パーシャルデンチャー デザイン集1

かつて大学のパーシャル医局員として、朝から夜中まで義歯の臨床と技工に捧げる生活を送ってました。勤務先の後輩から義歯の設計を相談されることがとても多かったので、悩める人の一助になればと思って、私が医局で学んできたことをnoteに書こうと思ってます😊

1症例目は、、、

上下すれ違い咬合(前後すれ違い)、上顎は前方遊離端、下顎は後方遊離端というケース。
⚠️保険レジン床のケースで説明してます

《すれちがい咬合における義歯設計》
前後すれちがい咬合だと、今回のように左右のバランスが取れることが多いので上下パーシャルデンチャーの設計にすることが多いです。
左右すれ違い咬合だと義歯の安定が困難を極めるため、少なくとも上下のいずれかをフルデンチャーにする、あるいは上下両方をフルデンチャーにするのが良いと思います。

《パーシャルデンチャー設計の基本的な考え方》
パーシャルデンチャーの設計手順および重要な順番は「支持」「把持」「維持」。
教科書的にはそれぞれに色々な要素を含みますが、簡単に言うと「支持」はレストと床、「把持」はクラスプの把持腕(アンダーカットに入れない)と大連結子、「維持」はクラスプの維持腕(アンダーカットに入れる)。
「支持」→床の沈下を防ぐため、レトロモラーパッドや上顎結節、口蓋部分を床で覆い、レストは数を多くして多角形になるよう配置するなど。
また、レストは鋳造にする。(適合が命なので)
「把持」→横揺れを防ぐため、舌側の床を残存歯の最大豊隆部まで立ち上げる(床アップ)ようにするなど。
「維持」→支持と把持が充分であれば、維持を最小にできる。強すぎる維持は支台歯の負担になるため注意。キャストクラスプや双子鉤は維持力が強いため、間接維持装置として用いるのが良い。

《上顎》前方遊離端義歯
(斜線部は人工歯、青丸はレスト、青線はキャストクラスプ)
このような前方遊離端では床部分の沈下と離脱を抑える必要があるので、レストを分散して配置することで支台歯間線を多角化し(オレンジ線)、直接・間接維持装置は強固なものにし、鉤腕の方向に注意します。
把持の点からは、口蓋側の鉤腕と床との間は隙間を空けないほうが有利です。

🌟14 近心からエーカース
🌟15、16に双子鉤
🌟25 近心からエーカース
🌟26 遠心からエーカース

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《下顎》
(緑線はワイヤークラスプ)
直接維持装置は近心キャストレスト+遠心からワイヤークラスプ。
いわゆるコンビネーションクラスプです。
(後方遊離端義歯のレストは近心に設置するのがセオリーですが、欠損部分が長い時には欠損部顎堤にかかる負担も減るので(詳細は教科書へ)、そのような時は遠心レストでも気にしない!という医局の先生もいましたね。私はいつでも近心レストにしちゃいますが。)
床面積は充分確保して、レトロモラーパッドを全て覆う形にし、床の沈下を防止します。
把持の点からは、残存歯舌側の最大豊隆部まで床を立ち上げて、レジン床アップの形にすると有利です。
保険義歯は大連結子をリンガルバーにするという手もありますが、私は基本的にレジンにしてます。前述の把持の点から、また残存歯が抜歯になった時に増歯が容易であることが主な理由です。
屈曲リンガルバーは常に舌が触れてしまい違和感が強いですしね。
旧義歯がリンガルバーで、新義歯はレジン床アップにした患者さんはかなり沢山いますが、旧義歯が良かった!と文句を言われたことは一度もありません。みなさん、義歯の安定感にかなり満足してくれます。

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