ペダルコンプ for bassists その14 元所有機

いらん、と言うとるのに買ってしまう、それがペダルコンプです。昨日は現時点での所有機を紹介し、それで終えても良かったのでしたが、記事が好評な理由を考えるに、みなさん個別にインプレッションが欲しいのだろうと思い至り、手放してしまった機種についても簡単ではありますが語っておくことにします。

購入し、実使用し、その結果売却する、という流れは、一義的にはそれを好まなかったと解釈されるのが自然ですが、エレキベース本体の履歴もそうであるように、決してそれらに不満を持ったためではなかったことを認識しました。それどころか、以下のほぼ全ての機種について、縁があれば買い戻したいとすら思います。それぞれに良かったし、常にその選択は真摯なものであって確信を抱いての購買行為でした。

では何故譲渡することになったか。それは個別に理由があったろうし、多くは何らかの資金調達であったことでしょう。それが優秀で需要が高い場合には、より熱意を持って迎えてくれる次のユーザーに手渡すのが、その機材においても有効利用される可能性が広がります。私はこれまで、あまりコンプレッサーを必須アイテムとしてこなかったため、無駄に所有しているという自覚も少なからずあって、使用して理解が深まれば「もういいかな」という気持ちに支配される傾向は認めざるを得ません。ですが好奇心は強い方です。

前置きはこれくらいにして、各機種の印象を思い出せるままに書いていきます。入手時期は正確に覚えておらず、概ねその機材が生まれた年代順ではないかと思いますが、記述する流れに意図はありません。

T-Rex Squeezer
T-RexはComp-Novaを今でも持っていますが、Squeezerを使っていたのはそれ以前のことです。真空管内蔵ではあるものの圧縮方式に利用されてはおらず、アウトプットボリュームをゲインするためのデバイスです。それによって確かに艶っぽさを加えられた出音に価値を見いだすことはできました。フルコントロールできるので求めるコンプ効果を設定することができ、もちろんそれが魅力で買ったのですが、ノブのトルクが軽く何かと動いてしまって安心して使うことができません。Markbassのようにノブが奥まっているとか接触しにくいレイアウトだったら良かったのにと思っていました。コンプの動作は優良で、かつ真空管デバイスの付加価値が乗るにもかかわらず、カツンと前へ出る音というより、オケ馴染みの良い沈み込む音造りには、積極的に使用したいとはなりませんでした。

CAJ V-comp
これも真空管搭載でT-Rex同様、メイクアップに使っています。コンプは光学式。本機は割に良い方向へ音を変えてくれ、通すだけで前へ出る感覚はありました。ラインレベルに設定できアンプのセンド/リターンに使用できるのがカスタムオーディオらしさです。そうした活用法を含め、アンプの出音を上質にしたい向きにお勧めできますが、ならばアンプヘッド自体に求めた方がいいかなと思いました。別に足元に置くコンプでなくても、と。

KATANA SOUND 青線
国産ではUrei1176をあからさまに意識した最初の機種ではないかと思います。某プロベーシストが良かったと語っている現場に居合わせ、興味を持ったために試奏無しに購入。ところが当時使用していたアクティブのベースではどれもスレッショルドを下げてもコンプレッションが強くかかってしまい、そのままで使えるとは言えませんでした。プリアンプ類を前段に入れて出力を抑え、コンプへのゲインを相当下げないと求めるコンプレッション設定にできませんでした。同じように感じる同朋も居たようで、メーカーにパッドを入れてもらったという話も聞きます。そんなわけで、惜しくもギター専用と判定させていただきました。これらの印象は製品ローンチ直後のもので、現行品がどのようになっているかは存じておりません。品質と性能は優れて高かったです。

FMR ARC(前期型)
リアリーナイスコンプレッサーでお馴染みのFMRが後発のモノラル機PBC-6Aをペダル化した機種でした。何故廃番にしたのか解りません。これは良かったです。実質ワンノブオペレーションでコンプの掛かりを決めます。スレッショルドと原音ミックスが連動する仕組みだったと思います。コンプの効きを強めるほど原音比率が高まり、軽く掛けるコンプなら原音を下げる、みたいなギミックだったと記憶しておりますが、非常にそのアイディアが有効でした。コンプレッサーはソースの音量を一定範囲に収める目的で生まれていますが、その活用によって実現する「音が太くなる」にフォーカスしており、DIアウトも備えることから、足元これ一台という環境で仕事する機会が少なくありませんでした。新品購入時の出費でほぼ売れたコスパ最高の名品。原理はコンプだけれど、コンプレッサーとして使う、という発想の製品ではないです。

Inner Bamboo electron U-II(B-IIとのカップリング)
私は同社のプリアンプと合体させた2個1筐体のモデルを買ってしまったため、却って持ち出す機会を減少させました。ベーシストの設計ということでサイドチェインにフィルターを掛ける仕組みを内蔵しており、納得できる音造りが実現します。プリアンプも優秀でスペシャルな音がしました。真空管は、音色に付加価値を与えたことを示唆する記号にすぎず、実態は歪みと周波数レンジに劣化を与える現象によってノスタルジックな感傷を誘っているに過ぎません(嫌いではありませんが信仰はありません)。本機は、確かな設計に異常に吟味されたパーツのみでハンドメイドされる逸品であるため、特性も優秀に違いなく、色付けと言うとネガティブに聞こえるかもしれませんが、スタジオ機器などみなそうであり、はっきりとした製作者の夢想が伝わってくる熱い製品でした。主張の無いものに存在価値はありません。言っているとおり、究極のコンプペダルであろうと感じます。

dbx MC6
繰り返し述べているとおり、20代に常用していたdbx 160XT(合計3台買っています)のペダルバージョンとして購入しました。が、テーブルトップと呼ぶのが正しく、ギタリスト/ベーシストの足元に置かれることを念頭に置いた設計ではありません。昔は結構これをボードに組んでいる方を見かけましたが、プラスチック筐体のもろさ故か、フォンジャックを受けるプラグなどがウィークポイントで、やはりロードでの耐久性には欠けるようです。掛かり方は良かったので、やはりソリッドな筐体に押し込んで販売して欲しかったと思います。

以上6機種については確かに所有していたことを記憶しています。まだあるかもしれません。

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