ウクレリスト、ベーシスト目線でのアコギ選び

詳細は書けませんがアコースティックギター(以下アコギ)が必要になり、所有していませんので探し始めました。2002年に日本製ヤマハを買ったのですが、震災の時に二竿のCDラックが倒れ、散乱したCDの山に埋もれ破壊されたので、以後持ち合わせていませんでした。

ウクレレは20年以上のキャリアがあって、持ち前の好奇心であれやこれや試してきました。アコギは興味の対象には、あえて置かずに来ていましたので、選定へ本格的に身を入れるのは初めてのことです。

とはいえまだ急な話でして、方針を立てるべく、せいぜいデジマを見たり、Youtubeを検索したりといったところまでです。しかし本日、早朝の所要が済んだ午前から、お茶の水へ繰り出して、午後7時までの8時間以上、そこから電車移動したときの座席と、試奏している間を除き、歩き回り続けて探索したのです。飯も食わず、水も飲まず、トイレへは4回行きながら。なので帰宅した今、疲労困憊のなか記憶を必死に呼び覚ましているというわけです。

料金に上限付きの駐車場に車を置いた後、1軒目は10時開店と示された店にしましたが、アコギ売り場の棟は11時でしたので、まずはクロワッサンとカフェオレで朝食を摂ったのです。オープンすると同時に飛び込んだそのお店では20万円ほどのテイラーを試奏しました。サイド/バックがハワイアンコア、というモデルです。ウクレレ目線というのは、まず勝手知ったるコアでの響きを知ることでした。

以後、独断で、良かっただの悪かっただの、好き勝手を書きますが、なにしろアコギのディープな世界の門を、まだ開いてもいない状態なので何卒ご容赦下さい。あなた様の愛機を生んだブランドの商品をネガティブに書いてしまうかもしれませんが、あくまでもベーシスト、ウクレリストとしてのキャリアが言わせているものとご判断下さいませ。あなたの方が、あなたの楽器選びは正しく行えるのですから。私はといえば、失敗するかもしれませんが、まずは気の済むようにやってみた次第です。

某テイラーは、私の知るコア材らしさが反映されているとはあまり思えず、これは見た目で採用したのかと思うほど、期待に反するものでした。昔、ジェイムズ・グッダールがハワイで製作したアロハというモデルを弾いたときに目から鱗が落ちたものですが、そうした片鱗は伺えません。というのもテイラーは店員さんによれば、エレアコに特化したメーカーとのことで、ラインの音がいかに生っぽいかで評価を得て大きく成ったとのことです。なるほど私の知る、アコギの「鳴り」と違って、線が細い感じがしました。加えて、いつもベースでも話していることですが、厚い塗装の膜が音質に乗っている気がしました。これがどうしても苦手です。

親切な店員さんと少しお話しして、そばにあったコール・クラークを弾かせてもらいました。こちらもエレアコとしての評価が大変高い、オーストラリア産の楽器です。塗装はウレタン・マット仕上げでMTDのような感じ。さらさらです。そして、音はやはりこちらの方が好みでした。材はオーストラリアのものを使っており、たしかブラックウッドだったと思います。いい楽器と思いました。これは新品特価品(それ以外は今日弾いたものは全て中古)。

さて、ここを出て、実は本命と見做していた楽器を向かいの店で試します。売価11万円です。これで済ませれば御の字です。お釣りでエレキギター買っちゃうかもしれません(いつかの記事で欲しいと書いたエレキですが、政府の支援金もいただけそうにないですし、必要に迫られるでも無いので却下されました)。

国産ドレッドノート型、典型的なスプルース/ローズサイド・バック/エボニー指板でありつつ、ラッカーフィニッシュ、もちろんオール単板という、ハイエンド志向のもの。コスパ最強です。そして悪くないです。さらに言えば、ラッカーフィニッシュは、やはり、私は安心です。出音に嫌みがありません。

それで、ちょうどこれの2倍の値段で、ヤマハのオールラッカー、現行日本製の中古が出ており、そちらを在庫する店へ向かいます。11万以上22万円以下、というのが今回対象とする範囲です。事前調査によれば、これくらい出せば、弾きたい気持ちになる楽器を引き当てられるかな、というところです。

