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街行く者たちへ

われわれは
何よりも増して
偶然ということを愛している

偶然というやり方なら
あの酷い別れかたをした
ひとと再び会うのも
すんなり許容してしまう

紹介も言伝てもいらない
ただ眼の前を横切るだけでいいのだ

かの人がゆっくりと消えてゆく間

偶然はこころに火をつけて
少しの間
あたためそして

忘れがたい愛情を
再びわたしに与えてくれるのだ