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超コンパクト憲法レジュメ(人権編)

0.このレジュメに関して


 初めて憲法を学ぶ方にとってこのレジュメは少し説明不足に感じるかもしれないが大まかな概略を掴む程度の気持ちでこのレジュメを消費してくだされば幸いである。
中級者・上級者(法学部生等)にとっては今まで覚えたこと、理解したことの確認用に使っていただければ幸甚である。
【 】の中に書いてあるのは、その章に関連する判例(事件)名である。参考までにいくつかこのレジュメでも紹介している。しかし、よりアクティブな学びの方が学習効率が高いことから、判例百選など判例集をもとにあなた自身が当該判例及び気になった判例を調べて頂きたい。
また、このレジュメは事実を確定するものではなく、あくまで筆者の理解を基礎として成り立っています。ですので、誤っている点、改善すべき点があればご教授願えればと思います。

1. 憲法の分類に関して


 まず、憲法には大きく「実質的意味の憲法」と「形式的意味の憲法」に分類できる。また、実質的意味の憲法は「固有の意味の憲法」と「立憲的意味の憲法」にさらに分類できる。
 それぞれ説明していくと、「実質的意味の憲法」とは、それが成文の形で、つまり「〇〇憲法(典)」(ex.日本国憲法、アメリカ合衆国憲法)といった形で存在するか否かに関係なく、国家の構造・組織及び作用について定めた規範(←規範とはルールのこと)を指す。次に、「形式的意味の憲法」とは、憲法(典)という特別の形式で存在するもののことである。さらに、「固有の意味の憲法」とは、国家の基本法のことであり、国家が存在すればこれもまた存在する。最後に、「立憲的意味の憲法」とは、国家などの権力保持者による権力の濫用を阻止し、国民の権利を保障するという立憲主義の考え方に基づいた憲法のことである。(←重要)

2. 人権享有主体に関して


 人権享有主体とは、憲法に規定されている権利(人権)を持っている(享有している)モノ(主体)である。このことについては、日本国憲法の第3章の表題が「国民の権利及び義務」と定めており、一見すると日本国民に人権享有主体性を限定するかのような外観をとっていることから問題となる。この点、法人(会社など)や外国人などにも人権の性質上可能な限り人権享有主体性を認めるのが判例・通説である。性質上不可能の例を挙げるとするならば、例えば、生存権や選挙権などは法人には保障されないし、また被選挙権や入国の自由などは外国人には保障されない。
【八幡製鉄事件、マクリーン事件、森川キャサリーン事件参照】

【八幡製鉄事件】
 〈事案の概要〉
 1960年3月に八幡製鉄株式会社の取締役が、同会社名で自由民主党に対して政治献金を行った。これに対して同社の株主Xが損害賠償請求をした。
 
 〈判旨〉
 「会社が、納税の義務を有し自然人たる国民とひとしく国税等の負担に任ずるものである以上、納税者たる立場において、国や地方公共団体の施策に対し、意見の表明その他の行為に出たとしても、これを禁圧すべき理由はない。のみならず、憲法第3章に定める国民の権利及び義務の各条項は、性質上可能なかぎり、内国の法人にも適用されるものと解すべきであるから、会社は、自然人たる国民と同様、国や政党の特定の政策を支持、推進しまたは反対するなどの政治的行為をなす自由を有するのである。政治資金の寄付もまさにその自由の一環であり、会社によってそれがなされた場合、政治の動向に影響を与えることがあったとしても、これを自然人たる国民による寄付と別異に扱うべき憲法上の要請があるものではない。」

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筆者は法科大学院生であり、また闘病生活をしております。そのため記事の更新頻度は良いとはいえません。しかし、あなたが応援してくださるのであれば、精一杯その期待に応えたいと思っております。