見出し画像

出世がしたいか?出世がしたいなら……

 ジェンダーギャップ121位のヘルジャパンより、原罪を背負いし男性がお送りします。

 本邦でよく言われる男女賃金格差。上昇婚批判への反論としても良く使われていますね。曰く、女性の方が給与が少ないのだから配偶者に経済力を求めるのは当然、男女給与格差がなくなれば上昇婚をしなくなるはずだ。

 これについては悪のロジハラにより概ね否定されている感はあります。曰く、女性で高い経済力を持つものは結局それ以上を求める統計的事実がある、という奴ですね。

 そもそも男女の給与の格差というのは、労働時間とか労働形態とか従事する職種とか様々な要素が関係しています。もし同一職種で同一労働において給与の男女差があるならそれは不当な格差と言っていいでしょう。

 しかし、極端な話女性労働者が全員事務職、男性が全員現場職であればその差は男女格差ではなく職種の給与の差です。正社員かパートタイムかとかも給与の差に影響を与えます。その辺を無視して結果だけをもって不当な格差がある、というのは如何なものでしょうか。

 この格差は男性が給与の高い職種を不当に占有している結果だ、という主張もあるかもしれません。

 ただ、給与の高い職種に就くためには、熾烈な競争に勝たないといけないわけです。稼がないと配偶者を得るのも困難、社会的にも認められない男性の方がその競争において真剣に戦うでしょう。それが結果として出ているという側面もあると思います。

 で、この主張にはさらに、男性社会なのだから男性の方が競争に勝ちやすい環境が作られている、競争自体が不当だ、という反論も想定されます。この部分については否定できないかもしれませんね。

 ではこの点を認めたとしましょう。つまり男女の給与格差は不当である。男性は給与の高い職種を不当に有利な競争で独占している。今の結果はアンフェアな競争によるものであり是正されねばならない。

 同一職種の給与水準は法律上の格差はありません。となれば、社会的地位も職種も男女半々にすれば給与水準は理論上は同一になるはずです(実際は個々人の意思決定の差があるので不可能だが)。


 ただ、ここまでやったとしてもある要素だけはどうしようもありません。

 それは高い給与を得られる職種は(親族企業の身内が名目上の役員になるとかのような特殊な例外を除いて)比例的に重い責任や相対的に過重、危険な労働を負うということです。

 よくジェンダーギャップ指数でやり玉に挙げられる管理職、政治家の数ですが、確かにそれらの職種は所得水準も高く、社会的名誉も与えられます。しかし、一方で彼らの方には重い責任と厳しい職務がのしかかっています。

 役員といえば、運転手付きの高級社用車をあてがわれていて、広い専用個室で美人秘書を侍らせながらゴルフクラブを磨いている、などという昭和の企業漫画の社長みたいなのをイメージしている人はいそうですが、そんなの現実にはいませんよ。

 政治家にしても、選挙で勝つために地元にアピールしあいさつ回りを欠かさず、勿論議員としての職務を果たさなくてはいけない。もし選挙で負ければ只の人です。ダメだと思われたら党が次の候補者を立ててくるからその立場は安泰ではありません。

 給与格差が差別の産物であり、競争の環境にも差別があるということにして、男女の管理職、議員数を完全に半分づつにすることは出来ても、その地位(と報酬や社会的名誉)に対してかかる責任の重さまでは軽減できないのです。

 で、ここからが謎なんですが。殊更に男女格差に異議を申し立てる人は、それを分かっているのでしょうか?役員になりたいですか?管理職になりたいですか?議員になりたいですか?

https://jinzaii.or.jp/2963

 最近の若い人はこういう人もいるようです。非常に気持ちは分かります。地位と名誉と金を求めて競争に打ち勝ちのし上がれば、相応にメリットも得られますが、楽なことばかりではありません。

 僕の親の知人に女性の経営者がいます。僕の住んでる地方ではかなりの高給取りです。東京の水準でも低くはないでしょう。一方で会社の経営の責任を負い、ハードに仕事しています。

 あの地位になれるといわれて、それを望むか?僕としては遠慮しておきたいです。というか能力的にとてもじゃないけどあの責任を背負えない。

 もう一度繰り返します。

 名誉と報酬が伴う高い地位、例えば会社役員、政治家、閣僚には相応の責任と重い職務が課されます。というより、名誉や金銭はその代価なのです。

 もし男女の経済的格差を埋めるべきだと思うなら、それらの職種を男女双方の公平に配分することを望むなら、地位と報酬を得る地位と共にその責任も強制的に配分されます。その辺分かってるんでしょうか?

 会社役員、女性議員というキラキラした肩書と報酬だけ見てませんか?

 責任を負わずに成果だけ得るのは無理です。

 責任を負う覚悟はありますか?

 男女の職域を区分するな、給与の格差を是正せよ。美しいお題目です。でもそれがもたらす結果は、多分楽なだけのものではない。そう思います。

 





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?