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愛知県内のベストサウナ5選

愛知県はサウナが最高らしい。
僕がサウナに通うようになってからまだ1年ほどしか経っていないが、そこかしこでそのような評価を耳にする。
確かに自宅の近所には未だに10か所くらい銭湯があるし、そのほとんどにサウナがついていてしかも無料だ。別に温泉が有名な都市でもないのに温浴施設は名古屋市だけでも数えきれないくらいあるし、どの施設に行っても多少の差はあれどそれなりに盛況だ。

じゃあ、耳にする評価の中でそれらの銭湯や施設の名前が出てくるのかといいうと、そのほとんどは否である。
耳にする名前は決まってウェルビー、サウナ好きの間では言わずと知れた名所で、名古屋市内だけで関連施設が4か所もある。
僕はサウナに通うようになってから、サウナ目的で旅行する事も増えたが、旅先のサウナ施設で愛知県(名古屋)から来たと話すとやはり決まってウェルビーの話になる。
なるほど、確かにウェルビーは凄い。各施設マイナーチェンジを繰り返して何度通っても飽きさせない工夫があるし、いわゆる「ととのう」ことに関してのこだわりは愛知県どころか全国随一と言っていい名ブランドだ。
もちろん僕も大好きだ。ウェルビーの関連施設は福岡のサウナラボ(女性専用)以外は全部足を運んだし、スマホの待ち受けもツイッターのヘッダーもウェルビーで統一するくらいには好きだ。

だけど、これだけ数多くのサウナを擁する愛知県で、取りざたされるのがウェルビーばかりなのを見ると、もしかして愛知県のサウナが最高というより、ウェルビーが最高なのではないか。
そう考えた僕は、真偽を確かめるために1年かけて県内のサウナを巡ってみることにした。
仕事帰りに銭湯に寄り、休日は予定と予定の合間にサウナへ行き、県内の未訪施設を巡るだけの旅行の行程を組んだ。
もちろん、1年ではそう大した数は行けなかった訳だけど、それなりにまとまった数の施設を訪れてみて僕はある結論に達した。
愛知県のサウナは最高だ。
でも、その魅力を存分に味わうには車がないとちょっと不便だ。

愛知県に旅行に来る人のほとんどが名古屋駅を使うと思うが、県内のウェルビーは全て名古屋駅からアクセス良好な場所にあるうえ、その知名度、満足度も高いため、他の施設の名前を見ても、とりあえず行きやすいウェルビーに行って結果満足して帰っていく、という人も多いのではないかと思われる。
でも愛知県内には、ウェルビーに負けないくらい魅力があるサウナがたくさんあったし、これらはもっと多くのサウナ好きに知られるべきだと感じた。
だから、もしサウナが好きでこれから愛知県に行ってみようと思っている人がいたら、ちょっとハードルは高くなってしまうがぜひ車で行くことをおすすめしたい。(もちろんコロナ禍が収まってからの話だけど。)
この記事では、そんなちょっとウェルビーの名声に埋もれがちな愛知県内の名サウナ施設を5つに絞って紹介したいと思う。

1.七福湯(名古屋市南区)

名古屋市南区観音町4ー13
tel 052-691-7834

七福湯は、僕が最も信頼している銭湯サウナだ。
サウナ好きがサウナに求める基本的なポイントが全て揃っていて、かつその導線が他に類を見ないほど良い。
即ち、「どこに座っても熱く発汗が良いサウナ室」→「サウナで熱した体を十分に冷やしてくれる冷たい水風呂」→「外気に直接当たりながら椅子に座って休憩できる休憩スポット」を全て備えていて、さらにこれら全行程が5歩以内の距離で完結、ループできるというのがこの銭湯最大の強みだ。

サウナ好きの人は良く分かると思うが、サウナを楽しむにあたってはサウナ室→水風呂→外気浴のルーティンがいかに効率化されているかが非常に重要で、どんなに最高な水質の水風呂で、どんなに広々として開放的な休憩スペースがあったとしても、サウナ室と水風呂が離れていればその間に熱は冷めて水風呂の恩恵は半減してしまうし、水風呂を出て休憩スペースまで一旦階段を上って2階に行かなければいけなかったりすると一気に萎えるものである。
その点この七福湯はサウナ室から出て右を向くとそこに水風呂、サウナ室を出て入水まで1歩。水風呂の水温は17~16℃と最も気持ちよくいつまででも入っていられる水温で深い。至福。


さらにまた1歩で水風呂を出てもう1歩進んだ先には手持ちのタオルやシャンプーを置いておける棚があり、そこで体を拭いて左を向くとそこには休憩スペースへの扉。
扉を開けて座るまでに2歩、あとは心ゆくまで外気浴を堪能して涅槃へ飛ぶだけ。サウナ室を出て5歩で涅槃。七福湯のサウナは天国に1番近いサウナ室だ。
もちろん、肝心のサウナ室についても書かないわけにはいかない。


