LR-10のPU交換について考えてみる

Ibanez LR10は1982年に発売開始され1986年版のカタログまで生産されたリー・リトナー氏のシグネチャーモデルです。1981年に出た"RIT"というアルバムでは、既にその音が聴けるようです。一般販売モデルとは違うと思いますが。

当時そんなことには関心を持ちませんでした。彼はGibsonのES-335に決まってると思っていましたし。70年代にはそうしたギターミュージックを熱心に聴き、David Spinozza、John Tropea、Steve Khanはトップ3のフェイバリット・ギタリストで、今でも彼等の音楽はよく聴いています。とは言え80年代に入ると、LeeやLarryといった大スターともども、フュージョン・シーンは既に興味の範疇になかったのです。申し訳ないですが、あんまり自分の好きなものの傾向を説明することが得意ではありません。

中学二年生で初めて手に入れたエレキギターはGrecoのSA-550で、335スタイルですがセンターブロックのないフルアコでした。とは、比較的最近にも書いた気がしますね。常に私にとって、エレキギターは335のような形をしたものが原器で、フェンダー系はちょっとしっくり来ません。ストラトキャスターのコピーモデルは、なんだかんだで5本くらいは所有歴があるけれど、やっぱり馴染まなかったですね。ギタリストとしてバンドやっているわけでもないし、だいたいトレモロってのが少し苦手。

どうでもいい話でした。近年になって手に入れたGretschには目から鱗で大好きだったけれど、ジョージのようなダブルカット、つまりは335っぽい、のが好きで、持っていたチェット・アトキンスモデルはシングルカットだったので潔く手放しました。それで代わりにやってきたのがLR10というわけですが、グレッチトーンの代替にはなりませんね…。いいんです、弾き易いから。

昨日(というかさっき)書いた記事で、入手時よりSeymour DuncanのPUに載せ替えてあり、あまつさえコイル切り替えスイッチが搭載されているとお話ししましたが、ネックPUが最高なのにブリッジPUがイメージに合わない、というわけで少なくともブリッジ側は交換したいと強く思っています。

じゃぁLR10のオリジナルPUはどんなものだったかと言うと、当時MaxsonがGreco、Tokai、Ibanezなどに供給していたAlnico3のPUが元となっており、Leeのリクエストによりターン数を増やしてあります。実機の測定ではないようですが、ネック11.97kΩ、ブリッジ12.16kあるいは13.72kΩといった資料があるようです(以下のサイトを参考にさせて頂きました)。

私のには、現状ネックPUは"AlnicoIIPro"(APH-1)が載っています。名前通りアルニコ2で7.5kの直流抵抗値。ローアウトプットですから、オリジナルとは大分異なるでしょう。一方、ブリッジ側は"JB"(SH-4)でありアルニコ5に18.8kとハイパワーです。アルニコ3に14k弱というLRのリアから比較しても、出力はかけ離れてしまいます。

前オーナーがコイルタップを付けているので、単純にリアをシングルコイルとして使用して7k、ということでバランスするように見えます(実際はそんな単純なものではありません)。しかし切り替えスイッチは両方のPUに同時に効くよう配線されているのです。それでもフロントの方が振幅が大きく出力が出るし、そもそも2ボリューム2トーン仕様ですから、追い込めるものなのかもしれず。ですが、ちょっと私には目的地が見えませんでした。

SH-4は"JAZZ"(SH-2)をフロントに組み合わせるのが定番中の定番とされていて、そちらはアルニコ5ですが直流抵抗7.5kとAPH-1とターン数は同じかもしれず、その筋から着想を得たのかもしれません。

ダンカン本家サイトにPickup Finderというページがあって、ギターのPU構成とボディ材等を決め、音楽ジャンルと得たい音質の特徴を選択することでお勧めのPUをラインナップから最大3通り推奨してくれます。お遊びに過ぎませんが、ヒントを得たいので試してみました。

