【考察】白田美ツ騎の元ネタ一覧

※白田ルート、夏劇のネタバレを含みます。
※本記事の作成における友人、フォロワーさんたちのご助力に改めて感謝いたします。


タイトルの通り今回は白田先輩の元ネタまとめです。
今回は恒例?のキリスト教方面を中心に紹介していきます。
白田先輩の元ネタは現時点でキリスト教以外にもう一つ鍵になりそうなものがあるのですが、個人的に詳しくない分野も混ざっていて解説が大変&複雑なのでそっちはまたいずれ。
(出来るだけわかりやすくなるように引き続き必要な関連記事の作成に励みます……。)

では、本題に入っていきましょう。
白田先輩の元ネタの主軸になるものは、キリスト教における聖霊です。
いつものごとく何ソレ?って人がいそうなので、以下にざっくりとした解説を載せておきます。

※注意※
聖霊は宗派や時代、文化によって解釈が異なり、長年の論争の的にもなっています。
もともと解釈が難しいものなので、ここではとりあえず考察に必要なポイントだけ載せます。
あくまで一例としてお読みください。

(ざっくり解説)聖霊とは
英語ではHoly Spiritなどと呼ばれる。
「精」霊ではなく「聖」霊。
ファンタジー作品に登場するいわゆる妖精(フェアリー)的な生物とは全くの別物。
キリスト教において、父なる神、子なるイエスと並べられる重要存在(三位一体)。
神から発される息吹(霊)で人間の心に神の愛を注いだり、信仰に関わる動きに関与するとされている。
また、西洋絵画では聖書の
わたしは、〝霊〟が鳩のように天から降って、この方(※イエス)の上にとどまるのを見た。
(「新約聖書:ヨハネによる福音書 洗礼者ヨハネの証し」)
といった記述などから主にハトの姿で描かれる。
なお、「天の使い(天使、angel)」ではなくあくまで「聖なる霊(聖霊、神の息吹、Holy Spirit)」。
聖霊は基本的に天使とは異なる存在、概念である。
※ピンと来ない人はプリンとババロアでも思い浮かべてください。
なんとなく分かるけど知識がないと同じに見えたり、イマイチ違いが説明しにくい感じの関係です。

~三位一体がよく分からない人向けの余談~
恒例の他作品を引き合いに出しての例だが、ソウルイーターに登場するジャスティン=ロウの
「父と子と精霊の御名によって」
というセリフも配慮のためか「聖」霊が「精」霊になっているものの、キリスト教の三位一体が関連する祈りの言葉
「父と子と聖霊の御名において」
が元ネタ。
あちらの世界でも信仰の上でこの三つはどれもが欠けてはいけない存在らしい。

白田先輩や彼が演じる役は上記のような聖霊が意識されていて、主にキリスト教の信仰に関わるもの、そこからさらに派生して清らかであったり、神聖なイメージがあるものをモチーフに取り込んでいるという特徴があります。
また、聖母マリアは「聖霊」によって処女のまま神の子イエスを授かったという教えからか、以下の聖書のエピソードに関係する人物やアイテムもよく登場します。

1.聖母マリアがイエスを授かったことを天使ガブリエルに告げられる受胎告知
聖母マリア、天使ガブリエルに関連するキーワードや特徴
受胎告知の西洋絵画に描かれることが多いユリ、アイリス(アヤメ)、オリーブ

2.イエスの誕生
イエスの誕生日→クリスマス(厳密には誕生日ではなく降誕祭)
さらにホワイトクリスマスのイメージから雪や白色など

では、以下から分かりやすさ及び関連度順に具体的に見ていきましょう。


①白田美ツ騎
名前の由来はおそらく賛美歌の「うるわしの白百合」の原題「Beautiful liles, white as the snow(美しい百合の花、雪のように白い)」からか。

