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「組織戦略の考え方」を読んだ

沼上幹さんの「組織戦略の考え方」を読んで考えたことを、脳内関西人の林(仮名)と富田(仮名)の会話形式でお届けします。


自覚なきフリーライド


 在宅勤務してる時に「近所のおばちゃん」がうるさいって言うてたやん?

富田 せやねん。ウチの真ん前で、いっつも同じメンツでギャーギャー喋ってんねん。Zoom会議の時間と重なった時とか、参るで。

 お前は、そのおばちゃんにフリーライドしてるっていう自覚が無いようやな。

富田 俺が?おばちゃんに??タダ乗り???なんでやねん!迷惑こうむってんのはこっちやぞ。

 おばちゃんが集まってる周りでは、空き巣が入りにくい。「人の目」の犯罪抑止効果は馬鹿にでけへんで。ある意味、おばちゃんの井戸端会議によって、周辺の治安が保たれてんねん。せやのに、お前はおばちゃんに警備代払ってへんやろ?

富田 払うか!近所の人みんな迷惑しとるわ。夜勤明けの人とか寝てられへんで。

 ほんならお前が注意したらええやん。いっつも同じメンツでギャーギャーうるさいねん、って。

富田 近所で角が立ったら色々やりにくいやん。明日からギャーギャーの話題の中心に祭り上げられてまうわ。誰か他の人が言うてくれたらええんやけどなぁ。

腐ったミカン


 ほら、またフリーライド根性丸出しや。誰か別の人が注意してくれることによって生み出された静寂にただ乗りしようとしてる。まぁ気持ちは分かるけどな。フリーライドっていうのは会社の中でも常に発生してて、組織の劣化現象のひとつやって最近読んだ本で言うてた。

富田 働かへんおっさんとかか?年収2000万円の窓際族を揶揄する「Windows 2000」っていうスラング聞いたことあるけど。

 それは典型やけど、職場って実はもっとフリーライドが蔓延してる。たとえば会社の中に厄介な人っておるやん?文句ばっかり言うてて、理屈が通じへんような、敵に回すとめんどくさい人。

富田 一瞬でひとり頭に思い浮かんだわ。

 そういう厄介者が職場に居ると生産性は落ちるから、誰かが叱り飛ばして黙らさなあかん。ほんまはその厄介者の上司が叱り役をやらなあかんねやろけど、最近は直ぐパワハラとか言われるから腫れ物に触るような対応になってまう。

富田 「誰かあいつ黙らせてくれへんかな」って思ってるのもフリーライドっていうことか。そういう次元やったら、確かになんぼでもあるな。たとえば、おれが会社でコピー取ろうとした時、忙しい時に限って用紙切れになって補充役になってまうことが多いねんけど、次コピーする人に「ただ乗りしやがって」って悪態つくことあるわ。心の中でやけど。

 次元が低過ぎるやろ。他にも、自分では企画を出さんと、他人の企画にケチばっかりつけるのもフリーライドや。他人の業績で食わせてもらってんねんからな。

富田 そう考えると、自覚のない性質の悪いフリーライダーも多そうやな。おれが近所のおばちゃんにフリーライドしてるっていうのは未だに納得いかんけど。

 人間が2人以上集まったら、大なり小なりフリーライドは生まれるし、きれいごとを言えばそれが「助け合い」なんやろうけど、意図的に「フリーライドしてやろう」という魂胆の人間が多いと組織としては腐る。最初は意図的にフリーライドするのはごく一部の変わり者やったとしても、人間、損したないから、だんだんフリーライダーが増えていく。

富田 腐ったミカン理論やな。その本に、フリーライド以外の組織の劣化についてなんか書いてたんか?

キツネの跋扈と悩みの委譲

 「キツネの跋扈」っていうのもあったな。虎の威を借るキツネのことな。部署と部署とかの間に立って、「専務がこう言うてた」とか「お客さんが怒ってる」とか、ちょっと尾ひれ付けて言うたりしながら、自分に有利になるように物事を進める人。これも自覚ない人も多そうやけど。

富田 それもおるなー。自分の意見としては言わずに、上の人の意見やっていう奴。

 どんな仕事にも調整は必要やし、調整は面倒くさいしことも多いけど、なるべく相手と直接折衝するようにしてたらキツネは生まれにくい。そういう意味では、調整専門の組織なんか作ったらロクなことにならへん。組織っていうても結局、仕事するんは人やからな。「組織は仕事の邪魔はできても、自動的に仕事を処理してくれる機械ではない」って言うてはる。

富田 うちの会社でも、最近やたらと○○プロジェクトとか、××企画室とか新しい組織が立ち上がって、何してんのかよう分からんわ。

 お前の会社の事情は知らんけど、本来は役員クラスが悩んで決断すべき問題やのに、組織を作って中間管理職に押し付けてるケースも多いんちゃうか。そういうのは、権限の委譲やなくて「悩みの委譲」やって皮肉られてる。

組織論とドゥルーズの思想


富田
 組織って難しいなぁ。

 ほんま難しい。この本、2003年の発行やから20年近くも前やけど、今でもあてはまることばっかりや。

富田 会社の組織だけやなくて、法律とかもいっつも見直しがあるけど、それだけ仕組みづくりって難しいっていうこっちゃな。

 組織にせよルールにせよ、これで完成って言うのはなくて、常に変化のプロセスとして考えていくしかないんやろな。この前話した「現代思想入門」でも、あらゆるものは変化の途中であって決定的な始まりも終わりもないっていうドゥルーズっていう哲学者の考え方が紹介されてたけど、そういう考え方が組織論でも必要なんやろなって思った。

富田 それはそうなんやろうけど、いつまでやっても終わりがないっていうのは精神的にきつくないか?

 一応のゴールは決めて、とりあえずは区切りは付けつつも、それで完成として完全に忘れ去ることはせんようにしていくって感じでいくしかないんちゃうかな。

<おしまい>



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