話が前後しますが、昨晩まとめておいた、アコギ選びの視座をメモしたものです。1)弾きやすさ最優先:低弦高かつフィットするボディ 2)スケールはギブソン(628mm)は検討するも、それ未満は不可 3)シダートップが好き 4)エボニー指板 5)マホガニーは避ける 6)セドロネックも試す 7)ラッカーフィニッシュ 要チェックメーカーはFurch、Ayers、Dowina、Lakewood、Maton、Taylor、Yamaha、Historyとなっています。

11万円とはヒストリーで、22万円のヤマハとの間に入る上記リストの楽器群を可能な限り試すのが、本日のミッションです。

そのお店でJ-45(ギブソン)を弾かせていただきました。やはり弾き易いです。これでいいや、とならないのは、どうもマホガニーボディの音が購買意欲を掻き立てないからです。以前持っていたことのあるアコギは全てマホでした。古材なら好きなときがあるのですが、ほぼ殆ど現代のマホは楽器材としては避けたいところです。稀に、え?これいいかも、と思うときは、ホンデュラス産だったりします。アフリカン・マホガニーは、どうしても苦手です。足は次の店へ。

ここではフォルヒをまず2本、カッタウェイありとなしです。コール・クラークを実は2本弾かせていただいていて、それもこのような組み合わせでしたが、ここまでで私にはわかったことがあります。一概には言えませんよ。あくまでも仮説であり原則です。アコギ>エレアコ、カッタウェイなし>ありの2点です。続いてテイラーも弾かせていただいたのですが、そちらも同様。つまりコール・クラーク、フォルヒ、テイラーでそれぞれを比較して得た命題です。共通する印象でした。

私のウクレレはみな、パッシブのマイクを仕込んでますが、それほど多用しませんし、その音質にはさほど重きを置いていません。アコギも同様、たぶんラインアウトは不要です。純粋なアコギで、肩を落としていないモデルが、私には楽しく感じられます。

で、フォルヒはたいへん良く、予想通り気に入りましたが、そこで出会ったテイラーは上を行きました。ノンカッタウェイで生ギター、シダートップのローズサイド・バック、18年ものだったでしょうか。一気にテイラーを見直しました。条件リストのようなものを作りましたが、外しているのは塗装だけでしょうか。でも充分古いせいか、それも気になりません。非常に良かったです。

こちらのお店ではとてもお世話になり、同価格帯からヘッドウェイ、エアーズ、コール・クラークも試させて頂きました。それぞれに良い印象がありましたが、自分が買うなら、これらよりもテイラー一択となります。フォルヒのドレッドノート型も、ちょっとだけあるかもしれません。

ここまで4店舗。予定を消化するため、次に行きます。こちらでは99000円のテイラーと出会います。サイドバックはサペリの合板。で、電池は入っているがEQもボリュームもなくてアウトプットジャックのみのエレアコ。これも15年ものですが、非常に良い。サペリはマホではありませんが、トーンは同種とも言える材。強いて言えば新鮮味がありません。先の18年ものの約半額ではあります。10万円でこんなにいいギターが買えるんだと、とりあえず安堵しました。節約するならこれ。

お茶の水を離れる前に、通りがかりで開催中の古書展に立ち寄って気分を浄化します。その後、ふとデジマートを覗いてみると、先の10万円を切るテイラーを売っていたお店には、別で22万円のテイラーが2本ありました。これは触らないでおれないと、再訪します。

そのどちらもが珍しいギブソンスケールでした(それ以外はフェンダースケールと言った方がわかりやすい648mm前後)=シェイプ的にも000サイズですね。1本はシダー、ただしマホサイド・バック、ローズの方はスプルースでした。歯がゆかったです。シダー/ローズだったら即買したでしょう。

