ひどい寒さ

雪が降る前の
晩
国道で鼻水を垂らしながら空を見上げていると

おおおひどい寒さだ
と老人はわたしにそう告げるように
暗闇を通りすぎ

雪が降った後の
朝
国道で雪をかいていると
中年の男性が
おおおひどい寒さだと
告げて
朝日の中を歩み去っていく

誰かに告げなくては
ならない程の
寒さ
感嘆しないではいられない程の寒さ
しかし
眼の端でとらえた彼らは
何故か微かに笑っていた

ひどい寒さの中に
まるで何か深い愉悦があるかのように

わたしは国道で鼻をかむ