ここのサウナ室はいわゆるボナサウナで、ストーブは座面に収納されており、1度に入れる人数は5~6人が限度と非常にコンパクトな作りだ。
このコンパクトさの影響か、このサウナ室は上段下段関係なくどこに座っても全身を強力な熱で炙られる感覚を楽しめる。
僕は標準的な設定のサウナ室だと初回で大体8~10分、2回目、3回目で徐々にサウナ室にいる時間が長くなるタイプなのだけど、ここのサウナ室は熱くて初回は5~6分ほどで限界(時計がないので室内の砂時計計測)がくる。
そのサウナ室から1歩で冷えた水風呂に入れるのだから、その気持ちよさは推して知るべしといったところだ。

この銭湯の魅力はサウナ以外にもある。
まずこの銭湯自体は元々別の営業者が別の名前でやっていた銭湯を平成初期にリノベーションしたもので、館内は非常に清潔に保たれていて気持ちが良いし、カランも使いやすいシャワーヘッドタイプのカランが充実している。


銭湯自体はコンパクトながら、浴槽は白湯、変わり湯、バイブラ湯、打たせ湯、電気風呂と種類も豊富で、電気風呂はリズムが可変する揉兵衛を採用。
さらに無料で使えるシャンプーとボディーソープが備え付けてあるので、タオルさえ持っていけば気軽に入ることができる。(もちろんタオルレンタルもある。)
さらにこの銭湯の店主のカイヤさん(https://twitter.com/shichifukuyu?s=20)は様々なイベントをこの銭湯で行っていて、アーティストを呼んで銭湯内でライブをしたりしている。
東京にはこの手のイベントがそれなりにあると聞いているが、名古屋ではまだまだ数が少なく、これからの展開に本当に期待できる銭湯だと思う。

褒めてばかりなのもどうかと思うので一つだけ難点を言わせてもらうとすれば、あくまで「銭湯サウナ」であるというところか。
これはほとんどの銭湯サウナにも言える事なのだが、スパ施設のようにサウナ室にフカフカのマットは敷かれておらず、座面にタオル生地のマットが敷かれているだけなので熱が尻を直撃して飛び上がるくらい熱いこともあるし、スタッフも少ないのでそこまで頻繁にマットを替えることもできない(あと常連のおっちゃん達は体拭かずに入ってくる人が多い)ので結構マットがビチョビチョだったりすることも多い。
もしその点を気にする人であれば、サウナマットかマット代わりのバスタオルを持参すると、より快適に楽しむことができるだろう。
ともあれ、もし名古屋の銭湯に興味がある人には、個人的にひと際強く推したい銭湯である。

2.春日井温泉(春日井市)

春日井市 乙輪町2丁目66
tel 0568-82-5722


春日井市と聞いても、県外の人はピンと来ない事が多いと思う。
愛知県の北部に位置し、名古屋市とお隣の岐阜県に接しているこの町は、市内だけでなく名古屋で働く人達がかなりの数居を構えている広大なベッドタウンであり、名古屋市寄りのエリアと岐阜県寄りのエリアでは地形も大分変わってくるため、同じ市内でも一方では晴れ、一方では雨と市内を行き来するだけで気候が変動するような町だ。
実は僕自身も計5年ほど住んでいたことがあり、生活をするにはさほど困らないが、娯楽が欲しければ車で1時間弱、電車で30分かけて名古屋へ出た方が良いので面倒くさい、そんな割とありがちな地方都市といった印象で、春日井市そのものにあまり楽しい思い出はない。
そんな町にこの春日井温泉はある。

この春日井温泉のサウナの魅力、それは、銭湯サウナのレベルを逸脱した、圧倒的な「ととのい」の深さに他ならない。
基本的に、銭湯は生活必需品としての風呂がメインの施設であり、ウェルビー等娯楽のためのサウナをメインに据えた施設のようにホスピタリティが充実していたりはしていない。
そもそもスペースが限られる所が多いため、「ととのい」を得るための休憩スペースが存在していないことがほとんどだ。
春日井温泉もその例にもれず、サウナ2種、水風呂2種と銭湯サウナとしては設備は充実しているが、前述の七福湯のように休憩用のスペースや椅子は用意されていない。
でも、春日井温泉のサウナにはそんなものは不要だ。
余計なことを考える暇もなく、一撃で遠い世界へぶっ飛ばしてくれる。

