ペダルコンプ for bassists まだまだ序論

7〜80年代は、ポピュラー音楽をギタリストが牽引していたかも知れません。ボーカリストが居ようが居まいが、ギタリストがスター(古!)でした。

弦楽器でもバイオリン族はボウイングによってロングトーンが得られますが、ギターはトレモロ(早い周期でピッキングを繰り返す)でもしない限り、一度与えた弦振動が終息するに任せて音量が下がります。これをサステインと言いますが、コンプレッサーをサステイナーと呼んだのは、下がっていく音量を、その分量だけ電気的に底上げする仕組みを持っていたからです。バランスをとるような要領で一定音量をキープしようとするのですね。先に告白しますが、私は電気の知識が高校物理以下ですので、どのような原理で行っているかはわかりません。

で、ロングトーンが欲しいギタリストと、エレキベースという楽器の未成熟さに起因する音量のバラツキを補正したいベーシストとでは、異なるツールが要求されます。ギタリストの需要に応える初期のペダルコンプレッサーは、直接的にはベーシストに受け入れられませんでした。ただし、そうした中でMXRのDynacompは、大胆に音質を変えることができ、新しい表現として一部のベーシストに愛用されます。よく「パコパコする」と呼ばれるサウンドです。詳しい説明を省きますがエンヴェロープフィルターとかフェイザーを使ったような変調したサウンドになります。それらはうねりを与えますが、こちらはもっと静的に、文字通り潰れているのですね。それが妙にファンキーだった。Dynacompの存在は、ベーシストがギタリスト向けの機材に目を向け、中でもコンプレッサーというジャンルに興味を抱くきっかけであったように思います。

コンプレッサーは、入力信号の強さによって動作の仕方が変わります。コントロールできるパラメータに「スレッショルド」というものがある場合、入力がどのレベルに達したら動作するかのポイントを決めることができます。

ギタリストが気持ちよく使えるために、例えばストラトキャスターのシングルコイルから入ってきた音(しかもギタリストはギターのボリュームを常にフル10で使わない人が多く存在します)に対し、弾いた直後の強い音を叩こうと(音量を抑えようと)する時、スレッショルドは相対的には低めになります。同じ設定でハムバッカーを積んだレスポールの信号を入れれば、より強くコンプレスされ、ましてやエレキベース(たとえシングルコイルのジャズベースであっても)の場合ならば、これは事故か?と焦らされるほど圧縮されてしまうでしょう。スレッショルドの調整限界が、ベースの強い入力に適正に働かないとき、ギター用に設計されたコンプペダルだったことがわかります。

コンプレッサーのパラメータは、3個が最小限と考えます。ひとつはスレッショルド、そして音量を抑え込む比率(レシオ)、3つめは音量を下げられた分を回復させる増幅度を決めるアウトプットボリューム(メイクアップとも呼ばれます)。しかし入力感度がギター信号に最適化されていたならば、そのスレッショルド設定がベースにそぐわないものになり得ます。そこでゲインノブがあると助かります。しかしペダル型コンプに備わることは稀です。

ラック型のプロ機であれば+10dB基準のラインレベル対応ですから、インピーダンスの問題で直接入力できずとも、ベースの音量を受け止められます。ペダルコンプで「ラック型に匹敵する」と謳われていても、入力感度がギター用であれば看板に偽りありです。

これらの事情を具体的に商品名を上げながら見ていこうと思ったところで、今日はここまでとさせていただきます。週末にかけて忙しいので連続投稿ができないかもしれませんが、話は終わりませんのでどうぞお楽しみにしてください。

ちょっと余談ですが、我々が高校生の頃、MXRはフェンダー/ギブソンに並ぶような舶来の一級品で、そうそう入手できるブランドではありませんでした。そうした意味で純然たるプロ機でありましたが、代わりに国産のマクソン/ボス(ローランド)/グヤトーンなどの製品が身近でした。私はマクソンがずっと好きで同社のラック型のコンプや往年のt.c.1140風のパラメトリックEQなどを愛用し、今も保管しています。ペダルコンプもマクソンのものは優秀だとみています。で、Dynacompも実は自身で使ったことがありません!音は知ってるけどね



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