バズを嫌う

本日が初回レッスンとなる方が、購入して間もないフェンダー・ジャズベース(日本製)をお持ちになりました。ベースは初めてではないですが、数十年のブランクがある大人の男性です。

購入時に楽器店で調整をして貰い、自宅で弾くとバズがひどく感じられ、数日後に再度調整のために持ち込んだらしいのです。しかし改善せず、もうすっかり楽器を弾く気力が無くなってしまったとおっしゃいまして、これはせっかく習おうとしてくださったのに大問題だと思い、とりあえずレッスン時間を費やして私の手で調整を試みました。

教室の備品はあまり弦高が下げられない仕様ですが、その分バズは目立たず(しかしハイ起きで音詰まりする箇所は数点あります)、これくらいがいいとおっしゃいます。私は、あまり弦高が高い楽器を勧めたくはなくて、たぶんその楽器屋さんと同様に、低弦高に仕上げてあげたいと思ってしまいますが、むろんバズの発生を嫌うならば弦高は上げなくてはなりません。

実際、測定するとE線G線ともに2mmあって、超低弦高ではありません。ネックは真っ直ぐでいい状態と思います。結構Rがきついタイプ(184Rかな)なため楽々弾けるとは言えませんが、私ならばその程度のバズを容認して弾きやすさを取ります。

弦を緩めネックを外し、ロッドを締める方向へ回してみると固く、緩める方へは楽に回るので、かなり締め込んでいるようです。言い忘れましたが新品の楽器です。お店の方のセッティングでこうなっているのでしょう。

一回テンションの掛からないところまで緩めて、元の位置の45度手前くらいまで締め込み、ネックを戻してチューニングをします。順ゾリとなって弦高は3mmをやや超えるかな、というところになりました。一度弾いてもらうと満足されていました。

私が弾くとなるとうーんと唸りたくなるので、そこからブリッジのサドルをネジで1回転分くらい下げ、2.7〜8mm程度にまとめてみて、どうでしょうと渡しました。ロッドを緩めたネックに近々どのような変化が見られるか、天候も読めませんので不明ですが、一旦はご本人の弾く気になれるコンディションが得られました。

一応再生装置(ベースアンプではなく、電子ピアノ的なものの外部入力)に入れているそうですが、最初それは歪み音ではないかと思いましたが、やはりバズを気にされているようです。小さな音でしか鳴らしていないので、楽器自体の生音がよく耳に入ってくるため、それが気になる原因かもしれません。ヘッドフォンを使ってみては、という提言をさせて頂きました。

また、次回自分の使用している楽器を見て頂き、弦高を理想に持ってきたときのバズの出方がどれくらいかを体験して頂くことにしました。バズは無くすことができないので、と言いたかったのですが、はたと気付きます。

やはりそれが気になるのであれば高い弦高で弾くことは、逆方向への妥協としてありなのかなと。楽器の音色をどのように聞きたいかは人それぞれですので、立場上教える側ですが、好みを押しつけることはできません。というわけで、あまり自分の常識を正しいものと思わないことにして、異なる世界観も受け入れようと思います。生徒さんに、このように言われたことがなかったので良い経験になりました。

ちなみに、以前このnoteで楽器選びのお手伝いをさせて頂いた生徒さんは、在阪のお店でMomoseを購入されました。その方も、手に取った瞬間、え?と思うほどバズが出てびっくりしたそうです。お手紙が入っていて、一番弾き易くセッティングしたので気になるようなら弦高を上げてください、と書かれていたとのこと。実際に弾かせていただくと、私などには理想的ですが、その方には非常識なバズだったみたいです。本日のことがあってからならば、ロッドを緩めたりサドルを持ち上げたりしていたかもしれません。その時は、そのバズが出ない弾き方を考えてみましょう、みたいなことを言ってしまいました。実際、自分ではそう対処しますので。しかし、バズを嫌う人って意外に多いかもしれません。というわけで少し反省しました。


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