春日井温泉が最高に「ととのう」のは、やはりこの高温サウナ室が大きな要因になっていると思われる。
このサウナ室は銭湯サウナとしては大分広く、10人以上は入れる作り。
室内の温度は86~88℃程と平均的なサウナ室より若干低めな設定になっているが、これには理由がある。
このサウナ室、スチームサウナでもないのに常にシュウシュウと微量のスチームが出ていて、室内の湿度が通常のサウナ室よりずっと高く保たれており、その結果体感温度は100℃を優に超える。
常に高温の蒸気が体にまとわりついてくる状態なので、あっという間に全身が茹だるように熱くなってくる。
感覚としては、静岡のサウナしきじの薬草サウナから薬草を抜いた感じに近く、吸い込む空気も熱いので呼吸がし辛いのか、口回りをタオルで覆っている客も多かった。
この中に5分もいると、体中の水分が流れ出して生存本能が水風呂を欲してくるので、水風呂が苦手だという人はここのサウナ室に入ると嫌でも水風呂に入りたくなっておすすめである。きっと新しい扉が開ける。

サウナ室から脱出したら、本能の赴くまま水風呂に直行する。
ここの水風呂は水温15℃台の冷水風呂と25℃台のぬるめの水風呂の2種類用意されていて、やはり冷たい水風呂が苦手な人にも安心な作りになっている。
天然地下水を汲んだ水風呂は入るとサウナ室の焼けつくような熱さを一気に拭い去ってくれて、思わず声が出てしまうほど気持ちが良い。
思わず潜ってしまいたくなるが、それは衛生的に良くないので控えていただきたい。代わりに水吐のパイプから流れ出る水を直で頭から被ると、頭上から体の芯が冷えていき、体にモノノケが走る感覚を味わえるのでこちらをおすすめしたい。
もちろん2種の水風呂があるということは、冷水風呂から通常の水風呂への冷冷交代浴ができるということであり、こちらもおすすめだ。
冷水風呂からぬるめの水風呂に移ると、水が体を毛布のように包んでくるような感覚が心地良いが、長く入りすぎるのは危険を伴うので入り過ぎには注意したいところである。

そして春日井温泉の名物といえるのがこの露天スペースであり、見てわかるとおり銭湯の中に滝と池があって、池には錦鯉が泳いでいる
写真では伝わりにくいかもしれないが、この滝結構な水量と勢いがあり、近くで見ると確かなマイナスイオンを感じて爽快である。
また、この滝は日が落ちてくるとライトアップされ、僕が行ったときにはまだ紅葉の残っている時期で非常に見応えのある景観となっており、銭湯にいながらにしてこんなにも強く四季を感じられるスポットがあるのかと非常に感動した。
水風呂からあがった後、この露天スペースで滝を見ながら外気に当たっていると、全身が電気マッサージを受けているかと錯覚するくらい痺れてくる。
この痺れと抜けの良い外気に身を任せていると、体が回転しながらどこかへ吹き飛んでいくような感覚を覚える。
一度座ると、もう立ち上がれなくなるのではと思うほど飛ばしてくれるこの衝撃は、他の銭湯のそれを悉く凌駕するほど深い。
初めてここの外気浴を体験したとき、気が付いたら30分ほどひたすら滝を眺めながら放心し、体が冷え切ってしまったが、その後またあの灼熱のサウナ室に戻って水風呂→滝放心を繰り返し、帰る頃には見事に春日井温泉の虜になっていた。
ただ、あまりに良すぎてミストサウナに入るのを完全に忘れてしまっていたので、次の機会にはぜひ体験したいと思う。

春日井温泉はもちろん風呂も充実しているが、僕が特筆したいのは入った途端飛び上がるくらいの電撃を食らわせてくる電気風呂だ。
ここの電気風呂は奥に行くほど深くなっており、それに合わせて電流も若干強くなっていくようなのだが、僕は初見で隣のジェットバスから直接最奥部へ突っ込んだところ、グリーンマイルの電気椅子シーンかと思うくらい全身がガクガクと震えまくるはめになったうえ、人間強力な電流を食らうと意志とは関係なく声が出るという事実を学んだ。

そんな最高な春日井温泉だが、サウナ室の規模と水風呂の規模が若干アンバランスであることだけは難点と言えるかもしれない。
前述のようにここのサウナ室は銭湯サウナにしてはかなりの人数を収容することができるが、水風呂は2つあれどぬるめの水風呂は1~2人用、冷水風呂は実質1人で使うことが前提の狭さだ。
サウナ室が広ければそれだけ水風呂の利用人数も増えるが、水風呂のキャパシティが需要に若干追いついていない感は拭えず、現に僕自身も一度水風呂待ちのタイミングに当たってしまった。
他のサウナでも言えることだが、ここでは特にそのような現象が起こりやすいと思われるので、仲間数人で行ったとしても連れ立って水風呂に入ったりはせず、譲り合って利用してもらいたい。

