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神の庭を訪ねて

お伊勢さん、と親しく呼ばれる伊勢神宮の正式名称は「神宮」。 

 天照大御神をお祭りする皇大神宮、内宮と、豊受大御神をお祭りする豊受大神宮、外宮の両正宮のほかに、十四の別宮、四十三の摂社、二十四の末社、四十二の所管社があり、合計百二十五もの社からなる宮社の集合体である。

 広く伊勢には土や風、そして水をはじめとする多くの自然力が、神として祭られ、人の思考を超越した自然の神秘のなかに存在している。清浄であり素でもあるこの国のはじまりの姿、形の記憶が明確に息づいているのだ。

 気、といえばいいのだろうか。大きな磁力に包まれるように佇んでいると、古代の人々と自分が、どこか記憶のなかに繋がっているような気さえしてくる。

 身体の中に棲む遺伝子がそれを伝えてくれるのだろうか。

「なにごとのおわしまかすかは知らねども かたじけなさに涙こぼるる」と歌った西行の歌にあるように、言葉や理屈を以ってではなく、素直に心の底に鎮まるおおらかさを覚える。

 外宮、内宮をはじめ伊勢に点在する別宮や摂社末社を訪れるとき、その静謐な神域にすべての「もの」や「こと」を超越した「素」の世界を知る瞬間がある。そのとき人々は、この国の成り立ち、思考の根源を想い、神との対話に気づきはじめるのではないだろうか。


 それはあなた自身の神様との出会いのときかもしれない。