Alusonic Aluminium Instrumentsの4

この話も長くなってきましたので、そろそろ終えようと思います。

3本弾いたけど、どれも甲乙付けがたく優秀。見た目で選ぶ、というほどどれが特別好きというのもない。不安はグラファイト指板のみ。PUは迷うけどシングルコイル型のスタックハムがいいかな、というのが感想。

で、そのPUについて少し書いてみます。

デュアルコイルは、その構造上トレブルが出なくてミッドレンジが強調されます。でも良く設計されており、アルニコ/ネオジミウムのハイブリッドがやはり功を奏して、それらの良いところ取りになっています。もちろんデュアルコイルにビンテージ志向など元よりないので、純粋に高性能なPUを目指せばいい。パワーがあって、ノイズがなくて、帯域内のバランスがいい、そうした仕上がりになっています。理想的。

一方、国内市場を見てか、嵯峨さんはシングルコイル型をリクエストし、それをスタック構造のハムキャンセルPUとして完成させ、搭載してきました。

で、こちらは2ボリュームに変えてきています(そこはリクエストではなく、作り手の提案です)。私はバランサーよりも2ボリュームを愛していますので、それだけで結構気持ちが持って行かれますが、理由がありました。スイッチポットを使いたかったのです。

通常、マスターボリューム、バランサーであれば、ボリュームにスイッチ付きポットを採用しアクティブ/パッシブを切り替えさせます。シングルコイル型ハムキャンセルPUに対し、彼等はハムキャンセルモードとシングルコイルモードを切り替えさせようと、もう一つスイッチポットを載せたかったのです。これが2ボリュームへ変更した理由でしょう。バランサーポットは1軸2連のポットを使いますからスイッチ付きにはできません。

昔の話になりますが、カナダのF-bass、2000年頃までスタックのPUはハムキャンセルの状態でデフォルトでした。スイッチポットをプルするとシングルになる。ところがご存じの通り、スタックハムは、両コイル使用することで位相差で低域が消えます。ノイズが消えると同時に、音がしょぼくなってしまうのです。音量も落ちます。それをアクティブ回路でブーストするんだから「あり」だよね、静かな方がいいもんね、という主張だったのですが、でもどうせフロント・リアはミックスで普段使うよね?だったらシングルコイルで良くね?という声が上がります。

ジミー・コッポロ本人が、彼のショップ(New York Guitar and Bass Boutique)で私に言いました。だからうちのF-bassはスイッチの配線を逆にしてある。ノーマル(プッシュ)でシングルコイル、プルでハムキャンセルさ、と。音いいほうがいいじゃん、みたいな。どうせ普段はフルミックスなんだし…、とは言いませんでしたが。以来F-bassのハムキャンセル解除スイッチは、ノーマルでシングルコイルを選択する仕様になっています。

アルソニックのブリッジ側PU用のボリュームポットがコイルタップスイッチになっており、ノーマルでシングル、プルするとハムキャンセルとして動作するようなのです。これを何故確定情報として出せないかと言えば、配線を見て確認していないからです。

このスイッチをプルすると音が小さくなり、音色的にも穏やかになります。挙動で言えば、スタック・ハムキャンセルの状態です。ところが、通常のシングルコイルの状態で、片側PUだけ生かしたところでハムノイズが皆無なのです。通常ブーンと唸るのに、本当にうんともすんとも言いません。

ですから想像は間違っているかもしれません。ですが、もしかするとPUのノイズ耐性が極めて優秀であると同時に、アルミトップのボディによるシールディング効果も極めて高いのではないかという仮説が立ちます。純粋なシングルコイルでこれほどノイズが無いというのは、それこそEMGくらいのものです。電気の素人ではありますが、何かやってるな、と疑わずにいられませんでした。

もうひとつ。ベースのボディは非対称ですから、低音弦側の長い角と高音弦側の短い角を指でタップしてみると、たいていの場合異なるピッチで鳴ります。長い方が高めで、短い方が低めで、といった感じ。それが、ある1音を鳴らしたときにどう作用するのか知りませんが、アルソニックは両者のピッチが揃えられています。どちら側を叩いてみてもタップ音が同じに聞こえました。材の密度もあるのでしょうが、チャンバー構造の狙いはこれかもしれません。共鳴の均一性と言いますか。考えすぎかもしれないけれど、結構私には印象的な一面でした。

というように、アルソニックの中の人はわかってるなぁと、様々な局面で感じさせられるのです。今後も注目していきたいです。

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