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教職志望の方へー窃盗事件

 千葉の件が話題になっているようですが、窃盗事件は学校では数年ごとに起こります。
 「開かれた学校」が流行った時期に校舎が建てられた学校は、造りが意外とオープンなために、外部犯のこともあります。
 しかし、内部犯のこともあります。経験を幾つか書きます。

【制服盗難】
 教諭になって、初年度に就職担当になったことは書きましたが、その時、見聞した話です。
 就職希望の人で、制服を変形、特にミニスカートにして裾を切ってしまっている人は、就職試験の面接のためにスカートを買うように指導されます。
 しかし、後、数ヶ月しか着ないし、制服も安くないので、一年生の綺麗な制服でサイズの合うものを盗む者がいる、というのです。
 一年生のクラスに注意喚起がされていました。喫煙でもそうですが、教員は現認でないと捕まえられないので、まず注意喚起と施錠励行などの防御に走ります。また教員は巡回します。
 その時、生指で長かったという就職主担の教諭から、窃盗をする者は、一時の出来心でない限り、再犯性があり、大体分かるし、不審な動きに注意していれば捕まえることができる、と教えてもらいました。
 でも、ボンヤリな私には難しいことでした。

【財布盗難】
 教諭2年目、高校2年の遠足の時、当日休んだ生徒がいて、保護者から直接話したいと言って学校に来られました。ちょうど時期的に三者面談だったので、当人も入れて、教室で話した覚えがあります。
 駅で切符を買おうとしたときに、お尻のポケットに入れていた長財布がなかったので、帰って来たと言うのです。保護者は時々物やお金がなくなる、ともおっしゃいました。
 遠足の日に関しては、本人は「いつ盗られたかわからない」と言います。保護者は「朝はちゃんとあったんです。それで遠足に行けなかったんです。……先生、何とかしていただけませんか」と訴えました。
 その生徒が、当時一緒にいたグループは、少し変な感じで、仲間に入れてやってやる、というよりも、まるで金づるを連れ回しているかのように見えました。お母様もそのグループのボスには疑念を持っておられました。本人にグループから離れるように言いましたが、生徒が意思のはっきりしないタイプで、それができるようには見えませんでした。
 仕方がないので、クラスで目端が利いて正義感のある生徒を呼び、「本人に注意しろと言っても性格上ムリだし、担任がいないときに狙われているから、本人が不用心なことをしていたら、注意してやってくれない?」と頼みました。クレバーな子で、かなり自然に上手くやってくれました。
 その後、進級する際に、最近どうですか?とお母様に尋ねたところ、盗難は全く無くなったということでした。

【万引き】
 校外で別のクラスの生徒と一緒に万引きをした、ということで、捕まって停学になった生徒がいました。当時は校外で起こったことについても、学校に連絡が来れば、処分が行われました。
 地元校だったので、担任や生徒指導部の教員は停学中交代で家庭訪問して、反省文や課題のチェックをしていました。
 2人ともきれいな子で、明るく素直で、成績も悪くなく、ちょっと信じられない気持ちでした。家庭訪問の時、一戸建て住宅のきれいな玄関先で「何故万引きしたの?」と尋ねると「分からない」と本人自身が途方に暮れていました。「じゃあ、どういう気持ちだったの?」と聞くと、「悪いことだと思っていたけれど、スリルがあって、もやもやしていたのがスカッとした」と言いました。
 何か不満があったのだなと思い、話を変えて、高校三年だったので、進路の話を聞きました。進学クラスでしたが、「まだ決まっていなくて、大学に行きたいと思うけど、親がそんなお金は出せないと言って、どうしたらいいか分からない……」と言いました。「何故、万引きしたか分かったわ❗️」と私が言うと、生徒は「えっ?ちっともわからない、何?何で?」と言ったのでした。
 懇談は保護者と二者面談にして、進学させてあげて下さいとお願いしました。生徒はすっかり元通りの明朗快活な良い生徒になり、老舗の短大に進学しましたが、お母様は卒業のとき「学費を出すのがほんっとに大変だったんですよ?」と担任の私に恨み言を仰いました。

【文化祭援助金盗難】
 定時制で、例年はクラスごとに平等に分配されたのですが、不景気が続くと、だんだん生徒数も諸費も減ってきて、クラス人数もクラスによってかなり違って、できることもクラスによって違うので、ある年、生徒会指導課が文化祭クラス援助金を、領収書と引き換えにその都度払いに変えました。
 そうしたら、ある日、生徒指導課の教員があちこちの引き出しを必死で開けたり閉めたりして探し物をしていたのです。「どうしたんですか?」と尋ねると、援助金がないんです、とその人が答えました。
 机に鍵を掛けていたのですが、生徒指導課の2〜3人で出納していたので、すぐそばの引き出しに鍵があったらしいのです。
 お金が見つからないので、警察も呼び、部屋の指紋と出入りする教員の指紋も取って、お金は教職員がカンパしたり担当者が弁償したりして乗り切りました。
 その後、ふと、生徒指導課に入ると、男子生徒が3人、机のあたりをごそごそしていました。「何してるの?そこは、この前、文化祭のお金が盗難にあったから、警察が来て指紋も取ったのよ?」と言うと、何かボソボソ言い訳をしていましたが、私が「紛らわしいことをしないで」と言うと、顔を見合わせてゴソゴソと去っていきました。
 生徒指導課で教員がその件で犯人は誰だろうと雑談していた時、そのことも話したのですが、まさかね、で終わりました。初任の時に私に就職指導を教えてくれた教員が生指だったら、彼らを上手く誘導して自供させたんじゃないかな、とも思いましたが、そこで3人組を見たのが私だけだったのと、他に疑われている人がいたこと、また、基本、生徒を信用するというスタンスの生指だったために、それで終わりました。
 生徒会指導の会計の関係者がみな転勤して数年経って、警察から、援助金の引き出しの中の指紋と一致した人について、連絡がありました。私が見かけた3人組のボスでした。
 転勤で誰も追訴すべき人がいなくなっていたので、どうなったか知りません。

 生指は、警察ではないのですが、聴き取りにはテクニックがあるようです。でも、定時制で生指主担がある時、私に言いました。「ここにいる先生は(生指じゃなくても)誰でも、聞き出すのがすごく上手い」
 そりゃ当時はベテランばかりでしたから。

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