Beautiful liles, white as the snow
→「美」しい百合の花、雪のように「白」い
→「白」田「美」ツ騎

元ネタはイースターの賛美歌だが、ユリは白田のモチーフに頻出する受胎告知や天使ガブリエルと関わりが深い花である。
さらに、「騎」の字には馬に乗るなどのニュアンスがあるので


→馬に乗る
→移動する
→神のメッセンジャーとも言われる天使ガブリエル、聖霊を表すハト(→伝書鳩)のイメージか

また、

美ツ騎
→ミツキ
→三つ(3)
→キリスト教の三位一体(神、イエス、「聖霊」)

にも繋げている可能性がある(ジャックジャンヌ始めスイ先生の作品は言葉遊びがとても多い)。
さらに、白田は聖霊を主軸として、受胎告知やクリスマスに関するモチーフが多いと冒頭に述べたが、彼の言動やプロフィールにも大体これで説明がつく。

・歌が好き、トレゾール→賛美歌
・好きな季節は冬→クリスマス
・好きな色は水色、イメージカラーもブルー系→天使ガブリエルは青色と結びつけられることが多い。
・鳥のようと言われる食生活→聖霊を表すハト
・現状ジャンヌのみ→聖母マリアは女性。天使は本来性別がない、あるいは男性的に描かれるが、ガブリエルは例外的に女性的な絵画や女性説が存在する。
・先輩を特に慕っている→聖霊が関わるとされる人間の信仰(心)
・冬公演で活躍する→冬公演の開催日は「クリスマス」・イブ
・クリスマスプレゼントが歌→賛美歌
・白田が田中右と睨み合うスチルの背景→受胎告知の西洋絵画に描かれるオリーブ etc

②料理番(新人公演:不眠王)
以下の三種の鳥のミックスと考えられる。

1.ナイチンゲール
料理人の白衣+歌が得意なトレゾール
→白衣の天使のイメージから看護師のフローレンス・「ナイチンゲール」+歌
→鳥のナイチンゲール
※より丁寧な解説は https://note.com/snowblossom_jj/n/n4d4daadb2d37
また、キリスト教思想との関わりからオスカー・ワイルドのナイチンゲールと薔薇も元ネタか。

2.ハト(特にシラコバト)
聖霊の象徴。

3.アビ(冬毛の状態)
④のシスター・ゴーストの項目を参照。

③城間(夏公演:ウィークエンドレッスン)

城間
→シロマ
→シロ・ロマ
→「白(シロ)」田+ローマ

ローマは支倉常長(=ハセクラ)やルイス・ソテロ(=ルイス)が関わった慶長遣欧使節が訪れた場所の一つ。
また、現在カトリックの総本山とされるバチカン市国がある場所でもあり、キリスト教と深い繋がりを持つ。
以下の

ハセクラ「彼女は聖地。俺にとってのローマ。
遠く美しい、永遠の都」

というセリフも比喩どころかそもそも城間=ローマそのもの、という意味が分かると面白い描写。

さらに、向井にマドンナと形容されるのは「マドンナ=聖母マリア」を意味するので、受胎告知イメージのワードチョイス。
衣装が水色なのはおそらく青色が天使ガブリエルと結びつけられるからか(詳細は⑥のファン・カルロ・アルプス参照)。

④シスターゴースト(秋公演:メアリー・ジェーン)
シスターなのはトレゾールから歌繋がりで賛美歌からの連想。
ただし、見た目はシスターに、かつて葬式の時に雇われて号泣したという職業の泣き女、及びそれに関係があると言われる女妖精バンシーをミックスしたもの。
顔のペイントや胸元の赤い模様がおそらく涙のイメージ。
なぜ赤いのかというと、

泣き女はエジプトの豊穣の女神イシスの信仰とも関わりがあるとされる
→イシス信仰は聖母マリア信仰に影響を与えたと考えられている

ここから、

聖母マリア+ゴースト(ホラー、オカルト要素)
→世界各地で伝えられる血の涙を流す聖母マリア像(※画像検索注意)

