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素敵なあなたに笑顔を手渡せるなら


前置きとして
アロマンティック・アセクシャルを自認している私は現在シスヘテロの男性と交際関係にあります。
※シスヘテロ=シスジェンダー兼ヘテロセクシャル
体の性別と自分のありたい性が一致しており(=シスジェンダー)、異性が恋愛対象になる人(=ヘテロセクシャル)。

そもそも以前に投稿した記事で私が恋愛感情についてピンとこなかった話を書きましたが、実際にこれまで「交際」という関係になった事がある相手は今のパートナーを含めて2人になります。
中学生の頃に同級生の男の子に片思い(もどき)をしていた事はあったのですが、この気持ちは今思い返すともっと仲良くなりたいという感情でしかなく、世間でいうところの恋愛感情(ここでは特定の相手に触れたいと思う等を含めた感情とします)を抱いてはいませんでした。
そして初めて交際する事になった人は、高校生の頃に仲良くなった同級生の男の子でした。お互いに高校に在学している間に親しくなり相手から付き合おうと言われて何度か2人で出かける等をしてみたのですが、当時の私は勉強一筋の受験ガチ勢だったので、交際相手と過ごす時間よりも勉強している時間のほうが私にとっては魅力的で有効な時間の使い方だと感じている自分に気がついてお別れをする運びとなりました。(今思い返してもすごく失礼過ぎて申し訳なさでいっぱい)
この通りまともな恋愛経験とも言えないような交際遍歴なのですが、最初で最後の交際相手との結末から相手を蔑ろにしてしまったという罪悪感がずっと残っており、世間でいうところの恋愛感情が無い自分はたとえ誰かと交際する事になっても交際相手を大切にできないと確信したので、自分が誰かを必要とするまでは無理に交際しなくてもいいだろうというスタンスで大学生活を過ごしていきました。

そして本題の現在交際関係にあるパートナーについてですが、パートナーは私よりも歳が1つ上なので1つ年上の先輩という形で大学で出会いました。私が1年生の頃から所属していた部活動の先輩だったので、部として活動していく中で関わりを持つことになったのですが、後輩にも分け隔てなく話しかける様子から最初は「優しい先輩なんだろうな」という印象でした。
そして部の活動で他校を訪問したり、入学式や学園祭などのイベントに参加した際にパートナーと一対一でまともに会話をする機会を得た事からこの一件は始まりました。実際に会話してみるとパートナーは相手に質問をするのが上手く初対面でも会話を自然に進めていける人でした、さらにパートナーは誰に対しても自然体で話すことが出来るという事を部の活動等を通して知っていきました。どんなに出来た人でも人間なのでタイミングによっては自分の事で手一杯になる瞬間もあるだろうに、どんな時でもどんな人に対しても一定の距離感で接することが出来るパートナーの姿勢は私にとってとても好印象でした。

さらに月日を経てからパートナーと食事に行く事になりました。私個人としては男女の友情は成立する(そもそも他人に対して恋愛感情を持たないので友情以外の何かが生まれると思っていない)派の人間なので一対一で食事に行く事自体に抵抗感は無いのですが、この辺りの見解については人によって大きく異なるので相手がどのような人間かは非常に見極めます。そしてパートナーも私に近い考えを持っているとこれまでの言動から推察したのと、一対一で話しても気まずくなく、普段の対応から柔和で当たり障りのない人に見えるパートナーがどんな人間なのか少し興味がわいたので食事に応じました。
個人で話してみるとやはりその人のパーソナルな部分が垣間見えるのですが、他愛もない話からこれまで生きてきた中で経験した出来事を話していくうちに、お互いのバックグラウンドや感じ方、考え方も正反対で全く異なっているという事がわかり、さらに興味が増していきました。
考え方や感じ方が違うと見えている景色も違ってくるようで、パートナーとの会話はいつも新しい発見があったり、これまではスルーしていたような出来事に対して新たな疑問が生まれたりする事が私にとってはとても興味深くて刺激的な時間でした。これまでの経験上、価値観の違いが会話を進めていくうえでの障壁になる事も少なくないと思っていたのですが、パートナーは自分と相手の区別がついているので、自分の考えがある一方で相手の考えを知っていく事に全く抵抗が無く、むしろ好奇心から相手の考えを聞きながら疑問をぶつける事でさらに話を掘り下げていくような所が私にとっては居心地の良い距離感に感じられました。

