「代打の神様」こと友野一希選手が22歳になられた
日本フィギュアスケート界で「代打の神様」といえば友野一希選手。
褒め言葉として伝わっているか、いつも不安になるが、れっきとした褒め言葉だ。
そんな彼が22歳の誕生日を迎えられたというので、特集させていただくことにした。
2018年世界選手権5位で一躍有名選手の仲間入り
友野選手が一躍有名になった出来事といえば、間違いなくこのとき
「世界選手権初出場で5位入賞」というだけでも十分センセーショナルなデビュー。
しかし、彼が注目された理由はそれだけではない。
実はこの世界選手権の出場は急遽決まったものだった。
元々世界選手権2018の男子代表は、
・羽生結弦選手
・宇野昌磨選手
・田中刑事選手
この3名と決まっていた。
しかし、羽生結弦選手は足の怪我を抱えていたため、欠場を発表したのだった。
補欠一番手は当時全日本2017で3位だった無良崇人選手(現在はプロスケーター)。
本来なら彼が繰り上がりで出場だ。
ところがここで無良選手はなんと引退宣言。
補欠2番手の友野一希選手に突然のチャンスが回ってきた。
「今までもこういうことはあったので…」
動揺することなく答える当時の友野選手。
結果として、初出場の世界選手権で見事5位に輝き、来季日本の出場枠3つの確保にも貢献したのだった。
「代打の神様」たる理由とは?
初出場で世界選手権5位。
これだけでも十分成果だが、彼が「代打の神様」たるゆえんは別にある。
そう、彼にとって、補欠から繰り上がって出場は初めてではなかった。
世界ジュニア2016で山本草太選手のケガにより、急遽繰り上がりで出場したのをきっかけに、「代打出場」が続いていたのだった。
代打出場が多いというのは、常に代表争いの一角に加わっているということ。
それだけでも十分凄いことだが、彼の凄さはこれだけではない。
なんと補欠から繰り上がって出場した試合全てで、そのシーズンの自己最高得点を記録している。
これはなかなかできることではない。
大きな試合へのピーキングの難しさは、アスリートなら経験済みだろう。
世界選手権に出場するとわかっていて、入念に準備して調整したとしても、ピークを持っているとは限らない。
そんな中、友野選手は急遽出場の試合でも必ずピークを試合に持ってきている。
だからこそ「代打の神様」なのだ。
ハートの強さを見せた四大陸選手権2020
今年の2月、四大陸選手権2020でもまた、友野選手は補欠から繰り上がって出場した。
このシーズン始め、友野選手にとって順調とは言い難かった。
全日本の予選である近畿選手権では、練習では決まっていたはずのジャンプが本番では2本も抜けてしまう。
結果は総合3位。優勝候補だっただけに、複雑な表情だった。
観客席からでも苦しげな表情や雰囲気は伝わってきた。
「試合が苦しい」
インタビューでそんな言葉を口にした。
それでも、大きな大会初戦であるGPスケートアメリカでは、演技をまとめて総合5位。
早くも「帰ってきた」表情を見せてくれた。
少しずつ、自分の演技を取り戻し、全日本選手権のフリーでは情熱がありありと伝わるベスト演技を披露してくれた。
宇野選手の辞退により、四大陸2020への出場が決まったときの彼の言葉は、
「補欠の1番手に選ばれた時点で、自分は出るつもりでいました」
彼は常に準備しているからこそ言えるのだろう。
結果は自己ベストの演技で総合7位。
序盤の不調が嘘のような出来だった。
四大陸では披露はしなかったものの、大技4回転ループを習得しているという。
先の見えない来季だが、ISUは9月からチャレンジャーシリーズを予定している。
シーズンが始まれば、また一皮向けた姿を見せてくれると確信している。
彼はどんな状況でも「準備している」選手だから。
22歳の友野選手が氷上で見られる日を心待ちにしている。
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