オンボードプリアンプ

STR Guitars TEシリーズのデモ機9本を店頭で試奏させていただきました。今後5弦ベースのメイン機として使っていきたいフォーマットを満たしており、Alusonic J-Specialと共に検討したいと考えています。2000年頃からの状況から、1、2周回って、今こそKenSmithのBSR-Jが欲しいのですが、入手困難を極めています。その辺りも頭の片隅に留めながら選定を進めていきたいと思いますが、いくぶん妄想寄りなのはいつものこと。

TEはtraditional evolutionという意味らしいです。従来LS、CSという24フレットの3ピースネック vs 21フレットのワンピースネックをフィーチュアしておりました。今回はLSを更新して生まれた新シリーズということで、3ピース以上のマルチプライネックが標準です。一時、私はSTRを相当数試しており、実際に1本持っていました(33インチでした)が、いずれも好印象ではあったので期待できます。デバイザーと言えば、ここ数年収集してきたクルーズの木部を製作担当しており、モモセも借りたことがあって良かったですし、バッカスも侮れない、となればSTRは、根本では支持できます。あとはオーダーするならば、その内容を精査する必要があるということのみ。あまりにも自由度が高いが故に。

第一印象として、既存の5弦5本のどれかひとつを、であっても十分検討事案になりますが、ひとまず決定的な不満を上げるとしたら搭載されるアクティブサーキットに尽きます。Aguilar OBP-3は、その分野の1、2を争う人気機種でありながら、私には苦手という他ありません。あれはエフェクターです。昔EMGを積むとEMGの音になる、と言われたのと同様、OBP-3の音になってしまい、その音が嫌いである以上、使える場面がありません。AguilarではOBP-1だけ、辛うじて許容できる、かもしれません。

というわけで、交換するなら何がいい?というところで経験談を喋ろうと思います。2ボリューム、1トーン、3バンドEQの6つのノブが並ぶのは、まんまF-bassのVFに影響受けていると苦笑してしまうわけですが、VFは好物ですから歓迎します。手放すお知らせをしたクルーズの5弦もオーダーでそのように指定しています。あれはクルーズプリで2バンドだったから5ノブか…。でもアウトプットジャックもトップに持ってきていて、フリップスイッチによるアクティブ/パッシブの切り替えですからコンセプトは一緒です。

避けたいものを言うと、ひとつはグロッケンクラングかな。優秀なメーカーで信頼していましたが、あの独特な提案は受け入れられません。その独自な帯域設定が、欲しい音色に近づけるツールにならないのですね。

他を挙げていく前に、概念的なところで説明すると、オンボードプリアンプの一般的なネガになるのですが、つまみ上でフラットの位置の音が駄目になってるケースがあります。ブーストしていかないとパッシブよりも元気がない。ほとんどがそうだと思っています。インピーダンスを下げる目的でアクティブにしているのに、設定上フラットにすると、むしろダイナミックレンジが低下し、元来の荒々しさが失われます。ブーストすればマシになるものありますが、太めの線で潰れたような描かれ方になってしまい、演奏の繊細さが報われません。そうしたものは全部パスして、むしろパッシブで使います。

電気知識はまるで素人レベルですので、間違ったことを書いてしまうかもしれませんし、それによって名誉を毀損する恐れもありますが雑談として受け止めてください。EQの回路にバクサンドール型と言われるものがあって、おそらく大半を占めるのだと思いますが、これがオンボードプリアンプに不適切ではないかと感じます。帯域設定がどうであれ、動作の仕方が音色作りに向かない。この形式では、持ち上げた帯域の反応が変わってしまう印象です。例えばミッドをブーストすると、アタックのスピードとかサステインの仕方とかが変化し、弾き手にとってのフィードバックが異なってきます。一言でいうと演奏がしにくくなる、みたいな現象です。回路原理で一括して論じてしまう不勉強をおゆるしください。みんな「例え」だと捉えていただいて結構です。

一方、と言いますか、フェンダーアンプのトーン回路に範をとった、具体的にはバルトリーニTCTファミリーがそうですが、あれは楽器的に正しい気がします。全部下げると0になる。そこから各々の上げ下げを相互に影響させながら聴感で良いバランスを形成する。それは、あまり反応を変えないものだと感じてきました。今まだTCTのみなのでしょうか。それをアレンジした2バンドとかもあったような気がしますが、想起する機種はありません。ここで重要なのは、全ての帯域がブースト設定ということです。

相当以前に、Cellinderというメーカーが乗せていたオリジナルのプリアンプは良かったです。プリ単体で購入してパッシブのジャズベースをアクティブ化したこともあります。その楽器を手放して、ずっと後にもう一度買い直した経緯がありますが、その時点では抜かれていました。はっきり覚えていないのですが独特の動作をし、スムースな反応と現場対応のしやすさが好印象の2バンドでした。

F-bassのプリアンプも確かブーストのみだった気がしますが、全部下げきるとユニティ、という点でフェンダー型の変化ではありません。相互に作用するというより帯域が分かれていた気がするのでバクサンドールの亜種かもしれません。こちらもアクティブにすると少々元気がなくなるので、各帯域とも少しずつブーストして使うものと捉えています。

書いているうちに実名がどんどん出てきましたので、実際使っての印象の善し悪しを列挙します。もちろん一個人の嗜好によるものです。ケンスミスのは、実はあまり好きではなかったです。ノールも外しました。デラーノも好きではありません。アギュラーがOBP-1以外だめで、バルトリーニがTCT以外だめ、サドウスキーは好き。ジョンイーストも好き。2バンド、3バンドが混ざってますね…。ダンカンは3バンドなら使ったことがありますが良かったです。パイクオーディオは良かったです。EMGも悪くなく、ノードストランドは2バンド・ブーストのみのタイプが良かった。使ったことがあるのはこんなところでしょうか。戸田さんのプリアンプも良好でした。

EQの話をちゃんとしたくなってきたので明日に譲りますが、ここまでをまとめると、仮にオーダーするSTR TEの仕様を煮詰めるならば、TCTかダンカンの3バンドかなというところで、たぶん前者が面白いでしょう。本日はここまでに。



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