素直な夜へ導く、エンドロール


ふかふかのリクライニングのイス。いまかいまかとまちあびるこの時間。

こんなにわくわくするのは、いつぶりだろう。
ふわりと香るアロマの香りとともに、くらやみが訪れた。

***

「お休みエンドロール?」

聞きなれない単語を言われたとおり、くり返す。またそんな確実性のないものを信じられるんだ。といいたいのをぐっとこらえる。この間も些細なことをいってしまい、一緒にいられる休日に気まずく過ごしたのを忘れてない。

「ものは試しでしょ?」

眉間にシワをよせたままなわたしに、意地悪な笑顔をうかべるこの人。どうしてもこんなにも優しいのだろう。さきほども冷たく接したばかりなのに。

言われたとおりアクセスしてみる。なのに、繋がらない。しばらくお待ちくださいと、控えめな金色のフォントで書かれている黒い画面。

「あれ。まだ時間じゃないのか。まぁ、待ってれば平気だよ。」

コーヒーでも入れてくるっと、キッチンの方へ行ってしまった。ふーん、詳しいんだ。誰に聞いたの?っといぶかしんでしまう。こんなに可愛らしいサイトだ。きっと、女の子から聞いたのでしょっと。聞いてみたいけど、怖さのほうが大きくて、確かめられない。

仕事が忙しいといえば、もっともらしく聞こえる。けど、わたしの場合、めんどくさいだけだ。彼の優しさに甘えているだけ。

今日だってどこか出かけないって彼に対して冷たく接してしまった。疲れてるのに、分からないのって。忙しさはあるけど、きっと焦って空回りしているだけ。気持ちに余裕がないのは自分のせいなのに、彼にあたるなんてね。ダメじゃないか。今も気分転換にと教えてくれたサイトの情報よりも、情報源を気にしてるのだから。

でも、このデザインは嫌いじゃないかも。

もう一度画面に視線をもどすと、お待たせって言葉がうかんでいた。びっくりしていると、画面がきりかわり、たくさんのオーナメントが点滅しはじめた。

「わぁ、きれい。」

思わず、口にだしてしまった。たしか、この中からひとつ選ぶんだよね。じっくり悩んだあとで決めたひとつ。小鳥のオーナメントは、こんなメッセージにかわる。

素直になれる場所へいこう。

そんなメッセージといっしょに流れ星。もう、ピンときてた。この場所にいきたい。わたしは、キッチンへいそいだ。

***

1時間の星空の旅からかえると、まわりの光がまぶしく感じた。となりの彼をみると、すこしだけ眠そうで、あの時と一緒だっと笑う。

久しぶりにいきたくなったのは、プラネタリウム。ふたりでデートしたはじめての場所。あのころにはなかったアロマの香りがするプラネタリウムにしたからか、すごくリラックスできた。

「きれいだったね。」

リクライニングイスに座ったまま、彼のほうをみてやニンマリする。彼も嬉しそうにわらって、久しぶりにデートっぽいねっていうから、ポッと顔が赤くなる。

恥ずかしさをまぎらわすために、おなかにパンチ。全然痛くないらしく、へへへって笑ってる。

でも、ほんと。デートっぽい。1日ずっと出かけなくても、こうして夜だけでも十分たのしめるなんて大きな発見だ。だけど、楽しくて当然だよね。一緒にいるのは、大好きなひ人なんだもの。
ごめんね、彼とお休みエンドロール。いつもありがと。これからよろしくね。

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