そして、宇宙となる ~アイドルのライブを見ること~
ずっと、JPOPを小馬鹿にしていて、アイドルはさらに小馬鹿にしていた。あんなものは芸術じゃない、という肥大した厨二病が、僕の目も耳も曇らせていた。
知り合いがやっているからと、アイドルの現場に行くようになって、だんだんとアイドルの曲がいい、と言えるようになった。大学時代以降、ジャズや武満を経て、だいぶ、耳が浄化された気がする。
だんだんと、自分と無関係な(知り合いがやっているアイドルではない)アイドルを見るようになった。校庭カメラガール3をかっこいいと思い、Astromateをかっこいいと思い、ひとさいをかっこいいと思い。ただ、ずっとひとりで、後ろの方で見ているだけだった。
徐々に、僕の見方も定まってきた。舞台を観たり、テクスト分析を少しかじったり、岡田斗司夫のYouTubeで「映像作品て、こうやって読み解いていくんだ!」ということを知ったりして、その横展開として、アイドルのライブを見ている。
まあ、だから、ライブを見に行くのに向いてないのだと思う。悲しいことに。
そもそも、そんな見方をしていて、本当にアイドルを好きなんだろうか?と思うわけです。
かわいいだけじゃダメなんですか?と。
黛実さんや、らむさん、コルダの関係者に挨拶せねば、ということで特典会にも頑張って突撃して、なんとか行けるようになり、遂にはひとさいなんかの、初めましてでの特典会にも行くようになった。オタクとして、またひとつ進歩してしまった。後ろでぼーっと見ているだけだったはずなのに。
マブダチに現場で会って、それはそれで感動だったんだけど、彼女の推してるグループのライブに行った。Utage!。白を基調としたドレス、かわいい衣装、担当カラーのラインが入っている。笑顔がかわいくて、動きもかっこよくて、歌も良かった。
何曲目か。アップテンポのカッコいい曲。最後のサビに入る前「みんなクラップ!」と煽る。彼女たちとともにクラップをする会場。左の方では円陣を組んで精一杯にコールをしている。飛び跳ねている人たち。柵を飛び越えそうな勢いで、最前で跳ねている。ぐちゃぐちゃに入り混じったカオスを、音楽がひとつにまとめ上げている。
明るいコードの中にアイドルの歌声が響く。明るく、力強く、精一杯に、世界を満たす。四つ打ちのバスドラムが、ドンドンドンドンと心臓を揺らしていく。会場は一体となって、もはや宇宙であった。
僕は宇宙に包まれて、子どもが初めての体験に目を大きく輝かせるように、表現し難い感動を、感動なんて陳腐さではなく、心の底まで包まれていた。僕はライブの一部であり、ライブそのものであった。言語を失って、感性だけが宙に浮いていた。
本当に良いものを観たら、言葉なんて出なくなる、というのが岡田斗司夫の言っていたことだけど、まさにそうだと思う。茫然としていた。
このためにライブに行くのだ、と思う。
命そのものとなる。生きていることを実感するために。ステージの彼女たちに愛を送るのである。
ああ、だから、僕はアイドルのライブの見方を変えなければならない。もっと、頭を空っぽにしなければならない。
言語化は世界を認識することでもあり、世界をぶつ切りにすることでもあり、世界の解像度を下げることでもある。
意味について考えすぎてはいけない。全て「意味化」することは、非効率な、何でもないものを排除していく。しかし、この非効率こそ、人生において大切なのだ。
そこには遊びがある。
遊びこそ、文化的な、人間的な、精神的な豊かさなのだから。
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