「お金をもらっているので反対できない」地元住民の苦悩|作られた分断#15
沖縄は四方を海に囲まれており、陸路で向かうことはできない。その地理的特性が影響しているのだろうか、デマが流布され、固定化しやすい。
「辺野古の座り込みは県外あるいは国外の人間がほとんどで、彼らは(日本の再軍備化を警戒する)中国や韓国から資金提供を受けている」、「(辺野古移設に反対する)玉城デニー氏が知事になれば、中国が沖縄を占領する」など誰でもデマだとわかるようなことがらが拡散し、固定化される。
辺野古移設に反対する座り込み抗議活動に県外や国外の人たちが多いのは事実だ。座り込みが行われるキャンプシュワブのメインゲート前一帯にしつらえられているテントには、ハングルや英語で書かれたメッセージもみられる。
しかし、座り込み抗議活動に”日当”が出ているという情報はまったくのデマだ。私は、実際に抗議活動の一部始終を近くで見ていたことがある。もし、日当が出ているとすれば座り込みを主催する団体や代表者が参加する人の数を把握していなければならない。ところが、座り込みの事前説明の際には「参加するかどうかは自由です。ここでお帰りになるのも結構ですし、参加してもらうのも、近くで見てもらうのもすべて自由です」というアナウンスがなされた。座り込みが始まる時点で主催者側は参加人数を特定しようとする気配すらない。さらに、座り込みが終了した後も特段人数を数えるわけでもなく、当然ながらお金を渡す場面もいっさい確認できなかった。
日当デマは、辺野古移設に賛成する人たち、またはどうしても辺野古に移されると困る人たち(政治家)が「座り込みに参加する人たちは、移設に反対しているからではなく金に釣られているだけ」という刷り込みを内外にすることで反対派のイメージダウンをねらったことで生み出されたデマだ。デマというのは、元をたどっていくと一種の希望や願望が入り交じっていることが多い。このデマもその一つであると考えられる。
ところで、キャンプ・シュワブの周辺に住む人たちは辺野古移設についてどう考えているのか。ひとりの男性に話を聞くことができた。男性は県内在住者で、座り込みにも参加している。以下は、そのやりとりの一部。(2019年2月24日)
自分たちに都合の悪い考えや意見をお金で封じ込める。安倍政権は実に狡猾なやり方で民意を封じ込めている。また、今でこそ観光収入が沖縄県の財政を支えているが、本土復帰前にはGHQから地場産業を徹底的に潰され、基地がなければ立ちゆかない状態を作られてしまった苦難の歴史がある。それは、米軍や日本政府にとって本土から離れた沖縄県に基地を置いて基地問題を国民の目から逸らすために行われたことだ。
実際にいま、その目論見が結実してみごとに本土の人たちは基地問題に関心を向けていない。それどころか、日本防衛のために沖縄県が過重な基地負担を受け入れるのはやむを得ないことであるという論調が色濃くなってきている。
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