JCとは。

Toolというバンドをご存じでしょうか。私は知りませんでした。90年代から活躍している寡作で知られる、CDショップの棚ではヘビメタルかプログレに収納されるようなバンドです。5回くらい来日されフジロックやサマソニに登場し、単独公演も行っているようです。こんなに長くやっているのに、過去一度もその存在に擦ってもいない事実は、ある意味希有な体験です。アメリカに住んだことすらありましたのに…。

そのバンドの2作目から参加しているベーシスト、Justin Chancellor(ジャスティン・チャンセラー)というお名前も、ファンの方には本当に申し訳ありませんが、全く知らずにベーシスト稼業を続けて参りました。ちょこっとYoutubeで検索すると、彼の演奏を「弾いてみた」する動画がめちゃくちゃ出てきます。アメリカ人によるバンドですが、後で加入した彼はイギリス人です。私たちには馴染み深いラッシュのゲディ・リーに近いようなリスペクトをされているベーシストです。

で、今日のトピックは彼や彼の音楽にスポットを当てることではなくて、エレキベースの部品諸々を漁っていたときに邂逅したプレイヤーということで、話の内容は昨日からの流れになります。

ジャスティンはWal mkIIをメインに使用していて、アルバムではPBやMM、あるいは12弦なども弾かれているようです。ところが、数年前にWarwickのベースを検討していたときにチェック済みでしたが、その時には聞き流してしまっていたToolとかJustinとかChancellorとかのワードが急に意味を持って理解できるようになりました。彼のシグネチャーモデルをWarwickが製作し、その紹介動画が2本上がっています。

https://warwick.de/de/Warwick--Produkte--Instrumente--Customshop---Masterbuilt--Basic-Bass-Models--Streamer--Streamer-Stage-II--Streamer-Stage-II-4-Strings--Streamer-Stage-II---17-3377--4-Saiten--Bilder.html

それで、この特徴的なピックアップがNordstrandが彼のために作り、"Big BladeMan"として、現在カタログモデルになっている製品です。話がでんぐり返っていますが、こっち側から私はJustinに出会ったわけです。

キャリー自身が、このピックアップと、それに組み合わせるためにモディファイされたアクティブサーキットを紹介する動画です。

この動画も2017年に公開され、当時は、また新製品作ったんだ!と感心すると共に、プロトの開発に使用されたベース本体のボディ材が推しだったオクメであることで何度もローテーションした動画ではありました。しかしその頃、ジャスティンのために、とか言っていてもまるで気に留めることはなく、彼がピックを取り出して音を紹介するときに、ごめんtoolのベースライン知らないんだ、と照れるのもtool=道具としか聞こえてないありさまで「何言ってるかわからない」でした。

キャリー曰く、当然のことながらWalを意識した音造りに対して、当時鋭意開発中のブレードタイプをMMシェイプに落とし込むアイディアで挑みます。通常、彼はHBPU(ダブルコイル)を作るときに、パラレルで使うのか、シリアルで使うのかを明示した2種類のスペックで用意します。この場合もBig BladeManをシリーズで使う、パラレルで使う場合の音量差を気にかけます。

https://nordstrandaudio.com/collections/4-string-music-man-bass-pickups/products/big-blade-man-4


ソリューションとして、アクティブサーキットをモディファイします。汎用の3bandEQに、ポット類を配線済みで販売するキットバージョンが何種類かあるうちに、知らぬ間にJCという型番が加わっていました。サウンドハウスでも扱いがあります。

https://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/246456/

もうね、そもそもはここから始まったのですよ。JCって何だろう?という疑問。サウンドハウスの商品ページには一切の説明が無く、メーカーサイトへジャンプさせるボタンを押してもトップページに行くだけですから。まぁメーカーの中の商品ページではきちんと説明されてるんですけどね。ただジャスティンの「あの音」のために云々を読んでも、まだ意味わからなかった。全てが繋がったのは昨日・今日のことです。

整理します。特別な$$仕様のWarwick Streamerに積むピックアップ&サーキットはジャスティン・チャンセラーの、それまでのサウンドを継承すべくキャリー・ノードストランドが開発したと。ダブルブレイドのミュージックマンシェイプのHBPUを2個、合わせて特殊な3band EQと組み合わせることで、達成したと。そういうことです。

このサーキットは5ノブ・アッセンブリとなります。アクティブ・パッシブを切り替えられるスイッチ付きのボリューム(500kΩ)、パンポットはアングラウンデッド配線されます。バランサー回路の弱点を解消するアイディアとして知られており、中央で2個のPUがフルパワーにできるのと、副次的には片側へ寄せきっても一方が完全ミュートされない回路です。

残り3ノブはトレブル、ミッド、バスの3bandに対応するわけですが、全てがスイッチ付き。ミッドは帯域切り替えで1kHzかプルアップで400Hzに変更できます。トレブル・バスのノブはプルアップでフロント・リア各々独立してシリーズ配線に切り替えでき、通常はパラレルの設定(ということはタップしてシングルで使うことも可能)。キャリーが神経質になる、シリーズでのボリューム上がりを緩和させるために、トリムポットが用意され、任意にパラレルとの音量バランスを整えることが可能です。

2個のBig BladeManを使用するならJC-3bを活用すべきと案内されていますが、それによってWalの音が出せる、というわけでは無さそうです。JC-3bはあくまでワイアリング・コンフィギュレイションの一例であってプリアンプのコアは変わらないはずですから、これはそのまま2ハムを乗せたベースに利用する価値があります。

何か部品を検討するときって、利便性から、まずはサウンドハウス扱い商品から辿ってしまう癖があり、そんなこんなで見知らぬものに出会うケースが多々あるわけですが、本日のこれはその典型と言えます。

Walピックアップの特徴と言えるマルチコアの構造を取り入れたPUがエンシュージアストによって製作されていますが、いつかMARUSZCZYKの話でも触れたBassculture Walbuckerはその一つです。Walを追っかけてる人ではないんですけど、他にも見つけたので、明日はそっちをやってみたいと思います。

あ、ジャスティンを紹介する動画を作った方がいて、彼のベースをワイ(wai)と思ったみたいですが、イギリス産のウォル(wal)ですのでよろしくお願いいたします。大変失礼ながらウケました。なお2019年発売の13年ぶりとなるToolの最新作も、いずれじっくり聴いてみたいと思いました。


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