DAPとMNPの話

色々な思惑が絡み合って答えが出しにくい問題について、書きながら整理していこうと思います。多弁にならざるを得ないので数回にわたる予定です。今日は発端から。

私の日常は、元来マイカー移動中心で公共交通機関を使う機会は滅多にありませんでした。車内ではFM番組を聴き、相変わらず買っているCDのコンテンツをアウトドアでは聴きません。徒歩の時間が長いことがわかっていると2017年に購入したDAPを持ち出し、バランスケーブルでの有線イヤホンを使ってAIFFファイル(CDからMacへの取り込みは非圧縮で行っているため)を再生していました。

DAPはONKYOのDP-S1Aというモデルで、当時中々音が良い機種、かつ4万円弱とコスパも良しという評価でした。バランス端子があるのが良かったですね。これが初体験です。アップコンバートの音質向上もはっきりと知覚できました。

ただ使いやすくはないです。microSDカードスロットが2基あって、公式には512GBまで容量を増やすことができるものの、ファイル数がそこまで多いと選曲がいちいち面倒くさい。タッチパネルですが表示小さいし。利点は音の良さと容量の大きさ、それ以外は不満、というモデルでした。

コロナ禍による生活スタイルの変化によりマスク着用で電車に乗るというのが、私にとっては二重に新スタイルとなり、有線イヤホン装着は眼鏡人であることも加えて甚だ厄介でした。折角良い音で聴けているのに、Bluetoothによるワイヤレスイヤホン接続はクォリティを下げるだけと敬遠していたのだけれど、偏見を捨てリーズナブルな価格帯で満足いくものがあれば導入もやぶさかではない、という気分になりました。

結果FinalのZE3000を購入しました。メルカリで未開封品を1万円ちょっとで買えました。機種選びに際してはヨドバシで数機種の試聴を行いましたが、Finalを除いては5万円近辺まで予算を割かないと不満だらけ、といった市場において、普通に買って15kほど、というこの機種は滅茶苦茶お勧めできます。有線のシュアを持っているけど、こっちの方がむしろ良いくらい。ちなみに常用していた有線はWestone W10と2万円以下ですが、ベストだと思っていました。むしろこんなんで十分。

で、ZE3000はiPhone(11pro)でも電車や街歩きで使って不満はありませんでした。ストレージは最小の64GBなので基本的には直近で買ったCDを都度転送しておくような使い方。ONKYOへはiTunesのライブラリは全て移植している状態です。その日の通勤でという限定的な試聴時間では聴くものを絞ることでルーティンは守れていたのです。

それが崩れたのは、iOSを17にアップデートしたからです。Macの方を相変わらずの10.14(Mojave)で使わざるを得ない環境でiOS17は、これで両者の関係が断たれました。不思議と写真はファイル転送ができパソコンへの保存が可能ですが、iTunesで同期がとれなくなり、直前まで入れた楽曲Fileのみしか、もうiPhoneで聴くことはできません。iCloudを使うなりすれば可能かもしれませんがストリーミング再生をしようとは考えていません。

従ってZE3000とiPhoneの組み合わせは自然解消となり、使いにくいDP-S1A復活となりました。で、あれから6年経っているのでDAPを更新してみよう、と思い付き、調べてみると本当に隔世の感がありました。とんでもなく進歩、というか変化していたのです。

今世にあるDAPは、つまるところAndroidスマートフォンから音声通信部分とカメラを取り去ったアイテムに成り代わったのです。スマホ同様のチップが載り、アプリで音楽再生を行う。そしてその主流はサブスクのストリーミングでした。当然でしょう。CD、もうみんな買わなくなっていますものね。私はその波に乗るどころか、その存在にも気付かなかった、というか見て見ぬふりをして置いて行かれたようです。

そして、DAP、というより世の音楽再生の主流は、もはやスピーカーを鳴らすのではなく、ヘッドフォン/イヤホンによる、という実態が趨勢となっています。もうびっくり。めちゃ、パーソナル化進んでるやん!?

まだ古い時代の属性に支配されており、というかはっきり求めていることは、自分の買ったCDを繰り返し良い音で聴く行為なので、旧態依然としたPCからのファイルコピーにより、DAP内にストックしたいと思っています。そこから、その時の気分によって手早く次のトラック(というかアルバム単位で聴くんですけど)をプレイできることが理想です。

iTunesをライブラリーとしてメイン使用している関係でiPhoneとの親和性が高いのは当然ですが、なにせメモリーを追加できないという大問題があり、64GBならAIFFでは多くてアルバム50枚程度でしょうか、入れられるのは。

音質への要求はさほど高いものではありません。ZE3000やW10などで満足しているくらいですから。音源もハイレゾである必要はありません。ただし先述のようにアップサンプリングとの差分を知覚できるくらいの能力が欲しい。

ところで、音が劣化すると思っていたBluetooth接続にもプロトコルやコーデックに進化があって、思いのほか良い音だった事実には、アウトドアでの視聴に、もやは有線は使わないと舵を切れるまでの意識変化がありました。

古いDAPとはSBCでやり取りし、iPhoneではAACになっているはずです。結果スマホはDAPに負けていない、というかそれらに、私は優劣を感じず、どちらも満足しています。ノーEQで、ただファイルを再生したときに、ちゃんと聴きたい音になっています。

ところがZE3000は潜在的に、その上を行くAptX Adaptiveというハイレゾと低遅延を両立させようとするデコーダーを持っています。おそらくそれが利用できれば、より音質は良くなるはず。折角ならそこを目指そうと思いました。いえ、音質向上に買い替えの動機があるのではなくて、DP-S1Aが使いにくいからです。とりあえずお気に入りのイヤホンが最大に活かされるDAP探しが始まったのはこの時です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?