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汎用性と、専用性。

音楽プレーヤー的なスタンドから構想を始めました。しかし試案を形にして実際に使ってみると、幅広い機種の使われ方(ユーザー個人の個性や拘り)に、どこまで対応する形(機能や構造)にするのかが考慮のポイントになります。(保護ケースを使う人、裸で使う人、背面に取手を付ける人などなど。)iPhoneのスタンドだけを考慮しても、歴代機種のどの製品向けにするかが支持部の構造に影響します。

スマホ・タブレット製品をリリースした後のAppleは、明らさまに1年周期で製品の改廃を行う方針になりました

この方針は、アクセサリーの3rdパーティメーカーに在庫負担が重く伸し掛ります。特に1年後には型落ちになる製品を売り切るには、メーカー自身の販路が広く短期で型落ち在庫を処分できる体制が必要です。

スマホシリーズ単体でこの有様ですから、タブレットまで共用にすると各機種にベストな寸法設計を網羅することは難易度が高まります。

サイズ違いのシリーズへ網羅的に対応するのに、各シリーズがインテリアシーンで多用されるサービスと機能を絞って使う道具として考察しました。iPhoneは主に音楽プレーヤーとして、iPadはムービーとネット検索ビューワーの機能を主に検討しました。音楽プレーヤーならば外部スピーカーとセット使いで画面の角度は一定角度でよい。ムービービュワーは、人のインテリア場所での姿勢に合わせて画面角度が調整できたほうがよい。また、ネット検索時は卓上に伏せ置いて適度に画面を起こして使えることが望ましい。

そのような考察から2点目のプロトタイプは、複数幅の寸法違いでスリットを設けた大判のトレー状にしました。

幅寸法が違う複数溝の役割は、ユーザーの姿勢に合わせてスタンドした端末の画面角度を挿し位置によって変えるための機能です。ボードサイズを大きくした意図は、外部スピーカーの置き場としての広さと、端末と視線の距離を調節できることを狙ったものです

結果形になった試作は、なにやら沢山iPadをスタンドできるような形になってしまいました。高価なiPadを一度に5台も6台も置きたいユーザーは相当偏った変わり者でしょう。…なのでこれも没案決定です。

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さて、金属や樹脂素材を加工対象に選ばなかったのは、3つの理由があります。

1. 環境負荷が少ない素材を使い、サスティナブルな消費サイクルを作る。
2. 間伐材を活かして国内の山林資源を活用する。
3. iPhone・iPadの消費サイクルの影響を吸収する生産方法と形を採用。


「1.」は、エコロジカルな製品を作るという、ごく私的な目標から端を発してます。「2.」は、日本の山林で、消費量が減退して市場にダブつく杉材を有効活用し、林業を活性化させることを目標にしてます。「3.」は、1年周期と短命な対象製品の改廃サイクルに、生産手法や素材などを複雑な工法に頼らないことで、改廃による市場変化の影響を最小化する狙いがあります。

販路や加工法に制約を設けることで、市場性の広い製品とすることを念頭に、製品機能とデザインを考慮することにします。

小型のiPadminiの登場時は、画面の大きなiPadは第四世代機(中判サイズ)で、背面中央が厚く四辺端面がなだらかな曲線の断面なので、この二機種は端面と背面のシルエットに差が大きい状態でした。

当時スマホは4〜5sまでの時期なので、角断面のiPhoneとのiPadの造形寸法的な共通点を、端末の厚みと端面の断面形状に絞ってスタンド機能の見直しをします。狙いは大きさの違う両機種に、網羅的な対応をするための最小限の構造を目指すためです。

木製品は季節によって狂いが生じます。それは仕方のないことなのですが、杉材は特に伸び縮みが大きく狂いを抑えることにしばし悩まされることになります。


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