私の楽器はSTEP1. Two Humbuckers、STEP2.の3.Bridge TypeがHardtail、4.FretboardはRosewood、5.Guitar Bodyは選択肢に該当がないためNot Sureとしました。音楽ジャンルの選択肢はHard Rock/Metal、Classic Rock/Rock、Pop/Rock、Blues、Country、Jazz、Progressive/Fusionと7種。Rockが3つに跨がりますが言わんことはわかります。要望ということで高出力、長いサスティン、豊かな倍音、太く温かい音、澄んだ明るい音、多様性といった6種のキャラ分けがされています。現状の不満がどこにあるのか、改善したい要素を問うているのですね。

ギターのプロファイルを固定し、音楽ジャンルと要望は7x6の42通り、それぞれ各3種の推奨例を全てチェックしてみました。そこに見る事例では、ネック側にAPH-1を採用する場合、ブリッジ側には基本同じモデルを組み合わせています。音楽ジャンル的にはハードなものではお勧めされません。唯一フュージョン系のウォームトーンで第2選択肢として上げられているところで"Custom Custom"(SH-11)が組み合わされています。

Seymour Duncan Pickup Finderの結果から 1図

SH-11は巻数を増やして、かつセラミックマグネットを搭載した高出力モデルであるSH-5の磁石を、逆に磁力の弱いアルニコ2に置き換えたモデルです。SH-5を"Custom"と呼ぶのに対し、こちらは"Custom Custom"となります。やはりフロントにアルニコ2PUを使うならば、リアもアルニコ2にすべきとの考え方が伝わります。SH-11はSH-4("JB")程ではありませんが14.10kと直流抵抗が大きい。このリアPUはもしかすると私の嗜好に合いそうです。

というわけで表をSH-11を軸に見直してみると、これをリアに据えた場合のフロントのお勧めは11事例に上ります。組み合わせでは"Saturday Night Special"が3例あります。このPUはアルニコ4を使っているのが特徴で巻数を示唆する抵抗値が7.9kと中庸ながらパワーは出ると思われます。面白いのは、本家サイトでネックサイドだけ買おうとすると、このPUはセットで使え!とアラートが出ます。70年代ロックの音を鳴らす決定版と主張し、それには片側では不足だと言うのです。こうした姿勢こそロックだなぁと笑えますね。

Seymour Duncan Pickup Finderの結果から 2図

続けます。SH-11をリアに置く場合のフロントの推奨は、同じアルニコ2の"Pearly Gates"が3例。これもセットで使え!と言ってくる奴ですが、7.3kと少しターン数が少ない。単純に言って、Leeが巻数を増やすようリクエストした事実からすると、これは外して良さそうです。それよりやや少ない7.2kの"Seth Lover"も1例推奨されますが外しましょう。

残りも1例ずつで'59model(SH-1)、P-Rails(SHPR-1n)、AlnicoIIPro(APH-1)となります。SH-1はアルニコ5で7.6k、APH-1がアルニコ2で7.5kと前者が定番、後者はビンテージ系の定番といったところ。私はAPH-1に満足しています。で、SHPRなんですが、P-90とブレードのスリムコイルとでダブルコイル構造にしている変わり種で、HBとしては普通に使え、タップしたP-90はちゃんとそれらしいという、実はずっと昔から気になっていたモデルです。たぶん載っているギターを試奏した経験があったはずです。

数値的にHBなら12.87k、P-90側で7.25k、レイル側で5.6kと、なるほどと思える設定。アルニコ5ですが、HBの数値はLR-10に近いものであることがわかるでしょう。以上を踏まえて、今私には以下のようなプランが念頭にあります。

今、使えねーな〜と感じているリアPUを"Custom Custom"に交換して様子を見る。"JB"には多分戻すことは無いでしょう。で、ものは試しでフロントも"P-Rails"に変えてみる。P-90はずっと好きでしたから。恐らくはタップスイッチが現状のまま両PUに同時作用しても、これならバランスするんじゃないかなと想像します(そううまくいかないって事の方が多いとは経験が語っていますが)。味を占めたならばリアもSPR-1rに変えてみる、いや、いっそのことSPR-1nをリアにして、APH-1をフロントに戻す、などとやってみようかと思案中です。と今日は方針が立ったところまでで夜も更けておりますので終わります。

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