異世界生活
先日、美容院にヘッドスパとカットをしに行った。誕生日特典があり、通常よりお得になる時期がある。年に2回くらいヘッドスパで頭皮を綺麗にしてもらう。
席に通され雑誌を読んでいたら、横の席に友達がいた。美容師さんに言われるまで全く気づかなかった。
その友達とは2年余り疎遠になっていた。
良い機会だったので、今日の夜、ご飯を食べに行こうと誘ってみた。近所に前から行こうと言っていた餃子屋さんがあるのだ。
徒歩圏内の友達は良いものだ。
わたしたちは職場の元同僚である。
彼女が辞めてもう6年になる。
変わったもの同士、気が合うのだ。
彼女もわたしもアニメが好きだ。
ゆるキャンに影響されてデイキャンプに行ったこともある。
一昨年は友ヶ島を探検に行った。
ちなみに彼女は39歳なのでわたしとは14歳離れている。が、お互いに年の差は気にならない。
友ヶ島に探検に行ったあと、すぐに母の介護が始まり疎遠になっていた。
今日の話題はもっぱら「異世界」のことについてであった。唐突に。異世界のはなし。
ところでさぁ…異世界に行ったらどうする?から始まる。そんな友達だ。
異世界には美味しい食べ物が無い。
これは定説だ。
だいたい主人公がこちらの世界の食べ物を提供して異世界側に気に入られるのだ。
異世界では何かしらスキルが与えられる。
これも定説だ。
わたしは領地の周りは溶岩で囲み、空はドラゴンに警備させるのがいいだろう。と言った。友達は水をどうするかで悩んでいる。
わたしが持っている万能農具さえあれば
食べ物はなんなりと育つのだが水は掘れば湧くのだろうか。
周辺諸国はこちらの食べ物が目的だろうから
美味しいリンゴや珍しいマンゴーを渡しておけば想像をはるかに超えた返礼品が貰えるに決まっている。
異世界は食生活が貧しいのだ。
異世界にはシチューもカレーもドレッシングも無い。デザートや果物も無い。
これはこちらに歩がある。神獣や天使さえ美味しい料理が食べたくてこちらの思いのままにできるのだ。
異世界では料理のスキルが物を言う。
友達はキューピーの工場でオペレーターをしている。これは異世界では強いスキルになる。キューピーマヨネーズを一生補給されるスキルがあれば異世界の胃袋はこちらの思うツボである。
わたしは黒酢玉ねぎドレッシングをどうしても持って行きたい。どうにか調達を頼む。ケチャップもだ。キューピーにケチャップは無いか。じゃあ、パスタソースにしよう。
でも異世界にパスタあるんか?小麦から育てるの面倒くさい…
異世界に安心して飲める水はあるのだろうか。友達はどうしても水のことが気になっている。生命の根源は水だ。
わたしは水の女神に美味しいスイーツでも渡しておけば、一生水に困らない加護を与えてもらえる。それでいこう。と言った。
他にも火の女神や大地の女神に食べ物を供える必要がある。女神の加護は絶大な力なのだ。
だいたい異世界の人はじゃがいもを茹でて食べるだけなので、塩もスパイスも高級品に違いない。そんな異世界ではキューピーマヨネーズは強い武器になる。
わたしは異世界がハーレムになるのはイヤだ。
でも一人ぼっちは淋しい。ボケるのはイヤだ。でも村人が多すぎると疲れる。
どうしたらいいのだろう。
何歳の自分で異世界に行きたいか?
わたしは32歳ごろの自分で行きたい。
今の経験のままあの頃に戻れたらわたしは最強になれる。
わたしたちは、もし異世界に行ってしまったら、という話題で2時間真剣に喋り倒した。
急に周りの客がみんな席を立ち始めた。
どうやら21時で閉店のようだ。
わたしたちは、まだ見ていないお互いのおすすめ異世界アニメを教え合い、家路に着いた。
今日、美容院で遭遇しなければそのままきっかけを失い、もっと疎遠になっていたかもしれない。
近所に住んでいる貴重な友達である。
やはりたまに連絡を取らねばな。と反省した。彼女は徳島から神戸に出て来て10年になる。もうこのままこちらの人になると思っている。結婚する気はないらしい。
髪は刈り上げのベリーショートでジェンダーレスな雰囲気のある彼女だ。腕に小さなクマちゃんのタトゥーが増えていた。恋愛話はしない。
お互い、すべてを知っている必要は無い。
わたしたちはたわいのない話をしていつも爆笑できるのだ。
この友達とは山に行く約束もしていた。
わたしが母の介護でバタバタしており、山に行く気分にもならなかった経緯がある。
また折を見て、冒険…いや、山歩きに誘ってみようか。きっといつもの山にモンスター溢れる(妄想癖)楽しい冒険になるに違いない。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?