3.八幡湯(名古屋市昭和区)

名古屋市昭和区御器所4-16-12
tel 052-871-2916


名古屋の銭湯サウナからはもう一つ、この八幡湯を紹介したい。
八幡湯は1884年創業、明治、大正、昭和、平成そして令和と五つの時代を生き抜いてきた県内有数の老舗銭湯だ。
外観を見て分かるとおり中も相当に年季が入っていて、細かいところは現店主のDIYで直してると思われる箇所が散見されたりと、建物だけ見ても非常に趣きのある作りになっている。



僕は名古屋に数ある銭湯の中でも、この銭湯の浴室が1番好きだ。
大理石のような白いタイル張りの浴室は、トルコの大衆浴場ハマームを思わせる作りで、薄ぼんやりとした照明がまた雰囲気がある。
こんな浴室の真ん中に配置されてるのがスノコ張りの木風呂(めちゃくちゃ熱い)で世界観が若干混乱するのも最高だ。

八幡湯はサウナ室も非常に独特だ。
まず温度は常時100℃超えで熱い。
室内奥のテレビ横に小さな時計があるが、常に曇っていてほとんど見えないので水風呂が欲しくなった頃合いで出るストイックな方式だ。
さらにこのサウナ室、通常座面に敷かれているはずのマットがない。
室内に無造作に立てかけてあるまな板をマット代わりに敷いて座るのがここのルールだ。
このまな板もおそらく店主のDIYの賜物と思われ、大きさも厚さも不揃いなのが非常に味わい深い。
サウナ室を出る時には入口横にあるかけ湯槽でまな板を流してから元の場所に戻して干しておくのがマナー。入ってきた人は乾いた頃合のものを取って使うという流れになる。(濡れてるやつを選ぶと尻が火傷するくらい熱い)
ちなみにこのサウナ室、先に書いたようにサウナ室内にかけ湯槽があるため、剥き出しのスノコになっている床や座面に向かってかけ湯をする事で床ロウリュ、椅子ロウリュが可能となっている。
もちろん同室した人に配慮する必要がある他、床も椅子もサウナストーンへのロウリュのようにあっという間に蒸発する事はなく、ジワジワと蒸発するため、調子に乗ってかけ過ぎると間を置いてから地獄のような熱さが延々と続くサウナ室になってしまう。
そもそもがロウリュのためではなく、マット代わりのまな板を洗う、床や座面の汗を流すための副次的なものなので、節度をもってやってもらいたいと思う。

サウナ室を出るとすぐの位置に水風呂(写真奥側)があり、サウナ室からの導線も完璧だ。
八幡湯の水風呂は14〜15℃、キンキンに冷えていて首までしっかり浸かれる。最高。
そして写真手前側の寝風呂スペース、これが現在故障のためお湯が抜いてあり、代わりに浴槽の中に藤椅子と扇風機を置いて半露天的な休憩スペースとして運用している。
もちろん水風呂の真横で導線は最高、元々寝風呂だったので床に寝転びもOK、神。
激熱のサウナ室→キンキンの水風呂→扇風機の風に当たりながらの半露天外気浴→天窓から差す日光を見ながらchill
あまりに気持ち良くて、僕もこのスペースの椅子で数十分意識を飛ばしていたところ、あまりに魂が抜けた様相だったのか、全身和彫が入った常連のおじさんに「兄さん…大丈夫?」と心配されて起こされるなどした。

ただ、この休憩スペースぶっちゃけ結構汚いので、綺麗好きな人は椅子に座るのも寝転ぶのも躊躇われるかもしれない。(大概のレベルなら気にしない自分でも一瞬躊躇した)
どうしても気になるようであれば、やはり座面に敷くためのタオル等を用意するか、浴槽の縁でchillも良いかもしれない。



4.サウナピア(豊橋市)

豊橋市神野新田町ヨノ割66
tel 0120-881-937


ここからは、サウナをメインに据えた施設を2つ紹介したいと思う。
まずはこの豊橋市にあるサウナピア、エントランスのネオンサインからして強い昭和後期〜平成初期臭と加齢臭が立ち上っているのがお分かりいただけるかと思うが、館内設備も大体こんな感じである。


バブル期を感じる謎ステンドグラス、体重を預けると軋みをあげるリクライニング、ずらりとチャンネル違いのテレビが並べられたAVルームと呼称されるスペースは、テレビがいっぱいあるからAVルームなのかと思っていたらよく見るとガチのAVが垂れ流されている。
漫画もかなりあるが、そのラインナップもなかなかにクセのあるものとなっており、最新刊コーナーのポップを見れば大体どういう空気感なのか理解できると思う。


