「役に立つ」ってどゆこと? 【スナックぱおぱお開店5日目】

以下は先日のぱおぱおのまとめです、ぱおぱおで話されたこと以上のことは書いてありませんので、読むのだるいわ!って方はぱおぱおを聞いて下さい!私も読むのだるいです。

今回は役に立つってどういうこと?をテーマにおしゃべりしました。「役に立つ」の英訳をpragmaticにしたのは、前回・前々回で常識とは何かについて考えた際の、ある常識が「役に立つ」=「有用である」ということは、その常識の客観的な「正しさ」を担保するのではないか?という話が念頭にあったためです。つまり今回はテーマ設定の時点で、真理判断の基準として「役に立つ」ということを問題にしたいと考えていました。しかしそうは言っても、私たちが日常的に用いる「役に立つ」という言葉は、より広い意味を持っています。必ずしも真理判断の基準としてのみテーマとなるわけではありません。そのため、大隅先生のご発言なども参照しつつ、私たちが日頃使っている「役に立つ」という言葉一般を問題にしました。

「役に立つ」という言葉は、それが明示されているかどうかにかかわらず、常に「何の」役に立つのか、あるいは「いつ」役に立つのかという前提のもとで成り立っています。例えば「基礎研究は役に立たない」という言明は、「直近の産業化」を価値とする前提のもとで成立しています(これ自体議論の余地がありますが、ひとつの例としてお受け取り下さい)。前提が異なれば、帰結も必然的に異なります。あるものが役に立つのか立たないのかという議論は、「役に立つ」という判断をいかなるパースペクティヴ(観点)のもとで捉えるかという問題に還元されるのです。「何の」を規定するパースペクティヴは実に多様であり、さらに「いつ」というパースペクティヴもそこに加味しなければならないことを考えると、もはや私たちは「『絶対に何の役にも立たない』と言うことはできない」という否定を介した主張しか確かなことが言えないということになります。それは、「存在しているからには何かの意味がある」という全き存在肯定と同じです。常に何らかのパースペクティヴをとらざるを得ない有限的な存在である人間は誰しも、あるものの無意味さや非有用性を断言できるパースペクティヴなど持ち合わせていないのです。

しかしながら一方で、私たちはあるものが「役に立っている」という現場を目の当たりにしています。あるものが現に機能している、実際に使われているという現場です。「今ここ」においては、パースペクティヴを限定(共有)し、その限定的な前提のもとで有用性と非有用性を測ることができているのです。英語が母国語でない人々の間で共通言語として英語が用いられる場合を考えてみると「今、意思疎通ができること」という価値に基づく前提が共有され、それによってある人の話す英語に対する「有用である/有用でない」という判断が可能になっています。そこで、じゃあ「今ここ」において共有される前提はどのように決定されるの?という問いが生じ、それは「今ここ」でのみ生じ機能し、しかもそれは必ずしも明示的ではなく、実践の中で規定されていくものなのではないか、というような話にも及びました。しかし戦争中の人殺しの例などでもあったように、実際の現場において必ずしも同じ目的のもとでパースペクティヴの設定ができるわけもなく、コミュニケーションできることが何よりも重要なのでは…という話になりましたが、じゃあコミュニケーションって何!って問題についてはまた今度。

このようにして、広義の「役に立つ」という言葉についてその把握不可能性と限定的な使用可能性について考えたわけですが、次にそこから一歩進んで、では「役に立つ」という言明は、私たちの判断としていかなる意味を持っているのか、つまり私たちは「役に立つ」と言うことで一体何を言おうとしているのかということを考えました。そこで当初念頭に置いていたプラグマティズムの問題意識へと話が展開しました。「有用である」ことが「正しさ」の基準となるという先の話ですが、英語の例で言えば、「教科書に載っていても伝わらない英語」は正しい英語ではなく、「その場で意思疎通を可能にする英語」は正しい英語ということになります。私たちが使用する言葉や行為は全て、実際にそれが使われている現場にしか存在しません。そのように考えてみると、具体的な現場とはまるで関係のないところに、どんな具体的な状況にも効く万能薬のような「絶対的な真理」を求めることがどうしてできるのでしょうか。また求めることができたとして、それが「絶対的な真理である」ということを私たちはどのようにして分かるのでしょうか。哲学は真理を求めるわけですけど、そこで言われているところの「真理」って一体なんぞや…。今回はそれ自体について深く吟味することはできなかたので、これについてもいつかぱおぱおしたいと思います。

てことで無駄に長くなりすぎましたが、今日はこのへんで。こんなの全然スナックじゃなーい!

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