夢に蒔く種

画像1 ハッピーエンドは物語りの死だと言ったのは誰だったか。物語は文字通り言葉で語られるものだ。
画像2 それは一日の労働が終わった就寝前の、心安らぐわずかな時間に、経験豊かな年長者が幼子に話して聞かせるもの。夜、おさなごのまぶたはすぐ重くなる。
画像3 半分眠りながらも続きをせがむ幼子に、年長者は語る。「そうして王子様とお姫様は幸せに暮らしましたとさ。おしまい。」わぁ良かった。幼子は安心して眠りにつく。年長者は微笑みながらそっと布団をかけてやる。だが、おしまいと言った瞬間、王子と姫の未来は断ち切られてしまうのだ。
画像4 ハッピーエンドに続きはない。そんなのバッドエンドではないか!と王子と姫は憤慨する。こんな横暴が許されていいわけがない!我らの未来を返せ!
画像5 勇敢な王子と姫は、家来たちを連れて新しい未来を探しに未知の世界へ旅立ってゆく。誰か、誰か我らの未来を創ってください!
画像6 もちろん彼らの声はヒトには聞こえないから、こっそりと夢に潜り種をまく…我らの未来を紡いでくれるように。形を変えた新しい王子と姫と魔法使いと家来たちが活躍する物語を。
画像7 そうして大勢のヒトの夢にまかれた種は芽を吹いて、たくさんたくさんの物語が生まれてきたんだって。勇敢な王子と姫は、今でもどこかで夢に種を蒔いているそうだよ。おしまい。…おっと、それは言ってはいけないね、また明日。
画像8 (写真は、八千穂高原の初夏の森)

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