館内にはレストランも併設されているが、どう見てもレストランと言うより下町の居酒屋といった趣きだ。
まさに「おじさんの国」みたいな施設であり、実際客の9割はおじさんである。
昨今のサウナブームで取り上げられがちな、北欧コンセプトの洗練されたサウナにサウナハット被って入ってる層とは明らかに真逆の施設だが、それでも根強い支持を得ている理由はサウナに入ればすぐに分かる。

浴室に入ると、石油ストーブを切った直後のような、若干苦いガスのような匂いが漂っているのが分かる。冬の匂いだ。
匂いは最も記憶を呼び起こすと言われているが、僕はこの匂いから郷愁を感じるタイプの人間なので、とても懐かしい気分になる。
浴室内にあるのはカランの他、白湯、水風呂、バイブラぬる湯、そしてサウナのみ。
サウナを楽しむ為にバリエーションに富んだ浴槽は不要。体を洗って白湯で汗腺を開いたら後はサウナに入るだけ、これで十二分である。

サウナピアは愛知県内でも少数派のサウナパンツを採用しているサウナだ。
正直サウナファンからも賛否両論な感があるこのサウナパンツだが、個人的な意見を言わせてもらえば全サウナで義務化して欲しいと思っているアイテムである。
主な理由としてはサウナ室内で自分の股間に接してたタオルで汗拭くの嫌じゃない?というだけなので、じゃあタオル2枚持って入れよと言われるとは思う。
ただサウナパンツならマット代わりに穿いて入れるし、座面に接する部分の自分の汗も吸ってくれるので、サウナ室内で余分な気を遣わなくて済むのは絶対大きいはずだし、なにより色々と見苦しくない。
個人的には、サウナで真に身も心も解放されるには必須だと言っても過言じゃないと思っているので、採用してる時点で僕の中では120点である。


サウナピアのサウナ室はいわゆる「昭和ストロング系」と呼ばれる、カラカラに乾燥してる代わりに温度を高めに設定している系統のサウナで、汗は若干出にくいものの、その代わり体内に熱が篭りやすいため脳髄が茹だるような熱さを感じる事ができる。
僕がこのサウナ室で推したいのは、サウナ室内でも昭和を感じることができる、まるでガス灯のような外観の室内灯である。
まるで老舗の喫茶店にあるようなこのレトロ感溢れる室内灯は、眺めているだけで不思議と心が落ち着いてくる。
室内にはテレビもあるが、僕はもっぱらこの室内灯をぼーっと眺めながら入っている事が多かった。

サウナピアの浴槽は、水風呂の方がデカい。
写真の一番奥側が白湯、真ん中が水風呂(15℃)手前が30℃程のバイブラぬる湯の浴槽。
水風呂は冷えているが、肌触りは優しく、冷た過ぎない最適解な温度。
水風呂を出てすぐに外気浴も最高だが、ここは隣のバイブラ槽にハシゴする方式を強く推したい。
この浴槽は非常にバイブラの勢いがあり、体の力を抜くと体が小刻みに震え、腕などの末端器官は勝手に浮かび上がっていく。
肩まで浸かり、浴槽の縁に体を預けて下を見ると、大量に発生した泡に浴室の室内灯が反射して白く輝いており、沈んでいる体は全く見えなくなる。
15℃の水風呂から30℃のぬる湯に移行した際の温度差、体を浮かばせるバイブラ、ホワイトアウトする視界が重なり、浸かっていると体と浴槽の境界が曖昧になって溶け出していく感覚。
気がつくと数十分意識を失うかのように浸かり続けてしまう沼の時間である。
あがろうとすると、まるで月から帰ってきた直後の人間のように、今まで解放されていた重力が一気に体にのしかかり、再び浴槽に沈んでしまう。
多分この浴槽内の体感重力は地球の6分の1なのだろうと思う。

外気浴スペースへ続くドアを開けると、写真のような解放的な庭が広がっている。
周囲には目隠し用の垣根が設けられてはいるが、サウナピア周辺にはアパート、マンションがあるので普通に丸見えであり、苦情とか大丈夫なのか若干心配になる作りである。
この環境を鑑みてのサウナパンツ採用なのかもしれない。僕が行ったときはそんなこと関係なくおじさんが全裸で寝てたけど。
この庭、開放感もさることながら配置されているオットマン付きの椅子が本当に最高だ。
リクライニング機能はないが、座ってみると椅子とオットマンの角度が人をリラックスさせる黄金比じゃないかと思わせる程しっくりくる。
この椅子に体重を預けて空を見上げてると、空がグングン近づいてくるような錯覚を覚える程バッチバチにキマる。
初めて行ったとき、この庭でテントサウナするイベントやるのも面白そうだな…と思えたけど、改めて考えるとサウナピアの空気感にはミスマッチだし、やはりあのレトロなサウナ室からの庭が最高なんだろうな。

