新聞

私は新聞を購読している。
営業に負けた訳ではなく、自分で販売店に電話して購読している。
もう長い期間ずっと。
家には何人か家族がいるけれど、毎日読んでいるのは私だけなので、新聞を購読している主語は私だ。
大きな新聞社のものではなく、地方紙。
生まれた時から実家にあった新聞。
学生の時に営業に負けて全国紙を取ったこともあったけど、全く魅力がなくてすぐにやめた。
毎日どこかの誰かが亡くなって、どこかで毎日命が生まれる。
なんとかクラブが花を植えて、誰かが誰かを助けて表彰されたりする。
誰かのおすすめの本が載っていたり、今日の映画情報なんかもある。
田舎の地方紙。

毎日優雅な朝を過ごしているわけではない。
時間がなければ、読みたい部分だけ読む日もある。じっくり読む時よりそちらの方が多いかもしれない。
開くと同時につけたTVで、読むより先に聞くニュースもある。
前の日の夜にニュースアプリから流れてくるものだってある。
リアルタイムでないそれは、少し遅れている。
それでも新聞が私は好きだ。
小さな記事に人の想いがたくさんこもる。
あまり聞くことが出来ない心の奥の想いなんかも、読んだりすることが出来てとても嬉しい。

毎日ではないんだけど、定期的に載る小さなコラムみたいなものがあって、今日はそれが載っていた。
少し遠くの町で働く方の話で、感性や言葉選びにとても惹かれる。

でも今日のものは、、
何と書いたら良いのか分らないけど、
とても心を動かされた。
持ち前の感性は特に鋭く、使う言葉は優しさと強さで溢れていた。

何かあったのかもしれない。
肩書からすると、料理に関わる人のようで、どんなものを作っているのか、どんな感じの人なのか、実際に見てみたくなった。

普通に生活している中では多分会うこともないし、例え会ってもそんな深い話はしないだろう。
そんな人の深みの想いが読めてとても嬉しい。

少しお金を出せば、音楽が聞き放題、本が読み放題のサブスクリプションが蔓延る中、新聞購読はもう少しお金がかかる。
読み終えたそれは、重さもあるし、資源ゴミは2週間に1回だ。

でも毎日届けられる人の想いに、私は触れていたい。
手軽で身近なSNSではない。

私が広げる新聞に後から起きてきた子どもが目を通している事もある。
隅々までは読まなくとも、新聞を開いた時の香りでも嗅いでたら良いな、と私はほくそ笑む。
香りの記憶は思っているよりも強く残る。

そしてどうやら2匹いる猫も新聞が好きなようだ。
私の読む新聞の上には今日も猫が乗っている。

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