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粧う

詩世と書いてうたせです。よろしくお願いします。


作文や詩を先生や友達に褒めてもらえるのが嬉しくて、小説家になりたかったのは大昔の話。




ずっと忘れていたけれど、それを思い出させてくれた人がいて、noteをはじめてみることにしました。

小説・エッセイこだわらず、色々書いていこうと思います。


第一号は、一応小説。ちょっと前に書いたやつ。









粧う


 目の大きさ。足の太さ。髪の艶。写真で盛れるか。部活の実力。先輩からの好感度。いかに面白くないことで笑えるか。あとはまぁ、テストの点数とか?忘れてた、運動神経。嫌な記憶すぎて頭から消えてた、バレーボールの授業なんか滅びればいいのになぁ。


勉強の成績より、もっと厳しい採点の、しかも相対評価のランク付けがつきまとう。それが学校。今思うと、高校生って不思議な生き物だ。よく死ななかったな、私。

 





 


 なんで今、高校時代のこと考えたんだろう?…あぁそっか、今日右目だけ一重になっちゃってる。



アイラインを引き終わったところで、右目の瞼にアイプチの液を塗った。極微量で、丁寧に。ここで失敗すると、ここまでの1時間が水の泡だもんね。



 化粧は、本当に楽しい。精神安定剤、とも言える。平行眉、二重の丸目、主張しすぎない鼻。人中短縮して、上・下唇の比率は1:2。涙袋はキラキラだし、目の切開ラインも忘れない。駄目押しでもう一回まつ毛をあげて、ようやく納得の完成度になった。



 

 女は、まず見た目ですべてを判断される。そんなことを、大人になってから悟った。でも、化粧をするのは自分のため。周りの評価なんか知らないけど、私はこの化粧をした顔が好き、それだけだ。まぁ、会社に怒られるから、この顔は休日限定だけどね…



 二重の女を呪ってた。写真に写るのが嫌だった。他人の評価が恐くて、闇に溶けたような夜の中で、いつも泣いていた。


そんなとき、そのままの私を綺麗だって言ってくれたのが、君だった。可愛いよって、困った顔で、目を逸らして。あぁ、私そのままでもいいのかもしれないって、そのとき初めて思えたんだよ?

 



化粧をするようになってわかった。
今私は、人を騙して生きている。本当の自分なんて、自分でもよくわからないな。見せたい姿を提示して、余った自分を心に秘めて。




 彼と会わなくなってから、随分化粧が変わった気がする。戻す気はない。むしろこの化粧じゃなきゃ、もう立っていられない。
 君が私のそのままを褒めてくれたように、そのままの君を知りたいだけだった。





 粧ってる私を、君は受け入れてくれるのかな。

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