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あくまの朝ごはん。

休日の朝。二度目のまどろみの中にいた。うつらうつらしながら、本を読む。なんと、ぜいたくな時間なんだろう。

あともう少しで眠りつく瞬間、身体を揺さぶられた。例えるなら、太巻きの具。布団にぐるんぐるんとくるれ、ゆさぶられた。

本が曲がってしまうことを恐れて、布団からはい出る。せっかくの時間を邪魔されて、眉間にシワがよる。

「もう、何するの?」

犯人は、へへへっと笑いながら言うものだから、つられてしまう。

「とりあえず、ごはん炊かない?何合にしようか?話は、それからね。」

***

彼がお米をとぎながら、話してくれた。

ことの発端は、あくまのおにぎり。
某コンビニの天カスと青のり、めんつゆの混ぜごはんのおにぎりを食べたそうな。思いのほか美味しくて、自分でもこんなものを作ってみたくなったらしい。

ごはんを炊いている間に、新しい組み合わせを考えると気合のいれていたのだけど。

あの気合はどこにいったのだろう。彼は、大の字になっている。思いつくものは、既に商品化されているらしい。さすが、コンビニの商品開発!

そんな彼を横目に、炊きあがったごはんを器にうつした。少し冷ましている間に、たまごとお砂糖をときはじめる。メインを焼く前に油を馴染ませたくて、ふわりとした甘いたまご焼きをつくる。何度も作っているから巻くのも簡単だ。

冷ましたごはんに、お醤油とかつおぶしとだしをちょっと入れて混ぜ合わせる。思いつきで、ひとかけのバターもいれてみる。
ラップを使って少しぎゅっとにぎったおにぎりをつくり、フライパンに並べていく。

崩れやすいからしばらくそのまま。弱火でじーっくり焼いて、片面が焼けてきたらゆっくりと裏返すことをくり返す。たまにお醤油をぽてりぽてり。おにぎりの横でソーセージも焼いてしまう。

お醤油の焼ける香りに誘われて、横になっていた彼がもぞもぞ動きだす。何も言われなくても、テーブルの上を片付けはじめる。
そんな姿に笑いがこみ上げつつ、さいごの仕上げに高温にしてパリパリに。

品数は少ないけれど、ブランチだしね。
昨日の具だくさんお味噌汁とともにテーブルへ。

「わぁーーー。美味しそう。」

熱いから気をつけてと言う前に、いただきますっと手を伸ばす彼。あついあついと出来たての焼きおにぎりにかぶりつく。

「んん?んんー!!」

もごもご何を言っているのか分からないが感動しているのは確か。もぐもぐごっくん。

「めっちゃ美味しい!!」

ぱくりぱくりと食べる姿に嬉しさがこみ上げる。わたしも焼きおにぎりに手を伸ばす。
外はカリッと。中は、ほっかり。まんべん味のしみこんでいるから、どこから食べても美味しい。

たまごやきやソーセージも食べながら、今あるものを工夫するのもいいねってにっこり笑うから、そうだねって返す。

今あるものの中にだって、新しいは隠れていていて。それにアレンジを加えたり、スポットライトをあててみるっていう小さな発見が新しさに変わるように思える。

しばらくの間、休日の朝ごはんは焼きおにぎりになるのも。彼がおにぎりにこだわりだすことも。二度寝より彼のおにぎりが楽しみになることも新しさかもしれない。

いつも読んでくださり、ありがとうございます♡