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【小殿筋と中殿筋】間に分け入り支配する神経は?

小殿筋と中殿筋の解剖を解説してみます。
小殿筋と中殿筋は、殿部の比較的浅層にある筋です。

大殿筋を取り除くとその下に中殿筋、さらにその下に小殿筋を確認できます。
小殿筋も中殿筋も、形は扇形をしています。
それぞれ起始停止を見ていきましょう。

小殿筋は、腸骨の拡張した部分、腸骨翼の上外側面から起始します。
このように起始した小殿筋の筋線維は下外側方向へ収束し、大転子前外側面の幅広い線状の面に停止します。

一方、中殿筋は、小殿筋の上に覆いかぶさっているような位置にあります。
中殿筋も腸骨外側面から起始します。
このように広い範囲から起始して、大転子外側面の細長い小面に停止します。

中殿筋の外側の部分は、大腿筋膜張筋の上部と一部癒着しています。
このように、大腿筋膜張筋とも近い位置関係にあるわけです。

小殿筋と中殿筋は股関節の外転筋です。
このように、股関節で下肢を外転する働きがあります。
小殿筋と中殿筋は、歩行中にも重要な役割をはたします。

歩行中、例えば右脚に体重がかかっている時、右の小殿筋・中殿筋が適切に収縮していれば、立ち足である右脚の上で骨盤の位置を保持することができます。

しかし、これらがきちんと収縮できないと、骨盤の位置が保持できず、骨盤が反対側の動く脚のほうへ下降してしまいます。
つまり、歩行中、立っている側の小殿筋と中殿筋が適切に収縮することにより、反対側の脚を振り上げているときに骨盤が過剰に傾くのを防いでいるのです。

なので、股関節の外転筋であるこれら小殿筋と中殿筋が弱かったり麻痺していると、片脚で立った時に骨盤が傾いてしまいます。
例えば右の小殿筋や中殿筋が麻痺していると、右脚で立った時に、これらが収縮せず、骨盤が左側に傾きます。
このような徴候を『Trendelenburg徴候』といいます。

この徴候は、典型的には上殿神経を傷害された場合にみられます。
上殿神経の傷害は、骨盤骨折、坐骨孔内に広がる骨盤内占拠性病変、そして時として股関節手術による中殿筋や小殿筋の停止部の断裂や二次的な萎縮によって起こります。

なぜ上殿神経が障害された時にTrendelenburg徴候が起こるのかといえば、小殿筋と中殿筋が上殿神経支配だからですね。
そう、これが最大のポイント、『小殿筋と中殿筋の支配神経は上殿神経』です。

ではその支配神経を見てみましょう。
上殿神経は仙骨神経叢の枝です。
L4〜S1の後部からの枝によって、上殿神経が形成されます。

そして上殿神経は、梨状筋の上方で大坐骨孔を通って骨盤腔を出て、小殿筋、中殿筋、大腿筋膜張筋に分布します。

特徴的なのは、上殿神経が小殿筋と中殿筋の間を通るということです。
上殿神経が小殿筋と中殿筋を分けているとも言えるでしょう。

その結果、小殿筋には支配神経が主に表層側から分布するのに対し、中殿筋には支配神経が裏側、深層側から分布することになります。
上殿神経が小殿筋と中殿筋の間に分け入り、両方を支配するということ、おさえておきましょう。

最後に、筋肉内に薬を投与する筋肉内注射を行う際、殿部が注射部位として選択されることも一般的です。
その際、神経を傷つけないための安全な注射部位は、おおむね上外側4分の1です。
詳しくは、上前腸骨棘など様々な指標が言われていて、それらはここでは省略しますが、この殿部の上外側4分の1の領域で筋肉内注射をした場合、「何殿筋」に注射することになるかわかるでしょうか。
3つの殿筋、小殿筋、中殿筋、大殿筋のうち、どれに針が刺さるのか。
この部位に刺した針は、中殿筋に入ります。

大殿筋は中殿筋の表面の大半を覆っていますが、全体を覆っているわけではないんですね。
中殿筋の上外側部は大殿筋に覆われていません。
殿部の筋肉内注射ではこの部位に針を刺すため、中殿筋に刺さることになります。

ということで、小殿筋と中殿筋の解剖を解説してみました。

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