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【ライブメモ】tacica猪狩翔一『THE SUN ALSO RISES vol.231』 at 2023.12.06 F.A.D YOKOHAMA

THE SUN ALSO RISES vol.231
稲村太佑(アルカラ) / 猪狩翔一(tacica)
2023年12月6日(水)
19時開場/19時半開演

セットリスト

01. 私服の罪人(2011年AL『sheeptown ALASCA』)
02. ぼくら(tacica 2023年miniAL『YUGE』)
03. ordinary day(2018年Sg)
04. ディスコード(tacica 2023年miniAL『YUGE』)
05. ネバーランド ※僕が今日の日を忘れなくても〜
06. 荒野を行く(tacica 2023年miniAL『YUGE』)
07. 諦める喉の隙間に新しい僕の声が吹く(2017年miniAL『新しい森』)
08. DAN(2013年AL『HOMELAND 11 blues』)
09. ダンス(tacica 2022年AL『singularity』)

猪狩さんが先行。19:30〜20:23のたっぷり50分。

会場のことなど

12月にしては寒くない過ごしやすい日。今年は何度F.A.Dに来ただろう。いつもは開場時間直前にならないと看板が出ていないけど、今回はわりと前から出ていた。会場を間違えていないとホッとする瞬間。

会場に入ると椅子が整然と並べられていて、ここまで多いのは初めてかも。後方まで椅子があった。ステージの譜面台には、猪狩さんの黄色いファイルがセットされていた。

感想など

猪狩さんがぬるっと舞台袖から出てきて始まった。服装は、白のスエットに黒のTシャツ重ね着、デニム、メガネ。いろはすとコーヒーのペットボトル。スタンディング。

1曲目はまさかまさかの私服の罪人。アルバムラストの曲で、ライブでも後半に歌われることが多いこの曲をまさか弾き語りライブで、しかも1曲目に歌うとは誰が予想できただろう。しかも「罪人」は「ざいにん」ではなく、「つみびと」と読むということも発覚。マジか。ダブルで驚きだった。

ぼくらの手慣れ感。歌声と演奏がなめらかで、湧きでるようにスルスルと奏でられるのが心地よかった。

ちょっとひさびさな感じがしたordinary day(直近のツアーでも歌ってたからそんなことはない)。2018年、個人的に仕事でつらかった時期にリリースされた楽曲で、そのころのことをぼーーっと思い出したりしていた。ここのところ相次いでいたミュージシャンの訃報のことも考えちゃったりして、より歌詞が染み込んだ。

ディスコード、最後のサビフレーズが〈ディスコードを思い出せ〉と強い言葉、命令形になっていてゾワゾワっとした。

ネバーランドに出てくる〈赤い夕日〉って、いつだかの弾き語りライブで、夕陽がなぜ赤いのかという話をして「これで一曲書けそう」と言っていたことがあったけど、この曲だったりするんだろうか。

諦める喉の隙間に新しい僕の声が吹く。弾き語りでは初披露。今年の集う鹿以来、にわかに存在感が出てきた曲。歌詞的にも、とても弾き語りに似合う曲だなと思った。

〈なーんどでも〉と始まった瞬間、息を呑んだ。まさかの、DAN!!!!!興奮。混乱。歓喜。衝撃。畏怖。いろんな感情が入り混じり、それでもひとことも聴き逃すまいと全神経を集中させて聴いた。〈残り全部の命を使え〉。めげそうになるときに支え、奮い立たせてくれる曲。これまで弾き語りライブで歌いそうで歌っていなかった曲。いつもは黒のグレッチで骨太のサウンドだけど、今回はアコギで語りかけるように歌っていて、でも芯の強さは変わらずあって、とてもとてもとてもよかった。

そしてラストはダンス。いわゆる締め曲を、セットリストの三分の一を占める3曲も聴けるなんて。胸いっぱい、大満足の全9曲だった。

猪狩さんは11月26日の誕生日を迎えて40歳になって初の弾き語りライブ。だからセトリがいつもとはちょっと違う感じなのかな、キリの良い節目を迎えた新たな一歩なのかな、なんて思ってしまうけど。けれど、猪狩さんはそれほど意識はしてないような気がする。それでも思いたいように受け取っちゃう。

MCは少なめだった。

「前回の弾き語りライブで弦が切れちゃったからチューニングするのがこわい。かたくなってる〜」とかわいい感じがあったり。

「嘘みたいな本当の話」をしてくれた。今日猪狩さんが乗ってきた電車は座席はぜんぶ埋まってて、立ってる人もそこそこいるくらいの混雑。人が多く降りたときに視界の端のほうで、椅子取りゲームに挑む “すばやく動く人” の存在に気づいた。その人は結局座れなかったんだけど、猪狩さんが立っていた斜め前の人が慌てて降りて、あ、席が空いたから座ろうかなと思ったその刹那、“すばやく動く人” にぐいっと奪われてしまったということだった。そこまではなくもない話なんだけれど、その “すばやく動く人” が、なんと猪狩さんと同じマンションの人だったということだった!!「そんなすばやく動く感じの人じゃないと思ったんだけどな……」という嘆きとともに、「だから帰りたくないです」と締めて会場は笑った。

そんな感じ。

終演後、会場を出て右側の喫煙所にふと目をやると、猪狩さんが天を仰ぎながらタバコを吸っていたのを目撃。うわあああとなって、さささと駅へ向かった。

上書きしたくなくて、AirPodsをつけず無音で帰路についた。いつまでも余韻を楽しんでいたくなる夜だった。

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