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他者と出会うこと~ギリシャ神話の受容史講座を受けて~

 藤村シシン先生のギリシャ神話受容史講座、1回目を受けました。

 とっっっってもおもしろーーーい!!!
 面白さが爆発したので、どう面白かったのかを書いていきましょう。

 前置きとして、私はギリシャ神話については最近のサブカルで触れてきたもののあまり触れている自覚はなく、ゲームさんぽでギリシャ神話面白いな!!! となったタイプです。漫画ゲーム小説を幅広く読みます。
 一番興味のあることは人のこころ。自称人のこころのオタクです。人間ってこういうところある!!! あるわ……ってなりがちです。

 こういう人が書いた感想なので、ギリシャ神話面白い! からは中心点がズレています。あとあんまりそのまま講義の内容を書かないようにしたいので、講義の細部はぼかして、何が面白かったかという感想メインです。

受容史

 まず、受容史の誕生経緯が面白い。古代が絶対的なものだったことがあって、そのあとにサブカル系に触れやすくなった現代の人が研究者になって、古代以外の神話解釈も、それはそれで…みたいに受容的な捉え方が広まるの、面白い。しかもついに10数年前にしっかり学問になるとか、面白い。

 何が面白いって、何か絶対的に正しいものがあるぞ! と思われていたのが、近年になってそんなことなくない? という流れ自体、いくつかの分野で起こっているような、そんな気がするんですよね。
 私のざっくり観測の範囲でも、医療者の言うことをそのまま聞くべしという考えから、インフォームドコンセント(説明と同意)みたいに個人に合わせて選ぼうという変化がありますし。他にも当事者研究という、外部から正しいことを与えられるのではなく、自分で自分を研究して、何で今自分はこうなの? って見つめるという取り組みがやり始められています。

 最近って絶対的な正しいものなくない?? となりがちでは?

 受容史が学問になった流れも、サブカル系に触れやすくなったからと同時に、教育の影響が大きいと講座で触れていました。他の分野も教育なり、個人がいろんな価値観に触れやすくなったことなりが大きそう。そう考えるとインターネットも発達した最近はそりゃそうなるよねと思います。
 これまで知っていた医学系の話と講義での受容史の話が繋がって、ギリシャ神話研究もそうなの!? おもしろーーい、と勝手になっていました。おもしろーーい!!

 勝手なイメージで、医学系だと結局病気になっている個人がどう生きたいかが大事じゃん! という流れで正しさなんてねーぜ、と前よりなりやすくなった感じがしますが、対個人があんまり関わらない学問だとまだ正解があるような気がしてました。
 正解なかった! 結局人間のやってることだからそりゃそうか。

 途中で、受容史的にはあなたの解釈はそういう感じなのねってすることが多いけど、そればかりでもなく、そうはいってもこうだろうが! みたいに拳を熱く戦わせたいときもある、両方のバランスが大事って話にも、そうだよなぁとすごくうなずきました。

 人のこころの話も、基本あなたはそういう感じなのねってすることが多いけど、そればかりでもなく、そうはいってもちょっと待って!? みたいなバランス感覚があるなぁと思っているので、似てるぞ! とわくわく。
 人のこころの場合、例えばうまくできない自分がダメで悲しい、という気持ちが話されたとして、そのままあなたはそう思っているのね、と話を聞きます。客観的に見てそんなダメじゃなくない? とか思っても、まずあなたはそう思ってるのね、と聞く。とはいえ状況次第で、この前できたことも話してなかった? と適宜バランスも取っていきます。

 バランスを取るのであって、正しいから言うわけではない感じ。こういう人を尊重する感じと、同じバランスを受容史の話で感じまして。こういう考えをする分野が他にもあるのね! おもしろーい! となりました。
 実はいろんなところでそうなのかもしれませんが、私があんまり他の分野のことは知らないのもあって……。

 ここまでは別にギリシャ神話に限らない、受容史ってものへ、おもしろーーいとなった話でしたが、次にギリシャ神話の受容史へのおもしろーーいに触れたいと思います。

ギリシャ神話の受容史

 まずギリシャ神話って千年規模で続いてきたものの重み、すごいな!? となりました。なんというか、説得力がすごい。

 講義中に、これまで変化してきたギリシャ神話内のモチーフに関して触れられていたんですが、最低百年単位でまず規模が大きい。規模がでかい上に一回形が定まったことの覆り方もすごい大きい気がする。
 現代から変化したモチーフを総括してみると、さっき黒って言ってたのに、今赤になったぞ!? みたいなレベルで覆る(ネタバレにならないように適当な比喩)。どうした?
 この“さっき”は数千年前で、“今”は数千年後なので、そりゃそれぐらい年数が経てば変わるかとも思うけど、一回黒ってならなかった?? 黒から赤にどうして変わるの?? という驚き。
 その変わり方について講義内で「混乱し始めた」「混同されて」と話していたのが、またビビっときました。

 ああ~~~~人間、そういうとこ、ある。

 人間そういうところあるよなぁ! 途端に生き生きしてしまう人のこころのオタクです。一回決まったことを、うっかり混同して違うことにしたり、混乱して違うことにしたり、現代でもとってもあるあるな事態。
 えっ数千年前からずーっと人間そういうものってこと…? いや、そうだよな~~~。人間そんなに変わってないところもあるよなぁ~~~~。

 かつ、ものすごい説得力が沸きました。人のこころとはうつろいやすくてすぐ変わるものだけど、少なくとも、そういう“うつろいやすくて変わる”という人のこころのありかた自体はわりと古代から一緒ってこと。
 じゃあ現代人である私のこころが、ふとうつろいやすくて変わったり、うっかり勘違いして間違えたり、もあって当然。自分が生まれるずーーーっと前からそうだったんだもの。つい心変わりに悩んでしまうこともあるけど、古代からあるならそらあるわ、となりました。

 さらに、終盤に出てきた受容史の研究としてフランスの研究者が、ギリシャから遠い日本にてギリシャ神話がすごく受け入れられていることを分析して、何でこんなに受け入れられているんだ? と研究した話。研究者がいやいや…という最後の結論を出す過程が、重要度の高いネタバレ? だと思うのでぼかしておきますが、もうさいっこうです。しびれました。
 ギリシャ神話という古代にルーツのあるものだからこその扱い方で、ギリシャ神話に対する自他の向き合い方を研究していて、おもしろーい!!
 他者を研究しているつもりが…という状況は人のこころにまつわる話にも共通するあるある現象。人間が人間のことを研究しようとすると、同じことになりやすいのかなぁ。
 それにしても、当然でしょうと思い込みやすい古代にルーツのあるものへの、どんでん返しはなかなかできるものじゃないと思うのですごい…ほんとすごい……となります。
 私個人の関心に、人間が当然のものをいや当然でないな!? となるのっていったいどういうタイミング? ということがあるので、なるほどそういうタイミング!!! となったのもあってわくわくしました。

 うーんひたすら面白かった!!!

 人間がこの長い歳月をかけて、ギリシャ神話をどう受容してきたのかが、この先の講座でも話されると思うとすごく楽しみです。
 私的には、それって各時代の人間がどう他者と出会っていたか、現代の私達がどう他者と出会っているか、に通じる話だなぁと思うので…。
 なかなか他分野のこういう話を一通り聞く機会ってないから、ギリシャ神話の受容史の話自体でも聞くし、今回みたいに自分の分野とも勝手に照らし合わせておもしろがれそう。一粒で二度おいしい!!

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