見出し画像

田舎暮らし

夜の窓辺
さっきから雨音がしてると
思っていて窓を開けたら

家の前の
笹の葉が風に吹かれる音がさらさらと
雨音のように聴こえている

遠くで夕立があったせいか
空気は冷たく
家の周囲の黒いシルエットの木々がみな揺れている

さらさら
さらさら

そう言えば
昨日畑に行って葱を引き抜いた時に
辺り一面を覆った
土のにおいが香水のように香っていた
その香りがまたここでしている

何処かで誰かが
野菜の収穫をしているのか

風に含まれる土の香り
雨の仄かな鼻腔に滑り込む
柔らかな感じ

とおくのとおくで
唸るような低い響き
目の前がこんなに暗いのに
とおくでは微かに光りがある

いつの間にか始まった
田舎暮らしは
いつの間にか
土の匂いを芳香なものにさせ
夜風に含まれる
雨が引き抜いた土のエッセンスは
どこまでも漂っていた

雨戸を閉める時に
鳴るガラガラという音

明日朝起きて窓を開けたら
今度は
どんな香りがしていることだろう