今回紹介している施設の中で、サウナピアに関してはほとんど難点はないと思っている。
顕著に感じられるおじさん臭さ、古臭さこそこの施設の醍醐味であり、サウナピアに集うおじさんとおじさん予備軍達はこの空気感が好きで来ているはずなので全く問題ではない。
これからも末永く今の空気感のまま続いて欲しい施設である。
ただこの手の施設にしてはレストランのラストオーダーが22時と割と早めなので、サウナ後に一杯ひっかけたい方は時間配分に注意した方が良いかもしれない。




5.サウナイーグル(知立市)

知立市宝町塩掻58
tel 0566-82-2814

最後に紹介するのは知立市にあるサウナイーグル。
ぶっちゃけると、この記事はサウナイーグルの事を書きたくて始めたと言っても過言ではない。
僕はこの1年で愛知県内以外にも様々な施設を巡ってきたし、県内には前述のウェルビーもあるわけだけども、どの施設も僕の中でサウナイーグルを超える事はなく、不動のベストサウナの位置を確立している。
サウナイーグルが好き過ぎて、車でサ旅に出る時は出発前夜にイーグル宿泊、最終日はイーグルに帰って来てサウナ入ってから帰宅という謎行程がルーティン化しており、僕のサ活のランドマークと言っていい施設である。
よって、明らかに他の施設より紹介に熱が入る部分があると思われるがご容赦願いたい。

サウナイーグルは元々昭和から続く老舗サウナだったのだが、2018年に全面リニューアルオープンしており、館内は非常に清潔で真新しい。
多分県内のサウナ施設の中でもトップクラスに綺麗な施設だと思う。

館内にはレストランが併設され、リクライニングスペースも3カ所あり、座れなくなる事もそうそうない。
宿泊用には半個室のブース、和室、仮眠室等が用意されている。
リクライニングスペースにはかなりの数の漫画が置かれている上、リクライナーには個別にテレビとコンセントが付属しているので、時間潰しには十分過ぎる程に充実していて、ネット環境はないが漫画喫茶とほぼ同じ感覚で利用できる。


浴場も非常に綺麗だ。
浴場内にあるのは白湯、バイブラ湯、変わり湯、水風呂2種。
規模的にはそこまで大きくなく、カラン数もそれ程でもないが、カミソリやボディタオルも使い放題で必要十分な設備が整っている。
ここの浴場で個人的に嬉しいのは、入口、水風呂前にそれぞれかけ湯が用意されていたり、洗い場それぞれに使用済みボディタオルを返却するためのカゴが備えられていたり、浴槽には必ず(浴槽が多い温浴施設には、これが意外とない事が多い)手桶があって、かけ湯や椅子で休憩後に流すために使えるようになっている等、導線がスムーズになるような心配りが行き届いている事だ。
さらに浴場内には椅子とデッキチェアが2脚ずつ配置され、デッキチェアの上部のダクトからは外気が流れ込み、室内で風を感じながら寝転べる仕様になっている。
使ってみると分かるが、このデッキチェア、サウナ後の休憩に使うと永久にいられる。
また、浴場内で1番大きい白湯の温度は40〜41℃とサウナ前に汗腺を開くのに最適な温度で、その他の変わり湯は38℃、バイブラ湯は36℃とぬるめの設定となっていて、バイブラ湯から入って変わり湯、白湯と段々温度を上げて調整してからサウナに入るのがマイルーティンとなっている。
ちなみに、バイブラ湯は前述のとおりいわゆる不感湯とされる温度設定になっており、サウナ前の調整以外にも有用な使い方があるのだが、長くなるのでその件と水風呂の詳細に関しては後述する。

サウナ室は3段座面のサウナで、大体30人前後の人数を収容できるようになっている。
座面にはフカフカの白いマットが全面に敷かれ、とても座り心地が良い。
さらにここのサウナ室はガラス張りになっていて浴場のからもサウナ室からもお互いの様子がよく見える仕様なうえ、間接照明がいたるところにあるため、写真のとおり非常に明るいサウナ室になっている。
サウナ室は汗をかくのが目的である以上、どうしても汚れが目立ってしまう側面があり、個人的には暗いサウナの方が好みなのだが、サウナイーグルの場合こまめに清掃、マット交換(指定時間が貼りだされているのでサウナに入ろうと思ったら交換時間だったということもない)がされており、非常に清潔で気持ちよく使える。
サウナ室の温度設定としては最上段で90℃ほどとさして熱いわけではないのだが、ここのサウナ室は熱い。茹るほどに熱い。
その理由としては、室内手前のミニストーブと奥に配置される巨大ストーン式ストーブによるダブル火力の熱供給と、定期的に行われているロウリュサービスにより、室内の湿度が高い水準で保たれていることに由来する。