パートナーと話す事が私にとってとても楽しかったので、その食事の後も何度か2人で会って話す事を繰り返しました。正直、同性・異性問わず一対一で休日に人と会うという事自体が私にとっては稀なケースだったので(よほど付き合いの長い友人以外は身構えてしまうので滅多に会う事は無いです)、自分の中でこの人は一体どのような位置づけにあるのか、どのような距離感で接していく事が私にとって居心地が良いのか測りかねている状態になりました。
そんな距離感バグが起きている中でパートナーから「付き合おう」という旨を伝えられ事態は急変していきます。
ただでさえ大切にできる人間の数には限りがあると考えている私にとって距離感は非常に重要な指標になるのに、その指標がバグっている相手と交際まで検討するのは、私の頭の中の処理が追い付かないと踏んだ私はパートナーに今の正直な気持ちを伝えました。
「あなたと一緒に過ごす事はとても楽しいけれど、交際を検討するには一緒に過ごした年月が短すぎるので少し時間が欲しい。」正直よく覚えていないのでこれが正確かどうかは怪しいのですが、たしかそのような旨を伝えたと思います。この言葉を聞いてパートナーは案外普通に受け入れてくれました、おまけに「今後どんな風に接していけば良いのかわからない。」と言った私に「別に普通に、あ、保留にしている人だ。程度でいいんじゃない?」と言ってのける始末でした。
これまで本人やその周囲の人々から見聞きしたパートナーの情報から推測するに、パートナーはこれまである程度の人数の異性と交際をしてきた事がうかがえたので、最初は単に私という異性に興味を持ったのかと警戒する方向にやや思考がシフトしていったのですが、数週間「保留」という謎の期間を設けたにも関わらず、接し方に特に変化も無くこれまでと変わらず2人で食事に行ったりする事を繰り返していました。

しかし世間でいうところの「保留期間」というのは長くても一カ月程度らしく、一カ月を少し過ぎた頃に痺れを切らしたパートナーはほんのりと「このまま友達でも僕は構わない。」という旨を伝えてきたのでした。
もちろん保留期間の間私は自分自身のセクシャリティも踏まえた上で本当にパートナーと交際ができるのか自問自答を続けていたのですが、どうしても自分自身のセクシャリティであるアロマ・アセクが私にとってはネックになってしまい、いまいち一歩進める事が出来ずにいたのでした。しかしパートナーの口から出たこの言葉を聞いて、自分がアロマ・アセクである事以外に彼と交際する事になんの躊躇いも感じていない自分に気が付き自分でも驚きました。冒頭に語った最初の交際相手に対する罪悪感を思い出してもうあんな事はしないと心に決めていたはずの私の気持ちが、私自身も知らないうちに変化していたのです。それだけパートナーと過ごす時間が私にとって楽しいものだったという事に改めて気が付いた私は、自分のセクシャリティの事ももちろんあるからまたモヤモヤしたり悩んだりする事も沢山あるだろうけど、幸いパートナーが私を気に入ってくれて、私ももう少しこの人と過ごしてみたいと思っているうちは交際してみてもいいかもしれないと考え、交際する運びとなりました。

はたから見ると異性のカップルなのですが、私としては友達兼家族のような感覚でお付き合いは続いています。(パートナーはどう思っているかはわからないのですが)このような感覚でお付き合いしている事から、「彼氏いるの?」と聞かれたり自分から「彼氏が〜」と言うのに抵抗感が未だにあるのですが(聞かれた時は肯定しますが、なんか微妙な気持ちにはなる)、あくまで私はパートナーをお付き合いしている人として大切にしていきたいなと思っています。

私がパートナーに持っている感情が世間で言うところの「恋愛感情」かどうかは正直わかりません、でもパートナーとの間で信頼関係が破綻しない限りは一緒に居られるような気がしています。いつまで続くかはわかりませんが、続くうちはもう少しこのままで居ようかなと思っていたら、ついこの前交際し始めてから2年が経ちました。

以上、アロマ・アセクが交際することになったお話でした。こんな人もいるんだな〜と思っていただけたら幸いです。