ベース用シングルコイル型単体ハムキャンセルPU…
フェンダー・ジャズベースに交換可能なシングルコイルシェイプの筐体に複数のPUユニットを詰め込むことで、単体でのハムキャンセルを可能とする商品は、実際多々あります。
昨日紹介したとおり、3種類の構造が考えられます。1インラインスプリット、2スタック、3サイドバイサイド。本稿では便宜上このように呼びますが一般に知られる用語は様々です。
1はもちろん改訂版プレシジョンベース(1957年)で登場した、マイクを高音弦用、低音弦用に分離することでノイズ成分の相殺を可能にした画期的で普遍的なノイズキャンセルデザインを、ジャズベース用の片側1個の内部に押し込んだモデルです。
2個のマイクは並列にも直列にも接続可能で、それぞれの結果は大きく異なりますから、マイクそのものの設計が接続順を視野に入れて行わなければなりません。この手のものは、70年代よりDimarzio、Bartolini等、アフターパーツメイカーの登場時より、大きなデマンドによって商品化されました。後進のNordstrand、Aguilarを始めとする現代的なショップにおいても必ず用意される定番と言えます。
同メイカー内のシングルコイル、多くは60sを志向したモデルがフラッグシップを務めますが、それと較べると、やや大人しくなってしまうという共通の印象を得ます。入念な設計によって、シングルコイルに迫る、と謳うクリエイターもいるくらいですから、作り手にとって、まだそこまで至っていないという事実を認めているようなものです。
しかし今は、アクティブサーキットが底上げします。それが普通になった時代には、むしろハムキャンセルのメリットしかない、と言えることでしょう。パッシブの楽器に付け替えた結果は、繰り返し申しますが、私は満足しませんでした。
2のスタックは、はっきり構造上の問題点が大きく、いかに工夫しようが出力は半減し、病院のベッドに寝ているかのように生気が失われます。弦振動の入力を打ち消し合っているので、これは仕方がありません。ですからアクティブサーキット有りき、となります。音は綺麗だと思います。
F-bassのBNシリーズはスタックコイルですが、ハムキャンセルモードの方をオプションにしており、スイッチポットのノブを引っ張った時に使用できます。通常はシングルコイル作動であり、これはもう、ノイズキャンセルが必要な場合の緊急手段扱いです。Nordstrandのホットスタックを使用した時も、結局シングルで使っていました。悪く言うつもりはありませんが、電気的なサポートによって輝ける方式であることは否定できません。
スタックで唯一、認めうるのは、そもそもシングルモードに切り替えられず、未来永劫ハムキャンセルで使用させ、もちろんアクティブ前提になりますが、この確信的な採用こそAlembicと思わされました。ワイヤまでは存じませんが、バータイプのセラミック磁石を使用し、そもそもの出力がかなり増強されていると思われます。拾う信号は、低域の損失を感じさせない、フラットかつリッチなもので実際パッシブで鳴らしても使える音でした。
不思議ですね。弦の話をするとニッケル弦が苦手なのですが、Alembic純正弦はそうであるにも関わらず、非常に好感が持てました。PUにも同様のことが言えるのでしょう。どんなに高価であっても、デメリットを克服する説得力には納得するほかありません。
3のサイドバイサイドは、私の知る限り、Joe BardenとLaceだけです。Laceは弾いたことがありません。Joe Bardenは経験があり、「普通に」良かったです。そして、今探しています。手許にそれを搭載したいベースがあり、市場に流れてくるのを網を張って狙っています。5万円近く出せば新品が買える模様ですが、そこまでしたくはありません。PU交換は賭けなので。
ソープバーシェイプであれば一般的な、このサイドバイサイドをシングルコイル筐体に収められない理由は、もちろんポールピースが2列に並べられるスペースが無いという単純なものです。ですからバーマグネットは必須。S.DuncanのホットレイルのようなスタイルはJB用でも可能と思いますが需要がないので製造されません。ギターの側で成功を収めたJoe BardenやLaceが、気紛れにベース用を提供してくれていますが恒久的な製造はしていないらしい、という不遇を託っております。
サイドバイサイドのダブルコイルを直列で繫げば、直流抵抗が増えてハイ落ちしますが、それでも両者の塩梅を等分にしないとか、ギター用のハムバッカーで培われた知見を投入すれば解決可能と思うのです。別のところで理由を書いたかもしれませんが、並列接続を、私は好みません。またハムバッカーならば、黙ってソープバータイプを付けておけ、と突っ込まれそうですが、幅の狭い磁界で拾う方がフォーカスされた繊細な音になります。キャラクターはJBのままでいて欲しい。(続きはまた明日)
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