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肛門観光バスガイド現る


※お尻の話なので、食事中や苦手な方はご遠慮ください


私はいぼ痔持ちで肛門科通い8年目だ。
治る治ると言われて毎度同じ薬を処方され続け、ここまで来た。

診察の流れはいつも同じだ。呼び出されたら診察室でズボンを半分脱いで尻を丸出しにし、ベッドの上に横になって医者を待つ。医者に触診をされながら、「薬を忘れず毎回やってるか?」と聞かれ、「やってる」と答えれば「よし、よくなってるな!絶対よくなるから絶対続けろよ!」と肩を叩かれ去っていく。
私は「やれやれ、あなたいつもそう言ってるけどね、完治しないじゃない、そうやっていつも期待させといて処方だけ出してはい終わりだなんて…分かってるんだからね…でもまた来るわ…貴方がいないと…とダメだから…」
と気だるい感じで着衣の乱れを直し、診察室を出て会計を待ち、処方箋を受け取り、薬局へ行く。この流れ、目をつぶってもできる、なにせ8年目だからね。

医者にとっての都合の良い女になってる気がしているが、薬さえあれば私の肛門は自重してくれるので文句も言えない。

通っている肛門科は人気のあるクリニックで、よく混んでいる。特に土曜日の午前中の待合室といったら、患者同士の駐車場の取り合いから始まり、看護師の連続呼び出しと鳴りやまぬ電話、患者の主張と事務員の攻防戦など、見ていて全く飽きない。

今日はGW明けの最初の土曜日ということもあってか、ひどく混んでいた。

今回も都合の良い女として待合室の喧騒をBGMにしながらしばらく待っていると、いかにもベテラン看護師といった感じの看護師に大声で呼び出された。

急いでその看護師のもとに行ったのだが、「ここで待ってて!もう1人呼ぶから!」と言われ、私以外にもう1人患者が呼び出された。

すると、ベテラン看護師が「今日は特別混んでるから、いつものベッドが空いてないの!私の後についてきてください〜!」と言って右腕を折り曲げ奥の病室へと歩き始めたのだ。



バスガイドじゃん…


と思って内心ウケたのだが、それを見ていた別の看護師が

「バスガイドじゃん!」

と私の気持ちと全く同じことを言ったので思わず吹き出してしまった。

ベテラン看護師はどこか誇らしげにバスガイドよろしく我々観光客…ではなく、いたいけないぼ痔患者を奥の部屋へ案内した。目的地に到着するとやはり尻を出せと命じられた。素直に尻を出す患者2人。

きっと私の前後にも、肛門観光病室ツアーに参加して尻を出しているんだろうな。そして今この同じ屋根の下、こうして尻丸出しで横たわっている老若男女たちがいるんだろうなぁ…

と、全く非生産的なことを考えながら医者を待ったのだった。

そうして例の触診も終わり、束の間の肛門観光病室ツアーは終わり、今日も無事7週間分の薬を受け取ることに成功した。私はしばらくこのベテラン看護師のバスガイドぶりを忘れない。そして次回も都合の良い女として、尻を出すことになるだろう。

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