生の質問に対して吸っていないと答えているんですけど、他方で、あなたが取り調べの中で、この日ね、捕まった当日むしゃくしゃしていて、自分で使おうと思いましたっていう供述調書も、けっこう勾留期間の後ろのほうになって作成されている供述調書の中に、そういう内容が出てくるんですけど?」
被告人「はい。むしゃくしゃして吸おうと思っていました。」
検察官「それは、この逮捕された日に、使おうと思っていたということですか?」
被告人「まあ、うーん、いつかとか、決めていたわけではないです。何かまあむしゃくしゃしていたんで、そういう時に吸おうと思っていました。」
検察官「じゃあそうすると、いつかっていうのはおいておいて、仮にあなたが生活してむしゃくしゃした時に、吸おうと思って持っていたという意味ですかね?」
被告人「はい。」
検察官「で、今回あなたの車の中から、ジョイントだったり、」
被告人「ジョイント???」

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