という発想と考えられる。
(わ、わかりにくい……。)

また、バンシーは地域によっては水辺で早死にした自分やこれから死ぬ者の衣服を洗濯する妖精であるため、水と関わりが深いガブリエルも意識したセレクトと思われる。
さらに他地域では、鳥のアビのような声を上げるという伝承も存在する。
よって、新人公演の料理番の衣装はナイチンゲール、ハトの他にアビ(特に冬毛)もイメージに落とし込まれていると推測される。

⑤ルキオラ(冬公演:オー・ラマ・ハヴェンナ)
名前は古いラテン語の蛍 lucioraから
※参考 https://note.com/snowblossom_jj/n/n9d97a7b71149
なぜホタルなのかというと、最終公演を想定していた内容が冬公演にスライドされた影響か、彼女とチッチが歌う淡色は仰げば尊し、蛍の光といった日本の卒業ソングを意識して作成されているため。
特に先に挙げた二曲はどちらも歌詞の一部にホタルが登場する。

仰げば尊し→「蛍」の灯火 積む白雪
蛍の光→「蛍」の光 窓の雪

さらに、仰げば尊しの原曲とされる「Song for the Close of School」の歌詞はキリスト教的な思想を感じさせるものなので、やはり賛美歌を意識していると考えられる。
蛍の光の原曲「Auld Lang Syne」のメロディで歌う「めさめよ我が霊」という賛美歌も存在する。
※なお、淡色が卒業ソングを意識している理由はPVとあわせてさらに深く掘り下げることが出来る。
これは「Auld Lang Syne」が葬送歌としても用いられることに関係してくるが、フギオーやミゲルの元ネタの要素が強く今回の主題から激しく脱線するためいずれ書く別記事に任せることとする。

また、チッチがルキオラを好いているという設定は、ホタルからの虫繋がりでガが光に集まる性質(正の走光性)持つことからの発想。
(補足)チッチ=ガであることは様々な形で表現されているが、特に分かりやすいのは髪飾りの形状。
どう見てもガの触覚そのもの。
次点で分かりやすいのは、冬公演のヨモギ売りは売春婦を意味することから
※参考 https://note.com/snowblossom_jj/n/n9d97a7b71149

風俗業
→水商売
→夜の蝶
→ガ
※分類学的にガとチョウには明確な区別が存在せず、国や地域によっては一まとめにして扱うため。

というある種の連想ゲーム。

マレがルキオラを演じる白田を聖母と形容するのは、そのまま聖母マリアが由来。
衣装は水色が中心のため、夏の城間と同じく天使ガブリエルを意識したものと思われる(詳細は⑥のファン・カルロ・アルプス参照)。

その他、このルキオラは少々特殊な役である。
根地の自己投影が含まれていることが作中で語られているが、それ以外に登場するルキオラの異名

歌小屋のお月様
→舞台の月
→ユニヴェールの継希

で、彼女には継希が重ねられている。

・チッチ(=希佐)が執着している
・ミゲル(=フミ)が好いている

といった描写や設定はルキオラ=希佐、フミにとって継希がかけがえのない存在だったことを意識している。
(根地は冬公演時点では希佐の真実を知らないが、無意識下で何かを感じ取っていると考えられる描写が新人公演の頃からしばしば登場している。
※参考 https://note.com/snowblossom_jj/n/n2a79984397fb
チッチがルキオラを選ぶという行為は、単に友情を選んだという意味だけではない。
ルート=パートナーを選ばないあるいは選べない状態の希佐の継希への感情の大きさを表すものでもある(特に夏劇の描写が分かりやすい)。

⑥ファン・カルロ・アルプス(ユニヴェール公演:央國のシシア)
まずは名前の由来。
元ネタから考えた方が分かりやすいです。

♪今日は「楽しいクリスマス」
+クリスマスキャロル(主にクリスマスに関連する歌)
→楽しいクリスマス fun Christmas+クリスマスキャロル Christmas Carol
→ファン・クリスマス・キャロル
→ファン(・クリスマス)・カロル
→ファン・カルロ

