見出し画像

ザ・ラスト・デイ

昨日は結成から18年所属していたバンドの解散が決まり、最後のステージでした。全期在籍はトロンボーンの方とベースの私のみ。様々な紆余曲折を経て、コロナ禍で休止した以降は編成を縮小して7名とするものの、再稼動後の13ヵ月間、ベストメンバーで送る喜びと実りの多い日々でした。何事にも終わりは来るものですから、悔いのないパフォーマンスを見せられるよう心を落ち着けて臨み、やりきることができました。

終演後は打ち上げに参加しました。その19日前には全く同じ会場で新年会を催したのですが、まだバンド解散は知らされておらず、と言っても不穏な空気が背後にあることを察知していましたので、先行きのわからぬ不安をそこはかとなく共有する中での宴会でした。それに較べると、昨夜は全員が状況を受け入れた末のすっきりとした気分で席を共にし、別れ際には感傷的な空気に包まれましたが、これもまたアルコールのせいかもしれません。

私はと言えば、このラスト・デイに新しいベースを投入しました。黒澤楽器店のプライベート・ブランド、J.W.Blackの5弦です。これも4弦しか作られていなかった発売当初は20万円台でしたのに、今や新品の5弦だと40万を超える金額になってしまいました。かつてSugi GuitarsのOEMだと噂されていたのですが、実際はそうではないらしく、長野産とは言われておりますが、どこなんでしょうね? T'sさんぽいフィーリングではありますが、私は事実を存じません。

3〜4年前、どうにもこうにも幅の狭いネックの5弦ベースが市場にないと嘆いていた渦中に、ノーマークながら出会ってしまい、その瞬間の在庫される全個体を試してベストワンを購入しようと全国行脚を決行していた際、黒澤楽器のとある店頭で、その趣旨を話すと試奏を拒まれた一件から百年の恋が冷めてしまったのでした。

あの頃、材の組み合わせが各種あり、量が多いのはアルダーボディ&ローズ指板でしたが、メイプル指板とアッシュボディを掛け合わせた4タイプが存在し、かつローズもマダガスカルとブラジリアンがありました。もちろん重量も4kgを中心に軽め、重めと幅広くあったのです。時期的にコロナ前の発注であるのは明らかで、なんならローズウッドショック以前かもしれませんから、今にして思えば幸福な時代でした。

アルダー/ローズならば、私の好みはマダガスカルに決まり、と弾いてみても確信しながらプレミアム価格が痛かった。また、汎用性という点でアッシュ/ローズがベストという持論から、唯一合致する個体が存在し、なおかつそれが最軽量でしたから、理論的には大本命なのに、両者の間で揺れてしまい、打開するきっかけになるかと全個数チェックを目指しました。

しかし、だったらマダガスカル買ったらいいじゃん、と店員に言われ、そちらに在庫のインドローズ指板の1本を弾かせて貰えなかったことに臍を曲げ、誰がJWBなんて買うもんか!と踵を返したのが事の顛末です。

noteを続けてご覧いただけている方には、その後の変遷をご存じでしょうが、結局dragonflyの幅広かつ分厚いネックに見切りを付け、こちらに買い替えました。中古の出物があったためです。もう十分に数をこなしていたから「はずれ」というものは考えにくく、ラッカーフィニッシュに使用感が少なからず現れていても、昨今の相場観からすれば妥当な値付けに思われたため、躊躇わずに購入しました。

資金繰りの段取りが悪く、本来だと年頭から使ってこれたはずなんですが、結局現場最終日に遅ればせながらの導入となったわけです。が、これが非常に良かったです。アルダー/ローズ系の60sっぽいジャズベースは4弦を度々使っていて、その音の評価もまずまずでした。JWBはバウンドネックのルックスから想像されるCBS時代の音色傾向を確実に持っていて、私自身の一番好きなトーンとも言えるカテゴリーでした。情報を共有する上でわかりやすい例えを使えば細野さんぽい感じ。坂本龍一さんの『音楽図鑑』収録の"Tibetan Dance"を聴いてもらえば伝わるかと思います。

足元はmesaのバッファーからエフェクトループでTaurusのコンプを薄くかけてWeed modのアーニーボールボリュームペダルからリターンしてアンプに送る最近のセットですが、竿がパッシブなのでアトリエのm-boxをベース直後に挿入しました。会場のアンプが1x15でローが膨よかなため、トレブルを少しプッシュしています。こうして出てくる音が、大いに発想をインスパイアし、普段とはアプローチの異なる演奏を引き出してくれました。メンバーは、私が最後だからやりたい放題暴れたと思っていたみたいですが、新しい楽器が要因です。

中古楽器のコンディションとしてはハイ起きがあって、新しい弦に張り替えてからの調整を自身で行うだけでは行き届かず、フレット摺り合わせは、ハイポジションのバズを消すためには必須です。だとしても音色の良さのみならず、やはりネックのグリップが完全に好みに合うことに尽きます。弾き易い。厚みはある方で、幅が狭い、つまりネック上での弦間が狭いです。ブリッジは18mmと珍しくもないのですが、幅広ネックのままでは私は好きになれません。スリムでないと。全国行脚で確信していましたが、その予想を裏切りませんでした。

次回ステージでこれを使うのは、たぶん3月になってしまいそうです。演奏の機会が激減していますが、まだまだそこで何を見せるのか、突き動かされる欲求が耐えていないことを感じます。あらためて現役続行を宣言します。

撮影はXperia5ivのカメラ デジカメに匹敵するいい写り! 加工してますが…


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?