電車で大久保に行きました。ここで見たかったものはレイクウッドです(レイクランドと書いてしまいそう…)。ドイツのメーカーでチェコのフォルヒとニュアンスが近いです。興味を覚えた理由はセドロ(スパニッシュシダー)ネックを採用しているからです。私のメインのウクレレ、古林さんに作って頂いたものはセドロネックで成功していると思っています。ウクレレを弾いていて「いいなぁ〜」と感じる要素をギターにも求めています。

レイクウッドを2本とメイトンを弾かせていただきました。後者はソロスタイルのフィンガーピッカー御用達の人気エレアコです。コール・クラークと共にオーストラリアを代表するギター。でも私にはもう一つでした。そのような演奏目的ではないので。ちなみに一度だけテイラーでアンプの音を聞きましたが、それ以外、エレアコも全て生音だけで評価しています。

2本のレイクウッドに大きな差はなく、少し値段の安い方で満足できますが、ブラインドテストでもこちらを選ぶと思います。ですが当初上限としていた22万円を超えてしまっています。その時点でアウトなのですが、このギターをたいへん気に入りました。ドレッドよりも小さいOMシェイプなのがいいです。

想定した予算内に収まるテイラーのノンマイク仕様と、このレイクウッド、価格差は55000円。結構大きいですよね。理性的に踏みとどまるべきです。

実を言えば、お茶の水を離れる前に、あと2店立ち寄っています。そこでベイデンというブランドのシダートップ、もう一カ所で国内ルシアーものを弾いています。ベイデンはローズサイド・バックでないのが不満点。スペックおたく的にではなく、音的に残念ポイント。単純に好みではないというところで。しかし楽器的には十分高価値だと思います。

問題は、ルシアーものの方。これがキラーでした。段違いで上等。店頭ではプライスタグが付いておらず、しかし地味ながら異様な存在感を放っていました。たまらず店員さんに、あれはなんですか?と尋ね、仲間同志で値段付いてたっけ?みたいな確認があって、教えて貰いました。私は、楽器こそ見たことはありませんでしたが、その方のお名前を知っていました。この個体に関しては陳列から間もないようで、ネット情報が一切出ていません。

弾いても別物。ドレッドノート型でスプルース/ローズサイド・バック/エボニー指板と定番ですが、材の良さは一目見てわかるし音が違います。フィニッシュもラッカーであることがありありと感じ取れます。本物のハンドメイドによる妥協なき仕上げ。今日弾いた全ての楽器と出自を異にします。他が霞む相手と出会ってしまった以上、もはや理性は働きません。お値段はそれなりです。

ですから、憧れを払拭するためのレイクウッド試奏は、ある程度効果的でした。でも価格差、誤差とも言える11000円なんですけど。だめじゃん。

大久保から恵比寿へ移動します。ここでもレイクウッドを弾きましたが、そこにあったマホものがタイプでなかったことを再確認して終了、お茶の水へ引き返します(クルマを停めてあるからです)。

楽器街が店じまいを匂わせる頃、もう一度印象を確かにしようと、例のルシアーものを弾かせていただきに参上します。あえて辛口に言えば、ドレッドノートシェイプは、多くの場合と同様、私の体にフィットしないこと。ローE弦が指板の端から落ちがちなこと。その2点は、弾き込んでいくうちにストレスに転じるのではないかという可能性として察知しました。必死にネガティブ要因を見いだしたとも言えましょう。とにかく、今日は買って帰らないこと。これは守ることができました。さて、アコギ選び、これからどうなって行くのでしょう。本気であることは間違いないです。

訪問し、商品を試させて頂いたお店(順不同)
BIG BOSSお茶の水駅前店 別館
en. guitar
Hobo's
TC楽器
イシバシ楽器 御茶ノ水本店 HARVEST GUITARS
ウッドマン
シモクラセカンドハンズ1号店
ドルフィンギターズ恵比寿店
御茶ノ水楽器センター

試奏させていただいたギター
Ayers(1)
Baden(1)
Cole Clark(3)
Gibson(1)
Headway(1)
Ichizo Kobayashi(1)
Lakewood(3)
Taylor(6)
Yamaha(2)

各店の接客担当の方々、たいへん勉強になりありがとうございました。

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