サウナイーグルはロウリュサービスに力を入れている施設だ。
ロウリュとはストーブ上のサウナストーンに水をかけることで水蒸気を発生させ、強制的にサウナ室内の体感温度を引き上げるもので、この蒸気をタオル等で攪拌させ、室内に蒸気を充満させたり、客に向かって仰ぐことでさらに体感温度を引き上げる行為をアウフグースと呼び、サウナ界隈で一般的にロウリュサービスというと、このロウリュとアウフグースがセットになっていることが多く、イーグルのサービスもこれに倣ったものだ。
流れとしては水かけ→攪拌→客への個別仰ぎ×3を1セットとし、これを2回繰り返すのがここの通常ロウリュサービスとなり、ロウリュサービスを導入している他店についても、細かい差異はあれど大体流れは同じである。
ただ、イーグルが他店と明らかに違う点が一つあり、それは全セット行った後に個別仰ぎリクエスト無制限のおかわりタイムが用意されているという点だ。
おかわりタイムがある店舗は他にもあるが、大体もう1~2セット個別仰ぎの行程を繰り返して強制終了となるのが通常である。
アウフグースを行ういわゆる熱波師と呼ばれる従業員(イーグルではロウリュマイスターと呼称されている)はストーブの真ん前で一番熱い熱波を浴びているうえ、常にサウナ室内で動いていなくてはいけないのでその体感温度は客の比ではなく、無制限におかわりなどしようものなら体がいくつあっても足りない。
しかしサウナイーグルはおかわり無制限である。
10回でも100回でも言った通りの回数を仰いでくれるし、おかわり客の仰ぎが一巡したらまたおかわりを頼める。
当然熱波師も人間なので限界が来るときもあるが、そんなときは別の熱波師が控えていて問題なくおかわりが続くし、限界がきた熱波師は隣の水風呂を被ってからまた復活してくる。
客がサウナ室からいなくなるまで、永遠に終わらないのだ。
若い熱波師が多い施設ではあるが、このサービスを毎日続けていることに未だ驚きを隠せない。
また、そんなサービスを行っているからかイーグルは客層も魔窟であり、最初のおかわりから100回頼んで結局1000回以上仰いでもらったり、熱波師を3人抜きしてまだサウナ室に居座っていたりする人外みたいな客が出没している。
正直イーグルの従業員にだけはなりたくない。
また、通常のサービスのほかに時間指定でスーパーロウリュなるサービスもあり、これはサービスのセット数、つまり水かけの量が通常の2回から3回に増えるもので、当然通常と比べてめちゃくちゃ熱くなるうえ、最後はやっぱりおかわり無制限である。
僕が初めてこれを体験したときは侮って最上段に座っていたのだが、耳が千切れそうになっておかわりまで行けず早々に退散した苦い記憶があり、以降は必ず頭にタオルを巻いて最下段に座るよう心掛けている。

イーグルは他にも15分延々ロウリュし続けて耐えきったら景品進呈のロウリュチャレンジ従業員をサウナ室に入れて誰が最後まで残るか当てたら景品進呈のロウリュダービーロウリュ中のサウナ室内でサウナドリンクオロポを配って知らないおじさん達と乾杯するオロポロウリュスーパーからさらにセットを増やしたハイパーロウリュ等頭のおかしい企画を次々と打ち立て定期的に実施している。
この中で僕が体験したことがあるのはハイパーロウリュだけなのだが、タオルを巻いて最下段に座っていたのに、乳首が取れそうになっておかわりまで行けず早々に退散した苦い記憶があり、もうハイパーはいいかなと思っている。

イーグルには水風呂が2種類存在し、一つは水温17℃前後弱冷水風呂(通称ダブル)、もう一つは7℃前後のいわゆるシングル水風呂である。
シングルの水風呂は非常に貴重であり、県内には他にウェルビー栄のラップランド内に存在するが、こちらはフィンランドのアヴァントをイメージしたコンセプト水風呂で、純粋な水風呂としてのシングルは県内ではイーグルのみと思われる。
ダブルの方は水深も浅く、水の肌触りが柔らかく、非常に入りやすい温度となっており、いつまででも入っていられる良水風呂。
対してシングルはひたすら深く、静かで、冷たい。
水深が120cmほどあるので入ると立ったまま肩まで浸かることになり、体中を刺すような冷たさが襲ってくる。
前述のサウナ室で体を灼いてからこの水風呂に入ると、電流が駆け巡るような感覚の後、体中の熱が一気に吐息となって放出されていく。
初めて入ったときは耐えきれないほどの衝撃だったが、今はもうこの感覚が病みつきになってしまい、シングルに入らずにはいられない体になってしまった。
また、イーグルでは定期的に氷投入イベントを行なっており、その際にシングルの水温は3℃代になるので、さらなる刺激を求める方は狙ってみるのも良いかと思う。