台本がカルロではなくわざわざ「ファン・カルロ」表記なのも、おそらく
ファン(・クリスマス)・カロル=今日は楽しいクリスマス(キャロル)
という根地の拘りもしくは遊び心(?)と思われる。

残る「アルプス」はそのまま「アルプス」山脈から。

ホワイトクリスマス→雪
玉阪と関わりが深い大伊達山信仰→山

からの連想。
アルプスという名前自体が「白」や「山」を意味する言葉を語源としていると言われているのもセレクト理由か。

また、カルロの服の袖の下部に描かれている紋様はおそらく主にフランスに関わる伝統的な紋様「フルール・ド・リス」がモデル。
名前はユリだが、図案としてはアイリス(アヤメ)を描いていると言われている。
ユリもアイリス(アヤメ)も白田のモチーフに頻出する受胎告知の西洋絵画に描かれる植物である。
さらに、ユリはイエス(=世長の元ネタ)が磔刑の前に祈りを捧げたというゲッセマネの園に生えていたと言われる花でもある。
おそらく最終公演の主軸となるモチーフの一つがイエスの磔刑(の預言=近い将来に世長に訪れる死)であるため、白田の役の中でも特に目立つ形で取り入れられている。
※最終公演や世長の元ネタについては主に以下を参照
1.最終公演とゴルゴダの丘の処刑 https://note.com/snowblossom_jj/n/nc976944dbeb4
2.世長とイエス、死 https://note.com/snowblossom_jj/n/n57449ab553e6

その他、衣装全体については

・夏公演と冬公演は対の関係にあること
※参考 https://note.com/snowblossom_jj/n/n3a79a307ee04
・最終公演もシナリオ作成の過程で内容が冬にスライドされた影響か冬公演との対比が多いこと
※後日、個別記事作成予定
・上に挙げた三公演の城間、ルキオラ、カルロの衣装は水色(ブルー系)メインという共通項があること

以上から、この夏、冬、最終公演の白田の役の衣装は、青色と関連づけられる天使ガブリエルをイメージしていると推測される。
特に、ルキオラとカルロの衣装は形状もよく似ており、腕にまとわりつくような長い袖(振袖)が目立つ。
白田ではないが、世長演じる秋公演のフィガロもマントが腕に絡むような独特のデザインである。
このフィガロの容姿は、ツグミもしくはクロウタドリ(鳥)の外見を持ち、刀剣類を所持する悪魔カイムをモデルにしている。
※世長の役は全て固有名を持つ悪魔が必ず一種取り入れられている(後日解説)。
つまり、腕にまとわりつく、あるいは絡むような衣装=翼の表現であり、ルキオラ、カルロは特にガブリエル(→天使の翼)の姿が強く押し出されたデザインとなっている。
※他にも似たような構造を持つ衣装の役は演者によらず翼がある何かが混ざっていることが多い。

⑦つる(夏劇:あらた森の蟲退治)
元ネタは鶴の恩返しや鶴女房から。
他者のために身を削って織物をするツルの姿に、白田の歌や母親との関係を重ねている。
ツルの離別=白田と母親の関係への終止符である。
上記を主に描いた夏劇の白田のエピソードのタイトルが「巣立ち」なのもおそらくこれが由来。
そしてツルというと縁起のいい鳥で、冬や雪、白を連想するものでもあるため、白田の役が清らか、神聖なイメージであることはやはり一貫している。
その他、白い鳥で聖霊の象徴であるハトにも繋がる。
ちなみに、あらた、よたか、つるは元ネタが全て何かしらの自己犠牲繋がりの鳥である。


では、今回はここまで。
白田先輩の元ネタは今回取り上げた聖霊以外にもう一つ大事なものがあるのですが、そちらは説明が複雑なのでまたいずれ。
またまとめられるように頑張ります。
お粗末様でした。