ペダルコンプ for bassists まだ序論

昨日は、PAの居る場所でコンプを使わないという基本姿勢をお話ししましたが、もしかするとその感覚は既に古いかも知れません。今のプロを含めた若い世代のプレイヤー(ベーシスト)とは、もはやずれてしまっている恐れがあります。しかしながら頭の中を整理するためにも正直に書きますし、その過程で更新すべきセオリーが見えてくれば、その甲斐はあるというものですので、話半分に聞いて下さい。あまり機材選びの参考にはならないと思いますが。

で、コンプと共に足元に置かれることの多いプリアンプ/イコライザーもあまり重視はしていなくて、もっと言えば楽器本体に内蔵するプリアンプもブースト/カットを駆使しして音色作りすることに積極的ではありません。やっぱりパッシブの楽器で、そのまま好きな音が出せることを目標にしていて、それを感じ取れるアンプセッティング(足元を含めた)を求めています。

80年代にフェンダーなどを使っていて、指板のRが184と強いですから、いくらポールピースの凸凹で補正を試みようが、基本E線とG線が強く、A線とD線が弱い現象が避けられませんでした。ピチカートなら音量・音色の調整は右手が行えるので均すことができますが、スラップとなると(ピックもか)音量差は拡大してしまいます。力任せではない、綺麗な振動を与えられるような軽やかな叩き方を志しても限界があります。

その補正に、プレイヤー自身がコンプを使うという発想が生まれます。アンプのヘッドルームが狭い場合は、過入力では歪むので音量が上がりません。昔の機材では、どうせ大きな音は潰れるので別にいいや、という判断が多勢を占めていたかもしれませんが、アンプの性能が上がると、そうした「粗」がそのまま出てしまうのを防ぐ必要が出てきました。ダイナミックレンジが上がった、というわけです(ダイナミクスレンジと書かれるのを散見しますが、英語ではdynamic rangeです。で、だいたい色の濃淡の領域を指しますね。音に特化するつもりで書き分けてるんですかね?)。

私はアンプのセンドリターンにラック型のコンプを繫いで、常時コンプレッションを掛けていましたが、そういったことが理由です。PAへの送りは、思い出したのですが、dbx160のアンバランスアウトをアンプへ挿入し、バランスアウトをPAに送っていたような気がします。少なくともVTR収録のあったタレントコンサートでそうしていたのは確実です。セッティングは4:1くらいで指弾きでソフトに弾くとかからず、E線を強めに弾いた時やスラップのプルを微妙に抑えられるくらいのスレッショルドにしていました。基本的には暴れを、ごく控えめに整える程度。

さて、ペダル型の場合、そもそもギター用に作られているものばかりでした。70年代などはサステイナーというジャンルがコンプレッサーと同義だったりして、ギターにロングトーンをもたらすツールといった側面が強調されていました。動作は、設定音量より大きい入力があれば出力を下げ、入力が減衰すれば逆に出力を持ち上げ、いつまでも音が伸びているように聞こえさせる効果を得ました。もうそういった製品はクラシックと言っていいでしょう。ギターの分野でも、もう少し違った製品が求められる昨今かと思います。

私感では、ギター用のコンプはベーシストに向かない → ベーシストは録音機材を流用するしかない → 録音機材の性能をペダル型に落とし込む、といった流れで今日の機材が生まれ、流通しているように見えます。ギタリストが使うペダルコンプも、ベーシストが求めていたような性質のものへ変化した潮流がありそうです。となれば、ものによっては「ギターエフェクター」の中にも、ベーシストが使えるペダルがありそうです。ベース用コンプレッサーは安心ですが、もっと視野を広げて機材選びをしても良いようです。

「録音機材」と書いたものは、乱暴に言い換えればラック型となります。何度も登場するdbx 160などがそれにあたり、ボーカルからドラムまで、多様に使用可能です(直接繋げられなかったりしますが)。しかしそうなると、より高性能でプロ寄りの、というか業務用というか、古典的な名器、どんな商用レコーディングスタジオにも装備されているような、1176、LA-2A、LA-3Aといった型番がその象徴です。それらの動作の仕方や音色の傾向をハードウェアでイミュレートしたペダル型も、とても目に付くようになりました。当然、それらはベーシストが満足できるものでしょう。

所有機材のライトなインプレッションを書くつもりが、話があらぬ方向へ進み出したので、この辺で終わろうと思います。概論はまだまだ続くかもしれませんが、脳内にあるコンプレッサーで想起される様々な事片を惜しみなく出していこうかとも思います。間違い(勘違い)がありましたら何卒ご容赦ください。

明日は、ギター用がベース用に使えない理由を書こうかな。内容を予定しておくと楽ですね。

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