ここのシングルを出た後の外気浴は問答無用で飛べるので、1セット目はシンプルにそちらをお勧めするが、2セット目からは隣のダブルにハシゴしての冷冷交代浴をお勧めしたい。
イーグルの冷冷交代浴が他と違う点は、ハシゴした先もしっかり冷たい水風呂のはずなのにまるでお湯に入っているかのような温かさを錯覚する点だ。
実際には冷たいはずなのに、入った瞬間布団に包まったかのような安堵感を覚える不思議な感覚。
しばらく浸かっていると肺が冷えてきて、吐き出す呼吸が冷たくなってくるし、視界がチカチカと点滅してくる。
20〜30℃代の水風呂で同じ事をしても中々この感覚は味わえず、唯一無二である。
ダブルを長めに入って前述のバイブラ湯にさらにハシゴするのも非常に気持ちが良くてお勧めだ。
冷えた体に不感湯バイブラの刺激がなんとも言えず昇天間違いなしである。
また、このバイブラ湯は朝の清掃後すぐに入ると30℃前後の言わば第3の水風呂と化しており、1番風呂に間に合う方はぜひ堪能してもらいたいと思う。

イーグルの外気浴スペースはこじんまりとしているが、風の抜けが絶妙で最高に気持ちが良い。
水風呂直近に前述のデッキチェアがあるのでそちらへ行きがちだが、1セット目は特にこちらの外気浴スペースで休憩するのをお勧めしたい。
ここには通常の椅子が4脚、デッキチェアが1脚用意されていて、心情としては寝そべる事ができるデッキチェアに魅力を感じるのも分かるが、ここは出入口から向かって左端の椅子にぜひ座ってみて欲しい。
この椅子は浴場の換気ダクトの正面にはいちされている関係で常に風が吹きつけており、1セット目の1番敏感になっている体を確実に彼岸へ飛ばしてくれる。
僕の中でこの席はまさに特等席扱いとなっており、特に夏場はその真価を十二分に発揮してくれるのでぜひ体感してもらいたい。
また、この外気浴スペースには使い終わった椅子を流すためだけのためにカランと手桶が用意されているのも個人的な推しポイントである。

このように、イーグルはサウナ、水風呂、外気浴の組み合わせをする際の選択肢が非常に多く、そのどれもが違った味わいがあるのが特徴で、浴場内の細かい配慮、サービスがどれを選んでも絶対に気持ち良くなれるように作られている。
僕が何回行ってもイーグルに飽きず、ベストサウナに挙げる理由はこの点に尽きるのかもしれない。

他にもこの施設で特筆したいのは、館内で提供されている食事がかなり美味しい事だ。


看板メニューであるイーグルコンディションラーメン(ベトコンラーメン)や大ジョッキで出てくるオロポを始め、グランドメニューも非常にバラエティーに富んだものとなっているし、毎週末何かしら特集を組んで限定メニューを提供しているので飽きがこず、イーグルに通う腹が減ったサウナー達の胃袋を掴んで離さない。
僕はレストラン併設のサウナ施設では可能な限り何かしらそこで食べるように心がけているが、イーグルのレストランは全国でも有数のメニュー数と美味しさであると自信を持って言える。
個人的なおすすめメニューは豚肉ときくらげの卵炒めと回鍋肉なので、機会があればぜひご賞味いただきたい。

このように個人的な推しポイントだらけのサウナイーグルだが、若干の難点も存在する。
まず、館内着がダサい。

黄色と青のツートンカラーな館内着は、初めて見たときTポイントカードにしか見えなかった。
今では慣れてしまった感があるが、多分この色合いの服を着るのはここ以外生涯ないだろうなと確信している。
また、ボーリング場の真下にあるという構造上の問題か、携帯の電波が非常に弱く、提供されている無料wifiも使い物にならない事がよくある。
キャリアによって違うのかもしれないが、真横に国道が通っている市街地なのにたまに圏外になるのは勘弁して欲しいので、せめてこの点だけでも改善してもらえると嬉しいなと思う。

以上5軒のサウナ施設をご紹介してきたが、ここには載せられなかった素晴らしい施設は県内にもまだまだあり、機会があればそちらも紹介できれば良いなと思っている。
実は昨今の情勢により、現在1カ月程断サウナ状態にあり、記事を書きながら行きたくなってたまらないのが正直なところで、一刻も早くコロナが収束する事を祈るばかり…
皆さんもお体には充分お気をつけて良きサウナライフを。

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