見出し画像

「手術する」の反対、「延命治療する」の反対

1.「手術する」の反対は何?

「手術する」の反対は何でしょうか?
悪性腫瘍(癌、肉腫)や整形外科疾患で、手術適応が無い場合をイメージしてみてください。

その場合、「手術しない」ことは、「治療せずに放置する(医療的介入をしない)」ということを意味しません
悪性腫瘍であれば、放射線治療や化学療法といった治療が行われます。
整形外科疾患であれば、運動療法(リハビリテーション)などの治療が行われます。

一昔前であれば、整形外科疾患で「手術しない」ことは「治療せずに放置するしかない」こととほぼ同義だったかもしれません。
しかし、リハビリテーション医学整形“内科”的な考え方が広まった現在では、「手術しない」ことは医療的介入の否定を意味するものではなくなり、運動療法(リハビリテーション)などの別の医療的介入を意味するものになりました。

つまり、「手術する」の反対は、「運動療法(リハビリテーション)する」や、「放射線治療する」や、「化学療法する」になったのです。

「手術をしないで医療費を削減しよう」なんて言う人がいたら驚きますよね。
「手術する」の反対は、「医療的介入をしない」ことではなく、「別の形の医療的介入(リハビリ、放射線治療、化学療法など)にしっかりと人員(医療従事者)や予算(医療費)を確保して行う」ことだからですね。
ですから、「手術しない」ことは別に医療費削減になりませんし、むしろ別の形の医療的介入にしっかりと医療費を使うことを意味します。

もしかしたら、「反対」という表現もちょっと違うかもしれませんね。
「手術」と、「リハビリテーション」「放射線治療」「化学療法」などは両立するものだからです。
これら様々な形の医療的介入は、複数併用して行われることが多いです。

これって、延命治療を巡る議論に似ていると思いませんか?


2.「延命治療する」の反対は何?

「延命治療する」の反対は何でしょうか?
高齢で、余命が長くなく、本人も家族も積極的な延命治療を望まない場合をイメージしてみてください。

一昔前であれば、「延命治療する」の反対、すなわち「延命治療しない」は「治療せずに放置する(医療的介入をしない)」こととほぼ同義だったかもしれません。
しかし、終末期医療(ターミナルケア)の考え方が広まった現在では、「延命治療しない」ことは医療的介入の否定を意味するものではなくなり、終末期医療という別の形の医療的介入を意味するものになりました。

つまり、「延命治療する」の反対は、「終末期医療(ターミナルケア)を行う」になったのです。

「延命治療をしないで医療費を削減しよう」なんて言う人がいたら驚きますよね。
「延命治療する」の反対は、「医療的介入をしない」ことではなく、「別の形の医療的介入(終末期医療、ターミナルケア)にしっかりと人員(医療従事者)や予算(医療費)を確保して行う」ことだからですね。
ですから、「延命治療しない」ことは別に医療費削減になりませんし、むしろ別の形の医療的介入(終末期医療、ターミナルケア)にしっかりと医療費を使うことを意味します。
本人の希望に沿って最後の時間を苦痛無くより良く過ごせるようにすること、人間らしい死を迎えられるようにすることは、本人にとっても、家族にとっても、社会にとっても、しっかりと医療費を投じるべき価値ある医療だと思います。

こちらに関しても、もしかしたら「反対」という表現もちょっと違うかもしれませんね。
積極的な延命措置はせずとも、本人がより良く過ごせるような医療的介入・ケアを行うと、(何もせず放置した場合に比べれば)結果的に延命につながることもあるでしょう。
「終末期医療」と「(結果的な)延命治療」は多少なりともオーバーラップしうるということです。


3.おわりに

いかがだったでしょうか。
「手術をする」の反対、「延命治療する」の反対、その類似性について考えてみました。

私自身は癌治療や運動器疾患の治療、終末期医療は全くの専門外ですので、ご専門の先生方からのご批判を喜んでお受けいたします。

最後までお読みいただきありがとうございました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?