指板材チョイス

また間隔が空いてしまいました。最近は油断しすぎです。書きたいことはいくつかあるものの、お見せできる内容にするための、もう一歩踏み込んだ考察ができていません。ただだらだらと雑談するだけでよいなら、書けます。しょうがないから、今日はそんな感じで。

先週日曜日の本番にはクルーズの70s仕様のジャズベース(4弦)を持っていきました。時々こちらでご覧頂いた楽器です。4本のクルーズをGeek In Boxさんに委託販売しておりますが、手許にまだあと3本あるうちの1本です。うちに7本もあったという…。それはいい感じで使えましたので、置いておくことに迷いはありません。

私の、基本的に好きな音は、PU位置的には70sのJBの方ですね。ベースの、ベースパートとしての音色について、それはもう若い頃から目指しているところはずっと一緒で、じゃぁどうやってそれを得るのか、は「仕様」という部分ではほぼ見えています。

私は相当数のベースを買ったり売ったりして取り替えてきましたが、その変遷で見えてきたものの実像とは、まだ出会ってないようで、そこは不思議というか滑稽というか、単なる無い物ねだりなのか不明ですが、そういうことです。まだ探しています。

そこには、老化や仕事内容の変化に伴う、弾き易さへの欲求が同時進行で存在しているからで、一方を立てれば他方が損なわれるといった難しさを感じてきました。

で、雑談たる本日の内容について、多少は明確にしたいポイントとしては、アッシュボディとアルダーボディでは前者が好きで、かつ70sのPUロケーションが好みとあれば、それは典型的な例の奴でいいのではないか、選び放題でしょ、と言われそうなのに、さにあらん、という実情についてです。

指板です。その典型な奴はメイプルワンピースネックが由来で、それはそれで好きです。指板を貼らない、棒のまま、楽器にしちゃうといった発想の乱暴さが素朴な音色に現れるその仕様は、実は好きです。ただ現行製品には、それの5弦バージョンとかって無いですよね?

アッシュボディにメイプル指板ってアイコンにすぎないと思うのですよ。貼りメイプル指板は、少し意味があって、それがいいと思える組み合わせも私は知っています。でも一番いいとは思っていません。

指板といえば、古来黒檀でなければと思われてきましたが、フレットという金属を打ち込むのであれば、そこまでタフでなくても実用に足る、という理由から様々な木材が試されてきた中で、実際メイプル指板は、指板向きとは思いません。メイプルワンピースネック(指板を貼らない構造)は「ならでは」の音があって良いのだけれど、見た目だけそれに近づけた別物のメイプル指板のネックは、個人的には良い印象があまりないのです。

いや、まさに上で話したクルーズのがそうですけどね。これがワンピだったらもっと好きかも、と思いながら貼りメイプル指板で妥協しています。むろん構造的に、トラスロッドの仕込みに関連する技術論的な優劣は存じています。その辺は、ユーザーの立場としては見て見ぬ振りです。

ローズウッドショックがありましたから、ここ数年、それをありがたがる傾向も見られますね。私は、近年もののブラジリアンを使った楽器で良いと思えたものは皆無で、もう1本大事にしている4弦のクルーズはまさに「ハカランダ」を誇っていますが、じゃなかったらもっと好きだったろうに、と思ってしまいます。高価なくらいなら良質なインディアンでもいいし、ハカと同種らしいですが、マダガスカルが一番好きです。ホンデュラスも数本持っていましたが、少し違う(パーカッシブに過ぎる)。たぶん、マダガスカルはビンテージの、当時使われていたブラジリアンに近い良質なものが、比較的リーズナブルに入手できる材なのではないかと想像します。

そのローズショック以来、代替品としてパウフェローの採用率が上がっています。安価な機種にも使われるため、ヒエラルキーとしてローズより下に見られがちですけれど、リッケンバッカーを初めとして、もちろんケンスミスもですが、連綿と高級な楽器にあえて採用されてきた歴史があります。安い楽器には樹種名が同じでも低廉に取得できたグレードのものが採用されるだけの話で、そこで価値を決められたらたまりません。私は、一応、最良であろうもの中での、音色の相違をイメージできていると自負しています。

そのパウフェローはマダガスカルローズと並んで、指板材に指定したい最上位にあります。もちろん、アッシュボディ、70sPUロケーションのボディ側に組み合わせられる楽器に採用される率は極めて低いです。あったら欲しいのに。

例えば、F-bassのVFというシリーズに、楽器店に在庫している期間中、何度か試奏させていただき、弦間19mmを買う賭けに出られなかった個体が、素晴らしく好みだったのですが、パウフェロー指板でした。Fでは他に見た記憶がありません(メイプル、マッカーサーエボニー、ごく稀にローズウッドですが更にレアでしょう)。その個体は、ついでに言えばボディ側もアルダーをセンターブロックにした、アッシュウィングという珍しい3ピース構造で、PUロケーションは60sでした。目から鱗の落ちる、この組み合わせ方も気に入りました。

プロビジョンの種子田さんモデルの5弦を数本触る機会があって、明確に1本好きなものがありました。ほぼ買いかけたのですが、やはり一晩寝てみて、35インチスケールはパス、という結論に至りました。その楽器も、それだけがパウフェローでしたね。他はローズウッドだったと思います。種子田さんのはブラジリアンですかね。私が試奏した中に、それはありませんでした。

パウフェローはサドウスキーも昔から使用していますが、アルダーボディに組み合わせるものばかり。アッシュボディとのペアリングは、やはり見た記憶がありません。不思議です。指板て、大きく音に影響を与えると思うのですが、もっと選べるようにして欲しいものです。

というわけで、前も話したかもしれないトピックですが、無造作に書き始めるとこんな感じです。


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